【解法の要点】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の終末期には呼吸筋障害や球麻痺などにより発声困難になるため,終末期でも比較的保たれることが多い眼球運動・眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用されている.
【解説】
✕1 球麻痺症状がみられるため,舌の運動は障害されている.
✕2 口唇運動は四肢の動きが悪くなってからもマイクロスイッチなどを操作するために有用ではあるが,終末期では障害される.
✕3 呼吸筋は障害される.本症例はすでに呼吸困難を自覚しており,不適切である.
✕4 運動ニューロンの障害により手指の運動も障害されている.
◯5 眼球・眼瞼運動は終末期でも保たれていることが多いので,透明文字盤などを用いてのコミュニケーションや視線入力装置を介しての環境制御装置の操作が可能である.
正解 : (5)
【解法の要点】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する根治療法や特効薬はなく,病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である.リハビリテーションでは,筋萎縮,筋力低下,呼吸機能低下,嚥下障害,構音障害などに対し,状況に合わせて患者のQOLが保たれるように支援する.
【解説】
◯1 ALSでは機能の低下が徐々に進行し,リハビリテーションによりQOLの低下を遅らせることができる.
✕2 ALSは徐々に進行する疾患である.このグラフのように再発と不完全な回復を繰り返すパターンがみられるのは多発性硬化症の臨床経過である.
✕3,4 ALSでは,機能が著明に低下した後,自然経過で改善することはない.
✕5 ALSでは,リハビリテーションにより進行の速度を抑える一定の効果は望まれるものの,一旦低下した機能の改善は見込めない.
正解 : (1)
【解法の要点】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に関する問題である.ALSは上位運動ニューロン障害(下肢に強い)と下位運動ニューロン障害(上肢に強い)が同時にみられ,徐々に進行する原因不明の進行性の疾患である.感覚障害,眼球運動障害,膀胱直腸障害,褥瘡,小脳症状,錐体外路症状はみられない(陰性症状)ことも記憶しておこう.
【解説】
✕1 感覚障害はみられない.
✕2 線維束攣縮は下位運動ニューロンの障害でみられる.ALSは下位運動ニューロン障害がみられるため,線維束攣縮はみられる.
✕3 針筋電図で多相性波形はみられる.
✕4 ALSでは,肉眼的に脊髄前根や前角の萎縮,および前角の変性がみられる.
◯5 ALSは上位運動ニューロン,下位運動ニューロンが同時に障害される.
正解 : (5)
【解法の要点】
自宅退院を計画している筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者への対応を考える問題.ALSは上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が同時にみられ,徐々に進行する原因不明の疾患であり,全身に筋萎縮,運動麻痺が進行する.眼球運動障害,感覚障害,膀胱直腸障害,褥瘡は末期まで現れにくい(四大陰性徴候).
【解説】
✕1 誤嚥性肺炎後,胃瘻を造設しており,常食で開始するのは適切ではない.
✕2 エアマットは褥瘡予防などの際に用いる.解法の要点より, ALS患者には末期まで褥瘡が現れにくいため,現段階でエアマットの使用を勧める必要はない.
✕3 ALSは進行性疾患であり,構音障害が生じた患者とのコミュニケーションに透明文字盤はしばしば使われている.透明文字盤は上肢が動かせず,眼球運動しかできないとき,伝えたい文字を相手との視線の中心に来るように動かして使うものであるが,本症例では上肢が動くので通常の文字盤でよい.
◯4 トイレ動作のFIM(functional independence measure)は6点の修正自立であり,ポータブルトイレの使用は自立できる.
✕5 チンコントロール電動車椅子(chin control electric wheelchair)は,上肢が使えない人のために,あご(chin)を使ったジョイスティック・レバーの操作や,頭の動きや呼気による主電源や速度切換えスイッチ,リクライニング用のスイッチ操作を可能にしたものである.本症例では上肢筋力はMMTの4レベルであるため導入する必要はない.
正解 : (4)
【解法の要点】
症例は手指の疲労が出現していることから,まずは把持を補助できるような補助具を選択する.
【解説】
✕1 吸口付コップは,コップを倒しやすいときやコップから飲めない場合に用いる.手指の疲労が問題であるため,把持を補助できるコップホルダーを使用する.
✕2 手指の疲労を訴えてはいるが,食事動作自体は困難になっていない.導入は時期尚早である.
◯3 手指の疲労があり食事がしにくくなったと訴えており,ユニバーサルカフを用いて,スプーンなどの把持を補助することは適切である.
✕4 上肢の近位筋の筋力は保たれており,リーチ制限がないことが考えられる.現段階でもターンテーブルを設置すれば食事動作の負担を軽減させることにはなるが,早急に導入する必要性は低い.
✕5 症状がより進行した場合,ポータブルスプリングバランサーやBFOの導入を検討する必要性があるが,現段階では上肢の近位筋の筋力が保たれており,導入を検討するには時期尚早である.
正解 : (3)