【解法の要点】
認知症の症状は,中核症状(知能低下,記銘力障害,見当識障害,認知障害)と,それ以外の周辺症状に分けて考えられる.周辺症状であるBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症に伴う行動障害と精神症状)は,中核症状以外の症状をすべて含んでいると考えてよい.
【解説】
✕1 ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)は主に軽度から中等度程度のAlzheimer型認知症を対象とし,症状の評価をして治療成績の評価などに用いられる.単語再生,口語言語能力,言語の聴覚的理解,自発話における喚語困難,口頭命令に従う,手指および物品呼称,構成行為,観念運動,見当識,単語再認,テスト教示の再生能力の11の課題から構成されている.40分程度を要するため,選択肢3のMMSEよりも時間がかかる.
✕2 CDR(Clinical Dementia Rating)は,記憶を中心とした認知機能障害の重症度評価尺度である.対象者の診察や対象者を知る者からの行動観察情報により,行動を評価する.検査は,①記憶,②見当識,③判断力と問題解決,④社会適応,⑤家庭状況および趣味・関心,⑥介護状況の6項目について5段階で評価する.
✕3 MMSE(Mini-Mental State Examination)は,認知障害(認知症,せん妄,健忘性障害)に対して国際的によく用いられているスクリーニング検査である.見当識,記銘力,注意と計算,想起,言語,組み立ての各項目があり,30点満点のうち,26点以下で軽度認知障害の疑い,23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す.
◯4 NPI(Neuropsychiatric Inventory)は,援助者からの聞き取りにより,「認知症の行動・心理状態(BPSD)」を評価する方法である.「認知症の行動・心理症状」に関連する12項目につき,頻度を0~4の5段階で,重症度を1~3の3段階で評価し,点数が高いほど重症となる.
✕5 PSMS(Physical Self-Maintenance Scale)はADLの評価尺度である.排泄,食事,着替え,見繕い,移動能力,入浴の6項目について,家族,介護者からの情報に基づき評価する.
正解 : (4)
【解法の要点】
本症例では,REM睡眠行動障害,パーキンソニズム,認知症症状,幻視がみられる.よって,Lewy小体型認知症が疑われる.
【解説】
◯1 パーキンソニズムの特徴の一つである.
◯2 Lewy小体型認知症は,数分~数時間の日内変動や数週間~数ヵ月に及ぶ症状の変動がみられることがある.
✕3 同じものを食べ続けたりするこだわりは,前頭側頭型認知症の特徴である.
✕4 選択肢3と同様に前頭側頭型認知症でみられる.自己中心的な性格変化が特徴的であり,遠慮がなくなり,礼を欠く行動,言動がみられる.
✕5 認知症患者は,一般的に集中力の維持が困難なため,環境からの刺激を受けると集中できなくなる.
正解 : (1),(2)
【解法の要点】
前頭側頭型認知症では,自己中心的な性格変化と反社会的行動が特徴であり,常同行動,自発性低下といった症状がみられるが,初期では記憶障害や日常生活動作の障害は目立たない.
【解説】
✕1 初期には,日常生活動作の障害は目立たないため,失禁は通常みられない.
✕2 初期には,日常生活動作の障害は目立たないため,着替えができない(=着衣失行)は通常みられない.
✕3 初期には,記憶障害はほとんどみられない.Alzheimer型認知症では初期から記憶障害がみられる.
✕4 初期には,見当識障害(この場合は場所がわからない)はほとんどみられない.
◯5 人格障害・情緒障害は初期からみられる.
正解 : (5)
【解法の要点】
厚生省による認知症高齢者の日常生活自立度判定基準に従って解答する.ランクと症状は一通り目を通しておくとよい.
【解説】
✕1 Ⅱaは,ランクⅡ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても,誰かが注意していれば自立可能である)の症状が家庭外でみられ,道に迷う,金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つようになる.
◯2 Ⅱbは,ランクⅡの状態が家庭内でもみられ,電話の対応や訪問者との応対,一人での留守番ができなくなる.
✕3 Ⅲaは,ランクⅢ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが時々みられ,介護が必要となる)の症状が日中を中心にみられる.
✕4 Ⅲbは,夜間を中心として,ランクⅢのような状態がみられる.
✕5 Ⅳは,日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ,常に介護が必要なレベルである.
正解 : (2)
【解法の要点】
認知症の症状は,中核症状(知能低下,記銘力障害,見当識障害,認知障害)と,それ以外の周辺症状に分けて考えられる.周辺症状であるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD:認知症に伴う行動障害と精神症状)は中核症状以外の症状をすべて含んでいると考えてよい.それぞれの評価尺度が認知症のどの症状を評価するものかを考える.
【解説】
✕1 NPI(Neuropsychiatric Inventory)は,援助者からの聞き取りにより,「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を評価する方法である.「認知症の行動・心理症状」に関連する12項目につき,頻度を0~4の5段階で,重症度を1~3の3段階で評価し,点数が高いほど重症となる.
◯2 CDR(Clinical Dementia Rating:認知症の重症度評価法)は,認知症の重症度を総合的に評価する場合に用いられる.
✕3 HDS-R(改定長谷川式簡易知能評価スケール)は,認知機能をみる簡易認知機能検査である.30点満点で20点以下を認知症の疑いありとする.
✕4 BEHAVE-AD(Behavioral Pathology in AlzheimerʼsDisease)はAlzheimer病のBPSDの評価尺度である.介護者などからの情報に基づいて25項目について0~3までの4段階で重症度を評価する.
✕5 PSMS(Physical Self-Maintenance Scale)はADLの評価尺度である.家族,介護者からの情報に基づき評価する.
正解 : (2)