【解法の要点】
小脳の機能不全による協調運動障害について,具体的な障害の例まで調べておこう.小脳系の障害は大別して,協調運動障害(四肢運動失調)と平衡障害(体幹運動失調)がある.協調運動障害として,測定異常,時間測定異常,企図振戦,共同運動障害,運動分解があり,平衡障害として立位または重症例では座位での体幹の動揺がある.
【解説】
◯1 小脳性失調では,協調運動障害により細かい作業が困難となり,大文字症となる.パーキンソニズムでは小字症になる.
◯2 企図振戦は,静止状態では振戦はないが,随意運動をしようとすると粗大な振戦が出現することである.
✕3 運動分解とは,運動軌道が円滑ではなく何段階かに分かれる,運動軌道から行きつ戻りつする状態を指す.運動分解は指耳試験などで評価する.拮抗する運動の切り替えが円滑に行えないのは反(復)拮抗運動不能である.上肢や下肢の回内・回外運動試験,膝打ち試験,Finger Wiggle,Foot Pat,Tongue Wiggleで評価する.
◯4 時間測定障害(異常)は,ある動作の開始や停止が遅れることである.
◯5 日常の動作はいくつかの運動が組み合わさったものであるが,協調収縮不能とはそれらの運動の順序や調和が障害・消失した状態を指す.
正解 : (3)
【解法の要点】
脊髄小脳変性症は,小脳かその連絡線維の変性により,主な症状として運動失調を呈する疾患の総称である.
【解説】
✕1 筋の廃用性萎縮を防ぐため,筋力増強訓練を行う.
◯2 ふらついてもぶつからないような家具配置に変更する.
✕3 脊髄小脳変性症でみられる運動失調では,左右への動揺と歩隔の拡大がみられる.歩隔を狭くするとバランスが保てず立位保持が困難となる.
✕4 つかみやすいように柄の太いスプーンにする.
✕5 杖が軽すぎると振戦の影響で石突(先端)にぶれが生じることもあるので,ある程度の重さがある方が安定する.杖は「第3の足」とも称されるので,運動失調がある場合に下肢に重錘を用いることを想起すればよい.
正解 : (2)
【解法の要点】
四肢の小脳性運動失調の構成要素は,測定障害,反復拮抗運動障害,運動分解,協働収縮不能,振戦,時間測定異常の6つである.
【解説】
✕1 鼻指鼻試験は,上肢の協調運動の検査であり,企図振戦,測定障害,協動収縮不能がみられる.反復拮抗運動障害とは,運動する筋とその拮抗筋を交互に迅速に,規則正しく,反復して運動させることが障害された状態を指し,回内・回外運動試験などでみられる.
✕2 線引き試験は,測定障害がみられる.深部覚障害がないにも関わらず運動が目的点を越える測定過大,目的点に達しない測定過小をあわせて測定障害とよぶ.鼻指鼻試験,踵膝試験などでみられることがある.
✕3 跳ね返り現象は,上肢の協調運動の検査であり,時間測定障害をみる.運動分解とは,運動軌道が円滑でなく,何段階かに分かれたり,運動軌道から行きつ戻りつする状態を指し,指耳試験などで評価する.
◯4 踵膝試験は,下肢の協調運動の検査であり,測定障害,協働収縮不能がみられる.
✕5 膝打ち試験は,上肢の協調運動の検査であり,反復拮抗運動障害がみられる.
正解 : (4)
【解法の要点】
選択肢は小脳運動失調症の評価に用いる検査である.時間測定異常とは,ある動作を開始や停止しようとするときに,健常者より動作が遅れることをいう.
【解説】
✕1 foot pat(下肢遠位テスト)は,前脛骨筋の筋力と足関節の反復拮抗運動の協調性の評価に用いる.
✕2 指鼻試験は,測定異常,運動分解の評価に用いる.
✕3 継ぎ足歩行は小脳障害のほかに,失調歩行を来す前庭神経障害や深部感覚障害を検出できる.
◯4 跳ね返り現象は,患者の肘関節を軽度屈曲位にして手関節部を握り,肘屈曲させ,急に手を離したときに患者が顔または手を打つ現象である.屈曲から伸展への転換の動作が遅れることで生じる.
✕5 コップ把持検査は,コップを左右の手で持たせて違いを見つけることで協調運動の評価をする.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄小脳変性症の病態と重症度分類を理解したうえで,それぞれの福祉用具の使用方法を考え,解答する.脊髄小脳変性症に対する作業療法としては,上肢の協調運動,ADL練習,環境調整などが挙げられる.重症度分類下肢Ⅲ度(中等度)は,「歩行はできるがほとんど常に杖や歩行器などの補助具,または他人の介助を必要とし,それらがない時は伝い歩きが主体となる状態」である.また,上肢Ⅳ度(重度)は「手先の動作は拙劣で,他人の介助を必要とする状態」である.
【解説】
✕1 ポータブルスプリングバランサーは,スプリングの張力によりわずかな力でも自身の腕を動かすことのできる福祉用具で,高位脊髄損傷,筋ジストロフィー,腕神経叢麻痺,多発性筋炎,筋萎縮性側索硬化症,Guillain-Barré症候群などの上肢の筋力低下が著しい疾患に適応がある.重症度上肢Ⅳ度の脊髄小脳変性症では手先の動作は拙劣であるが,上肢の動作は保たれるので適応とならない.
◯2 キーボードカバーは,振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものであり,運動失調のある脊髄小脳変性症の患者に用いられる.
◯3 ふらつきが強いため転倒のリスクが高く,シャワーチェアーの使用は必要である.
◯4 トイレまでの移動がスムーズに行えない場合,ポータブルトイレの使用が適切である.
◯5 運動失調による歩行障害を呈するため,歩行器の使用は必要である.
正解 : (1)
【解法の要点】
脊髄小脳変性症では,運動失調,測定異常があるため目的物に到達することが難しいことを考える.本症例ではSTEF(Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)が100点満点のうち右46点,左48点であり,年齢から考えても両上肢の把持・移動の能力は著しく低下しており,障害が進行していることがわかる.
【解説】
✕1 タイピングエイドは主に関節リウマチや,手指に麻痺がある人に用いられる.
✕2 PSBの主な適応疾患は,高位脊髄損傷,筋ジストロフィー,腕神経叢麻痺,多発性筋炎,筋萎縮性側索硬化症,Guillain-Barré症候群などである.
✕3 BFOは主に第4,5頸髄損傷者に用いられる.
◯4 キーボードカバーは,振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものであり,運動失調のある脊髄小脳変性症,アテトーゼ型脳性麻痺などに用いられる.
✕5 トラックボールマウスは,ボールを転がすことで PC上のマウスポインタを移動させるポインティングデバイスである.運動失調のある脊髄小脳変性症者には操作が難しい.
正解 : (4)