【解法の要点】
Alzheimer型認知症は認知症の中で最も多く,病理学的に大脳の全般的な萎縮,組織学的に老人斑,神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である.
【解説】
✕1 女性の方が多い.
✕2 動揺性で階段状に進行する経過をたどるのは,血管性認知症の特徴である.Alzheimer型認知症では,常に進行性に増悪する.
✕3 Alzheimer型認知症では,海馬,側頭葉,頭頂葉が萎縮し,記銘力や近時記憶が障害されやすい.意味記憶の障害がみられるのは,前頭側頭型変性症の一つである意味性認知症である.
◯4 時間の見当識障害は軽度のAlzheimer型認知症でもみられる.見当識障害は,時間→場所→人物の順に出現する.
✕5 軽度認知障害のうち年間10~15%が認知症に移行し,その中でAlzheimer型認知症が最多である.
正解 : (4)
【解法の要点】
Alzheimer型認知症に関する検査について問われている.選択肢の検査について,認知症のどの症状を評価するのかを覚えておく必要がある.
【解説】
✕1 Behave-AD(Behavioral Pathology in Alzheimerʼs Disease Rating Scale)はAlzheimer型認知症のBPSD(周辺症状)の評価尺度である.介護者などから情報に基づいて25項目について0~3までの4段階で重症度を評価する.ADL障害の程度を評価するものではない.
✕2 DASC-21(Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items:地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)は,認知症患者一般に適用され,また,ADL障害だけでなく認知機能と生活機能の障害の程度から認知症の重症度を評価するものである.
✕3 MoCA-J(日本語版 Montreal Cognitive Assessment)は,認知機能の検査法の一つであり,特に,軽度認知障害をスクリーニングする検査法として有用である.
◯4 FAST(Functional Assessment Staging of Alzheimerʼs Disease)は,Alzheimer型認知症の病状ステージを生活機能(ADL)の面から観察により分類した評価尺度であり,1(正常)~7(高度)の7段階で評価する.✕5 MMSE(Mini Mental State Examination)は認知障害の簡便な評価方法である.30点満点のうち,26点以下で障害の疑いを示し,23点以下なら明確な障害を示す.
正解 : (4)
【解法の要点】
自尊心は,自己評価が向上することで高まるが,選択肢のうちで,Alzheimer型認知症患者では期待できないものは除外される.
【解説】
◯1 Alzheimer型認知症患者であっても,作業療法中にちょっとした成功体験をすることができ,それによって喜びを得ることで自尊心の回復が期待できる.
✕2~4 見当識,遂行機能,空間認知力の改善は望めないため,自尊心の回復を目指すことはできない.
✕5 短期記憶力の向上は望めない.認知症では長期記憶は比較的保たれやすいため,回想法は長期記憶を題材にした働きかけにより気分や意欲を高揚させることができる.
正解 : (1)
【解法の要点】
認知症患者に対する作業療法の基本原則は,日常生活活動の場として患者が安心して過ごせることである.導入期でまず考えることは,患者が継続して参加できるような種目を用意することである.
【解説】
◯1 患者の趣味の一つである詩吟は,疲労が少なくなじみもあるため望ましい.自己効力感も得られると考えられる.
✕2 趣味であったが最近できなくなったため,洋裁をすることでかえって自信を失い,自己効力感は得られないであろう.
✕3 HDS-Rにて減算に失点が認められるため,能力を上回る活動である計算ドリルはうまくできないと思われ,自己効力感は得られない.
✕4 献立づくりも,家事ができなくなっていることから適さない.
✕5 立体パズルはAlzheimer型認知症では空間認知の低下があるため難しい.また過去になじみのある作業ではないため,優先されない.
正解 : (1)
【解法の要点】
Alzheimer型認知症は認知症の中で最も多く,病理学的に大脳の全般的な萎縮,組織学的に老人斑,神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である.
【解説】
✕1 まだら認知症は,脳機能が全体的に低下するのではなく,部分的に障害されるため機能低下と正常が混在する状態である.血管性認知症に特徴的である.
✕2 動揺性で階段状に進行する経過をたどるのは,血管性認知症の特徴である.
◯3 老人斑は神経細胞外にアミロイドβ(Aβ)蛋白が蓄積してできた,一見しみのような異常構造物である.このAβが重合の過程で細胞毒性を発揮し,神経細胞の変性・消失が大量に起こることで認知症が生じると現在では考えられている.
✕4 神経原線維変化は,タウ蛋白の細胞内沈着により起こる.
✕5 Alzheimer型認知症は緩徐進行性の疾患であり,現在対症療法として認知機能低下の進行を抑制する薬物療法が行われているが,根本的治癒は望めない.
正解 : (3)