【解法の要点】
多発性硬化症とは,中枢神経系の白質のいたるところに炎症性の脱髄病変が発生し(空間的多発性),多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す(時間的多発性)疾患である.症状としては,球後視神経炎による視力障害や眼球運動障害,錐体路障害による運動障害,感覚障害が起こる.
【解説】
✕1 女性に多い.
◯2 解法の要点 参照.
✕3 15~50歳で発症し,20~30歳代が発症のピークである.
✕4 再発と寛解を繰り返しながら進行することが多い.
◯5 球後視神経炎による視力障害が多い.
正解 : (2),(5)
【解法の要点】
両側視神経炎による視力低下・視野狭窄,もしくは多発性硬化症の脳幹病変による複視を来している可能性がある.疲労の訴えが多いため,座位で行え,視力や巧緻性や筋持久力を求めない作業療法が適切である.また多発性硬化症の患者にリハビリテーションを実施する際には,疲労や心理的ストレスを避けるように注意が必要である.
【解説】
✕1 菊練りとは陶芸において土の空気を抜く作業である.全身の筋肉を使う作業であり,疲労や体温上昇で症状が悪化する多発性硬化症の患者には適切ではない.
✕2 木工作業には金槌などを使用するため,視覚障害がある本症例では危険である.また,作業全体の上肢への負担も大きい.
✕3 ビーズ細工は巧緻性が必要な作業であり,視覚障害のある本症例には適切ではない.
◯4 卓上編み機は,視力が低くても比較的使用が容易であり,大きな力を必要とせず,また細かい作業が少なく休みながらの作業が可能であり,適切である.
✕5 細かいタイルモザイクは巧緻性が必要な作業であり,視力障害のある本症例には適切ではない.
正解 : (4)
【解法の要点】
多発性硬化症(MS)は治療法が未だ確立していない難病であり,病気の再燃・再発の防止が重要となる.リハビリテーションを実施する際には,評価の段階から疲労や心理的ストレスを避けるように細心の注意が必要になる.悪化・再発の因子として,感染症,過度の運動,疲労,体温の上昇,外傷,外科手術,精神的ストレス,出産,紫外線などがある.
【解説】
✕1 Borg(ボルグ)指数は,自覚的な運動強度を6~20で表し,その10倍の数値がおおよその心拍数となる.15は“きつい”に分類されるため比較的負荷の大きい運動にあたり,不適切である.
◯2 Uhthoff徴候とは,疲労や体温上昇によって症状が一過性に悪化することである.室温を適度に保ち,体温の上昇を招くようなことを避けるように指導することが必要である.
✕3 漸増抵抗運動のような負荷のかかる運動は,過用性筋力低下により症状の悪化を招く可能性がある.
✕4 Frenkel体操は,視覚で代償して運動制御を促通する運動療法であり,脊髄癆性運動失調などに対して行われる.目標物を視覚で確認して行うため,球後視神経炎を初発症状として呈することが多く,視覚障害がある本症には適用されない.
✕5 自動的あるいは他動的に関節を動かす刺激が発作を誘発し,痛みやしびれを伴って四肢が強直発作を示すものを有痛性強直性けいれんという.他動的関節可動域運動はこれを誘発するため不適切である.
正解 : (2)
【解法の要点】
両側視神経炎により,視力低下もしくは複視を来していると考えられる.歩行不能で,上肢の筋力はMMT 3~4レベルであり,有痛性けいれんも生じていることから,座位の作業かつ視認性や巧緻性を求めない作業療法が適切である.また,多発性硬化症の患者にリハビリテーションを実施する際には,疲労や心理的ストレスを避けるように注意が必要である.
【解説】
✕1 巧緻性が必要な作業であり,視覚障害のある本症例には適切ではない.
✕2 木工作業は金槌などを使用するため,視力低下もしくは複視があるため危険である.また,作業全体の上肢への負荷量が大きい.
◯3 卓上編み機は,視認性が低くても比較的使用が容易であり,大きな力を必要とせず,また細かい作業が少なく休みながらの作業が可能であり,最適である.
✕4 小さな刻印でのスタンピングは細かい作業であり,巧緻性が必要な作業である.さらに木槌を使用するが,視力低下もしくは複視があるため危険である.負荷量が大きく本症例では筋力低下により木槌は使用できない可能性もある.
✕5 巧緻性が必要な作業であり,視覚障害,有痛性けいれんのある本症例には適切ではない.
正解 : (3)
【解法の要点】
深部腱反射の亢進がみられるのは,上位運動ニューロンが障害されたときである.神経筋疾患は,病変部を意識すると症状が理解しやすい.
【解説】
✕1 重症筋無力症の病変部位は神経筋接合部である.深部腱反射は亢進しない.
◯2 多発性硬化症は,中枢神経の白質の至るところに炎症性の脱髄性病変が発生し(空間的多発性),多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す(時間的多発性).上位運動ニューロンの障害であり,深部腱反射は亢進する.
✕3 Guillain-Barré症候群は,免疫・炎症性末梢神経障害である.そのため,深部腱反射は亢進しない.
✕4 筋強直性ジストロフィーは,収縮した骨格筋が弛緩しにくくなる現象(ミオトニア現象)と,全身の筋力低下・筋萎縮を主症状とし,その他にも多彩な症状を呈する疾患である.筋原性疾患であり,深部腱反射は亢進しない.
✕5 Duchenne型筋ジストロフィーは,骨格筋の変性・壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をみる遺伝性の筋原性疾患であり,深部腱反射は亢進しない.
正解 : (2)