【解法の要点】
心臓は,血液を全身に送り出す機能と,全身からの血液を受け取る機能とを有する.心不全では,これら2つの機能が不十分な病態により,心臓からの拍出量低下および心臓への還流低下を来す.原因部位により,左心不全と右心不全に分けられるが,両心不全も多くみられる.右心不全での心臓への還流低下により,下腿浮腫,頸静脈怒張などを来す.さらに左心不全での全身への心拍出量低下により末梢循環不全,四肢冷感などを来す.これらの基本事項を押さえておけば正答できる.
【解説】
◯1 浮腫は右心不全の代表的な症状である.
◯2 心臓のポンプ機能が低下することにより,末梢循環不全となり四肢冷感を来す.
✕3 体静脈系のうっ血により,体内水分量が増加するために,体重が増える.
✕4 右心不全により静脈血が心臓に戻りにくくなり,その結果頸静脈圧は上昇する.
✕5 心不全では体内水分量は増加しているため,相対的に水分量が多くなり,体内のナトリウムは希釈されて低ナトリウム血症となる.
正解 : (1),(2)
【解法の要点】
各分類ともに有名どころであり一度くらいは名前を聞いたことがあるかと思われるが,何をどのように評価しているものであるかは再度確認しておこう.
【解説】
✕1 Killip分類は,理学的所見に基づいた急性心筋梗塞の重症度分類である.
◯2 NYHA分類は,自覚症状から判断する心不全の重症度分類である.
✕3 Fontaine分類は,症状に基づいた閉塞性動脈硬化症の分類である.
✕4 Forrester分類は,心係数と肺動脈楔入圧に基づいて心不全の評価を行う分類である.
✕5 Hugh-Jones分類は,歩行や日常生活動作の遂行状況の観点に基づいた,呼吸困難の重症度分類である.
正解 : (2)
【解法の要点】
心電図を読み取る問題である.半年前の心電図は,①QRS波が等間隔にならずに,不規則に現れること,②基線が細かく波打つようであること,より心房細動と判定される.今回の心電図ではST上昇,異常Q波(Q波の幅が0.04秒以上,または,Q波の深さがR波の高さの1/4であることで判断できる)がみられており,心筋梗塞を発症したと考えられる.また,心電図はR波よりS波がやや大きく,V2ないしV3からの胸部誘導での波形と思われる.これらの誘導でST上昇がみられれば前壁梗塞が疑われる.
【解説】
✕1 狭心症では,ST低下がみられる.
◯2 ST上昇と異常Q波が認められるため,心筋梗塞である.
✕3 心房細動では,リズムが不整で心房の興奮が形・大きさ共に不規則であり,基線が揺れている.半年前の心電図が心房細動である.
✕4 房室ブロックは,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型に分けられ,心電図では,PQ間隔の延長,QRS波の脱落,P波は明確などがみられる.また基線は直線的である.今回の心電図では,基線が揺れておりP波が特定しにくいため,房室ブロックとは判定できない.
✕5 心室性期外収縮では,先行するP波がなく,幅広く変形したQRS波がみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
心電図に関する問題である.選択肢に並んでいる症状の心電図は,典型的なものであるため,それぞれ整理して覚えておこう.
【解説】
✕1 二段脈は,洞調律や上室性調律と心室性期外収縮が交互に出現することであり,ジギタリス中毒に伴うことで知られている.
✕2 心房粗動は,規則正しいRR間隔,幅の狭いQRS波,P波の代わりに規則正しい心房粗動波(F波)が認められる.
✕3 心室頻拍は,幅広いQRS波が規則正しく出現する.また,頻拍なので脈拍数は上がっており,RR間隔は狭くなっている.
◯4 ST低下は,主に心筋虚血によってみられる所見であり,この設問の心電図に合致した所見である.
✕5 上室性頻拍は,心房や房室結節に起因する上室性不整脈である.発作性上室性頻拍であれば,規則正しいRR間隔で,幅の狭いQRS波の連続を認める.
正解 : (4)
【解法の要点】
急性心筋梗塞後リハビリテーションにおける,運動負荷について問われている.基準を覚えておかないといけないが,運動負荷に対する一般的な感覚で解けた人も多いのではないだろうか.運動したら血圧は当然上昇するが,どの程度血圧が上昇するのかを普段から考えておくと,こうした問題にも安心して対応できるであろう.
【解説】
✕1 急性心筋梗塞の運動負荷試験のステップアップ進行基準に,「胸痛,息切れ,動悸,ふらつき,疲労などの自覚症状がないこと」とあり,基準を満たさない.
✕2 心室細動は重症不整脈の一つであり,基準を満たさない.
✕3 「心電図上0.2mV以上のST低下または梗塞部の異常なST上昇のないこと」とあり,基準を満たさない.
✕4 「心拍数が120/minまたは安静時より40/min以上増加しないこと」とあり,基準を満たさない.
◯5 収縮期血圧の10mmHgの増加は許容範囲となる.
正解 : (5)
【解法の要点】
高血圧,高脂血症,糖尿病の基礎疾患があり,上肢の運動負荷で生じた動悸と肩周囲の違和感の訴え,運動の中止後に数分で症状が消失したことから,症状出現のタイミングと症状消失時間から総合的に考え解答する.
【解説】
✕1 低血糖では,動悸はみられるが左肩周囲の違和感は認められない.また,対処法として糖の補給が必要であり,数分の安静だけでは改善しない.
✕2 起立性低血圧では,意識障害,ふらつき,めまい,錯乱などが,起立後数秒から数分以内に起こり,臥位により速やかに消失する.症例は,動悸と左肩周囲の違和感を訴えており,離床直後のタイミングでもないので原因としては考えにくい.
✕3 心筋梗塞患者は,高血圧症,脂質異常症,糖尿病といった基礎疾患を有することが多く,運動中の訴えも当てはまるが,心筋梗塞では発症から15分以上は症状が持続する.
◯4 虚血性心疾患のリスクとなる基礎疾患を有していること,動悸と左肩周囲の違和感,運動と安静が症状の出現と消失に影響していることから,労作性狭心症であると考えられる.
✕5 自律神経過反射は,交感神経系の異常反射が生じたときにそれを抑制できず,頭痛,発汗,顔面紅潮,徐脈などが起こる.誘因としては,膀胱内に尿が貯留した場合が圧倒的に多い.高位脊髄損傷患者において多くみられる.自律神経過反射を来しうる病歴はなく,左肩周囲の違和感の訴えにも合わない.
正解 : (4)