【解法の要点】
脳MRIの水平断から,断面のレベルがどこかを推定する.また,脳の障害される部位と症状について理解しておく必要がある.
画像は側脳室体部レベルの水平断である.MRI拡散強調像で左放線冠に高信号を認め,急性期脳梗塞であると考えられる.なお,放線冠は錐体路の一部でその後内包に収束する部位なので,障害により対側の運動麻痺が起こる.
【解説】
✕1 失行は頭頂葉の障害で起こる.
✕2 失語は優位半球の前頭葉,側頭葉の障害で起こる.
✕3 体幹失調は小脳の障害で起こる.
◯4 片麻痺は,内包や大脳皮質運動野など錐体路の障害で,対側に症状を生じる.錐体路の運動神経線維は内包より上では皮質に向かう放線冠をつくり,内包より下では中脳の大脳脚へとつながっている.
✕5 放線冠は体性感覚野からの線維も走行しているため,障害により対側の感覚障害が生じる.感覚障害を来し得る場合は,対側なので右側になるはずである.
正解 : (4)
【解法の要点】
本症例は右利きであることから優位半球は左半球である.画像上,左頭頂葉に障害がみられ,Gerstmann症候群が考えられる.Gerstmann症候群の主症状は失算,失書,手指失認,左右失認である.
【解説】
✕1 左半側空間無視は劣位半球(この症例の場合は右半球)頭頂葉の障害である.
✕2 Gerstmann症候群ではみられない.視覚失認は後頭葉の障害で起こる.
✕3 Gerstmann症候群ではみられない.着衣失行は劣位半球(この症例の場合は右半球)の障害で起こる.
◯4 左右失認はGerstmann症候群の主症状の一つである.
✕5 Gerstmann症候群ではみられない.片麻痺は大脳半球では(右または左)中心前回の障害で起こる.
正解 : (4)
【解法の要点】
典型的な頭部MRI画像について,それぞれの画像の特徴を覚えておこう.T2強調画像は,急性期の血腫,骨,石灰化は黒く映り(低信号),水(囊胞)や大部分の病変は白く映る(高信号).
【解説】
✕1 ①左の被殻出血の画像である.著しい低信号は血腫であり,それを取り囲むようにみられる高信号が浮腫である.
✕2 ②左中大脳動脈領域に,高信号領域がみられ,脳溝がやや不明瞭になっているため,左中大脳動脈の急性期の脳梗塞である.
✕3 ③異常な所見がみられず,正常脳の画像である.
◯4 ④側脳室の拡大がみられ,水頭症である.
✕5 ⑤両側の中大脳動脈領域に点状の無信号(フローボイド)が多発しており,もやもや病でみられる穿通枝が拡大して形成された異常血管網の画像である.もやもや病は,両側の内頸動脈終末部,前・中大脳動脈近位部の高度狭窄・閉塞を特徴とする原因不明の疾患である.このような病態の結果として,側副血行路が発達し,その一部がもやもやとした異常血管網を形成する.
正解 : (4)
【解法の要点】
被殻および淡蒼球の出血と考えられる.被殻・淡蒼球は大脳基底核を構成しており,大脳基底核が障害されているという考え方もできる.被殻・淡蒼球を含む大脳基底核領域の脳実質に高吸収域(出血部位)がみられる.内包後脚には錐体路が通っているため,この部分に障害が及ぶと錐体路障害が起こる.
【解説】
✕1 被殻出血においては,対側の顔面を含む片麻痺が起きる.
✕2 被殻出血においては,優位半球障害時に運動性失語が起きる.患者は右利きなので優位半球は左側である.劣位半球障害時は失行,失認を来す.
✕3 被殻出血においては,感覚障害を来す.運動・感覚ニューロンの交叉部位より上にある内包を血腫が圧迫し,障害することによる.
◯4 運動維持困難は,主に劣位半球の前頭葉障害でみられるため,本症例のように優位半球の被殻出血では来しにくいと考えられる.
✕5 出血した部位に顔面神経核に至る線維が通っている可能性は高く,中枢性の顔面神経麻痺が起こりうると考えられる.
正解 : (4)
【解法の要点】
問題のMRI画像は,視床レベルにおける水平断を表している.それぞれの水平断で観察できる構造を整理して覚え,脳の構造を立体的に理解しておく必要がある.
【解説】
✕1 側脳室前角を示している.
◯2 尾状核を示している.
✕3 脳弓を示している.
◯4 視床を示している.
✕5 第三脳室を示している.
正解 : (2),(4)