【解法の要点】
上腕義手・肘継手の問題である.残存肢の上腕長が25.0cm,断端長が10.0cmであるので40%残存しており上腕短断端となる.それぞれの選択肢にある継手の適用について理解する.遊動か能動かでその機能から断端高位を推測してほしい.遊動ならば肘まであるため前腕切断であり,能動ならば肘の逝去機能をもつため上腕切断である.
【解説】
✕1 軟性たわみ式肘継手は,革紐またはナイロンのたわみやすい肘継手である.たわむだけなので遊動式に分類され,肘の動きでたわませるため,前腕中~長断端,手関節離断の場合に適応がある.
✕2 倍動肘ヒンジ継手は,肘関節の可動域が小さく屈曲が十分でないとき,肘屈曲運動を補う役割をもつ.肘の運動でコントロールするため,前腕短~極短断端の場合に適応がある.
✕3 能動単軸肘ヒンジ継手は,コントロールケーブルを引っ張ることにより肘の固定と解除を繰り返すことができる.肘の動きをだせない,上腕長断端,肘関節離断の場合に適応がある.
✕4 遊動単軸肘ヒンジ継手は,たわみ式継手と同じく前腕義手に使用され,差し込み式ソケットと上腕カフを連結し,肘の動きを保ちつつ頑丈な懸垂を行う.
◯5 能動単軸肘ブロック継手は,ロックコントロールケーブルを能動的に操作することで屈曲角度の固定・解除が随意的に行える標準上腕断端,上腕短断端,肩離断,肩甲胸郭間切断の場合に適応がある.
正解 : (5)
【解法の要点】
切断部位と適応となる義手を覚えておこう.手義手と手部義手の違いはわかるようにしておきたい.
【解説】
✕1 上腕骨が腋窩部までも残存していないような上腕骨極短断端は,義肢学上は肩関節離断と表現し,肩義手を用いる.
✕2 上腕切断標準型(50~90%)には上腕義手を用いる.
◯3 前腕切断極短断端(0~5%)や短断端(35~50%)には前腕義手を用いる.
✕4 手関節離断には手義手を用いる.
✕5 手根骨離断や中手骨切断には,手部義手を用いる.
正解 : (3)
【解法の要点】
上腕義手の適合のチェックポイントについて問われている.肘90°屈曲位で手先具が完全に開かない原因として考えられるのは,ケーブルシステムの不良(走行不良,またはケーブルハウジングが長すぎる場合が多い),ハーネスの調整不良,力源となる肩甲帯の問題が考えられる.
【解説】
✕1 フックのゴムの強弱は把持力を調整している.フックのゴムが強くて,力源の肩甲帯の力が弱い場合は問題となるが,ゴムが弱い場合には問題とならない.
✕2 ケーブルハウジングが短いと肘90°屈曲位にした時点で手先具が開いてしまう.
◯3 肩関節屈曲・外転と肩甲骨の外転の動きで手先具を操作するため,肩甲帯の筋力低下によって手先具の開きが制限される.
✕4 肘継手を最大屈曲させて135°以上確保されなかった場合は,前腕部のトリミングが不良である可能性がある.
✕5 肩関節の回旋可動域は義手の手先具開閉操作に影響しない.
正解 : (3)
【解法の要点】
筋電義手とは,小型バッテリーを前腕支持部外装にはめ込み,筋電装置によって手先具の開閉を行う装具である.特徴として,適応(前腕断端長が10cm以上,近接関節の可動域制限がない,訓練を理解する知的能力があること,など),利点(把持力がある,見栄えがよい),欠点(金額が高い,公的給付制度が不十分,重い,視覚による操作確認が必要,訓練できる施設が少ない)などについて押さえておく.
【解説】
✕1 小児用の筋電義手もある.筋電操作では筋収縮訓練が必要であり,操作訓練に対応できる知的水準が必要である.
✕2 常用のハンドタイプと作業用タイプの筋電義手がある.
◯3 筋電シグナルの強さに応じて開閉速度と把持力が変化するものもある.把持力は能動フックよりも強力である.
✕4 自己懸垂性があるためハーネスは必要ない.
✕5 ほとんどが前腕義手の症例である.
正解 : (3)
【解法の要点】
義手の適応条件,断端管理,チェックアウトなど総合的に問われている.断端の長さによって,必要となる義手のパーツが異なることがある.
【解説】
✕1 屈曲手継手は,肘の屈曲が十分に得られないときに手継手を屈曲させて,口元などに届くように使用する場合がある.本症例では肘屈曲角度は得られると考えられるため,屈曲手継手は適応とならない.
◯2 義手訓練は,義手の装着による断端・支持部からの感覚フィードバックと同時に視覚情報によるフィードバックが得られ,幻肢と義手の一致が得られる.その結果,幻肢を意識しにくくなる.幻肢痛がある場合も軽減される.
✕3 義手の手部先端は健側の母指先端と合わせる.フック型はその先端を合わせるが,ハンド型は義手の母指先端を合わせる.
✕4 弾性包帯は原則として末梢部から中枢部に向けて巻く.普通の包帯もそうだが,巻き方の基本である.近位部での圧迫を避け,血液やリンパ液が遠位部で貯留しにくくする目的がある.
✕5 手先具の開き幅(cm)が,手先具単体での最大開き幅の70%以上になっていることが必要である.
正解 : (2)
【解法の要点】
コントロールケーブルシステムの伝達効率をチェックする計算式の問題.伝達効率を計算することで,コントロールケーブルに加わる力の少なくとも50%が手先具に伝達されているかどうかをみる.
伝達効率(%)=(A:手先具単体で手先を開くのに要する力(kg) /B:コントロールケーブルハンガーに加えた力(kg))✕100 力の測定は,フックの先端に木片をはさみ,所定の引っ張り力を加えて木片が落ちるときの強さをバネ秤で測定する.
【解説】
✕1 回旋力に対する安定性のチェックである.
✕2 解法の要点より,「B:コントロールケーブルハンガーに加えた力(kg)」に当てはまるが,バネ秤で引っ張る方向は,後方ではなく上方のハーネスの方向であるべきである.
✕3 下垂力に対する安定性のチェックである.
◯4 解法の要点より,「A:手先具単体で手先を開くのに要する力(kg)」に当てはまる.
◯5 口元での手先具操作のチェックである.
正解 : (4),(5)