【解法の要点】
小児の四肢切断では,知的・運動発達を考慮した義肢装着訓練をすべきである.また成長の度合いに合わせた義肢装着が求められることから,定期的な適合検査と義肢の作り直しが必要である.成長に合わせて義肢の機能を高めていくことが望ましい.
【解説】
✕1 後天性での四肢切断の男女比は2:1である.男児は女児より活発であり,けがをする機会が多いことが原因と考えられる.
✕2 装着開始は,義手は生後6ヵ月,義足は生後8~10ヵ月頃からがよいとされる.
✕3 下腿切断では,成長に伴い膝伸筋と膝屈筋の不均衡が生じ,膝屈曲拘縮が生じやすい.
✕4 骨肉腫など悪性骨腫瘍切除の際に,人工関節などを利用して四肢を温存する方針が増えている.
◯5 小児ではボディ・イメージが十分に形成されていないため,幻肢や幻肢痛が問題になることはまれである.
正解 : (5)
【解法の要点】
上腕の切断レベルは健側上腕長が基準となる.切断レベルによって義手のソケットや継手,ハーネスなどが変わるため押さえておく.断端長の計測には,AAOS(American Academy of Orthopedic Surgeons:米国整形外科学会)とISO(International Organization for Standardization:国際標準機構)の基準があり,前者では,肩峰・上腕骨外側上顆・橈骨茎状突起・母指を基準点として百分率(%)の算出が可能である.後者では,腋窩・上腕骨内側上顆・尺側茎状突起を基準点とした断端長の計測であり,現在ではISOが国際的な基準として用いられる.本問では,百分率を求めるため,AAOSを用いているということに注意が必要である.
【解説】
✕1 肩峰から中指先端までの長さである.
◯2 肩峰から上腕骨外側上顆を結ぶ上腕長である.
✕3 上腕骨大結節から上腕骨外側上顆までの長さである.
✕4 腋窩から上腕骨内側上顆までの長さである.切断レベルの算出には用いないが,義手の作製時の測定には必要となる.
✕5 腋窩から尺骨茎状突起までの長さである.切断レベルの算出には用いないが,義手の作製時の測定には必要となる.
正解 : (2)
【解法の要点】
四肢の切断について,名称で尋ねられたものである.サイム・ショパール・リスフラン・フォークォーター切断は,部位と名称は記憶しておきたい.
【解説】
✕1 Boyd(ボイド)切断は足関節部の切断であり,踵骨を残し,脛骨下面で骨癒合を起こさせようとする切断方法である.
✕2 Syme(サイム)切断は足関節部の切断であり,内果・外果ともに骨隆起部の一部をトリミングするように切断したもので,多く用いられている.
✕3 Pirogoff(ピロゴフ)切断は足関節部の切断であり,踵骨の踵部を残して脛骨に取り付け,この間に骨癒合を起こさせようとする切断方法である.
✕4 Chopart(ショパール)切断は足根骨部の切断であり,ショパール関節部における切断方法である.
◯5 forequarter(フォークォーター)切断は,肩甲胸郭間切断である.
正解 : (5)
【解法の要点】
断端管理について問われている.ギプスソケット法(rigid dressing)の利点としては,弾力包帯法(soft dressing)に比べ早期に安定した成熟断端となりやすく,疼痛や幻肢痛が少ないことがある.欠点としては,創部の観察ができないことから,創部治癒の遷延や創部感染が再発しやすいことが挙げられる.
【解説】
✕1 ギプスソケット法はギプスソケットに直接義肢をつけることもでき,また断端成熟を早めることができるため,弾力包帯法より義肢装着時期が早い.
✕2 ギプスソケット法の方が,浮腫が起きにくく,断端を強く圧迫できるので,早期に成熟断端となりやすい.
◯3 ギプスソケット法では断端の観察ができない.ゆえに著しい感染を伴った糖尿病性足壊疽のように,感染再発リスクのある状態の断端では適応とならない.
✕4 ギプスソケット法の方が,強い圧迫をかけられ,浮腫が少ない.
✕5 ギプスソケット法は疼痛,幻肢痛が出にくい.またギプスソケットに直接義肢をつける方法もあるため,早期から義肢を装着することでボディ・イメージがつきやすく,幻肢痛を来しにくくする効果もある.
正解 : (3)
【解法の要点】
切断術直後の断端管理について問われている.まず必要な情報は,断端長,断端筋力,断端可動性,近位関節の可動域制限の有無,断端周径,断端痛,幻肢,断端創部の癒合状態,断端の循環状態などである.本症例では,糖尿病性末梢神経障害を合併しており,断端における血行障害や感染に注意が必要である.
【解説】
◯1 糖尿病患者では,術後の創部癒合不良や感染症による再切断の可能性も高く,断端の色調は循環や皮膚の状態を観察するうえで重要である.
◯2 短断端ほど拘縮は生じやすく,断端の自動運動は,断端筋力・可動性を保ち,拘縮を予防するために必要である.断端の自動運動は術後早期より始める.
✕3 本症例では,糖尿病性末梢神経障害を合併しており,温熱療法は禁忌である.
✕4 弾力包帯による断端管理を行う.断端管理には,弾力包帯の使用,ギプス包帯の使用,術直後義肢装着法がある.ギプスソケットを装着する方法では断端の観察ができないため,糖尿病患者には適応とはならない.
✕5 大腿切断では,股関節の屈曲,外転,外旋拘縮を起こしやすいため,伸展位を保たせる.
正解 : (1),(2)