【解法の要点】
末期のがん患者に対する適切な対応を問われている.本症では, 骨転移があり左肩と背部の疼痛を訴え,痛みのため歩行困難と食欲低下があることから優先される対応を考える.
【解説】
✕1 現段階では嚥下障害はなく,嚥下訓練は除痛と比較し優先されるべき対応ではない.
◯2 疼痛に対するアプローチはQOL維持の観点からも優先されるべき事項である.
✕3 転移部分を含めた無理なROM訓練は,骨折等を誘発するため禁忌である.肩と背中に骨転移性の痛みがあるため肩のROM訓練は難しいであろう.廃用性の拘縮や可動域低下の予防のためにも除痛してから可能な範囲で行うべきである.
✕4,5 歩行困難と食欲低下は痛みのためであり,下肢筋力強化訓練や経管栄養の優先度は低い.
正解 : (2)
【解法の要点】
乳癌手術では,乳房切除,腋窩リンパ節郭清を行うとリンパ還流が障害されるため,リンパ浮腫や腋窩周辺の瘢痕化や癒着,神経障害による知覚異常などの症状が起こりうる.
【解説】
✕1 日光による炎症で皮膚障害が起こりうる.リンパ浮腫は感染による皮膚障害を契機に増悪しやすいため,感染リスクを上げる行動はできるだけ回避すべきである.
✕2 術側上肢の挙上などの自動運動やポジショニングによりリンパ還流が改善し,浮腫が軽減するため,固定しない方がよい.
✕3 事務職に転職する必要はないが,保育士の業務を継続するにあたっては右上肢での子どもの抱っこを左に替えるなど,右上肢に負担がかからないような作業姿勢に留意する必要がある.
◯4 術側上肢を長時間下げた肢位は適切でなく,さらに術側の肘にカバンなどの重量物をかけるのもリンパを滞留させるためによくない.重量物を持つ場合は健側で行うよう指導する.
✕5 術後の早期リハビリテーション開始により,患肢肩関節の可動障害および浮腫が生じにくくなる.上肢挙上の日常生活動作は術後の癒着予防効果もあるため,適度に休息をとりつつ行えば制限の必要はない.
正解 : (4)
【解法の要点】
トータルペイン(全人的苦痛)は身体的・精神的・社会的・霊的(スピリチュアル)の4つの苦痛をいうが,スピリチュアルペインとは,死を目前にした癌患者などが,患者自身の人生の否定,価値観の否定,存在自身の否定を受けたと感じることに起因する,抑うつ,不安,怒り,いらだち,諦観などをいう.
【解説】
✕1 体の倦怠感は,身体症状であり,身体的苦痛に含まれる.
✕2 薬の副作用は,トータルペインに対する薬物治療を行うことによってみられるものである.身体的苦痛である.
✕3 家庭内の問題は,社会的苦痛に含まれる.
◯4 生きる価値の喪失は,人生の意味への問いや価値体系の変化であると考えられ,スピリチュアルペインに含まれる.
✕5 日常生活活動の困難さについて,身体的な困難であれば身体的苦痛に含まれ,心理的な困難であれば精神的苦痛に含まれる.いくつかの苦痛が合併することは多いが,スピリチュアルペインには含まれない.
正解 : (4)
【解法の要点】
がん患者の遺族が行うのは,家族を亡くしたことへの嘆き悲しみから回復し,死別後の生活に適応していくことである.緩和ケアはこの過程を支えることも含んでおり,その流れに即した選択肢を選ぶ.
【解説】
✕1 Assertion(アサーション)とは,自分の考えや意見を主張することをいう.言語化することで自分の気持ちに向き合えることになるが,がん患者の遺族に特定されたものではない.
◯2 Grief work(グリーフワーク)とは,「喪の作業」と訳されるフロイト(精神分析の創始者)の言葉で,「家族や友人を亡くしたことを嘆き悲しみ,その後回復していく過程」のことである.
✕3 Valation(バリデーション)は,元来は「承認」の意であるが,認知症患者に対して,尊敬と共感をもって関わり,患者の自尊心を高めるような支援をする方法である.
✕4 Living will(リビングウィル)は,「生きている間に効力を発揮する遺言」のことであり,意思決定能力を失った場合に備えて,患者本人が希望する医療内容を事前に意思表示するものである.
✕5 Narrative approach(ナラティブアプローチ)とは,患者の主観を含めた「語り(物語)」を重視し,そのうえで医療者側の考えも伝え,患者と医療者が一体となって医療を進めていく方法をいう.
正解 : (2)
【解法の要点】
「13歳の男子」「膝の疼痛」「大腿骨遠位の境界不明瞭な腫瘤」に加え,単純エックス線写真にて骨幹端部から骨幹部にかけての骨新生像,骨膜反応がみられることから,本症例は骨肉腫だと考えられる.リハビリテーションでは,化学療法による易感染性や体調への配慮が必要である.また,骨強度の低下により,軽微な外力で骨折する病的骨折を生じる可能性が高い.これらの点を考慮し解答する.
【解説】
◯1 化学療法中は骨髄抑制を生じる可能性があるため,血液所見に注意を払う必要がある.骨髄抑制を起こした患者は易感染性状態のため,感染対策に配慮して場所や防護具などを選択し,状態によっては中止を検討する.
✕2 患部は腫瘤として触れるくらい大きく,マッサージなどの外力でも病的骨折の可能性があるため,患部のマッサージは行わない.
✕3 骨肉腫の手術療法では,患肢温存の可不可によって広範切除術(患肢温存術),または患肢切断術が行われる.患側は病的骨折のリスクが高いため,健側と同様の負荷は不適切である.
✕4 悪性腫瘍に対する温熱療法は,超音波による腫瘍の増大や血流増加による転移促進のおそれがあるため禁忌である.また,小児の骨端線近くへの温熱療法は,骨端部を損傷するおそれがあり禁忌となっている.
✕5 骨肉腫の治療は,手術療法と化学療法を組み合わせて行う.化学療法は,術前・術後に行うことで微小な転移巣を撲滅し,かつ局所病変を縮小させて患肢温存率を向上させる.化学療法は数ヵ月に渡って実施されるので,健側の廃用性筋萎縮予防のため,患者の状態に注意しながら健側のリハビリテーション治療を行う.
正解 : (1)
【解法の要点】
がん患者の身体機能評価には,ECOGのPS(Performance status)とKPS(Karnofsky performance scale)がある.
【解説】
✕1 AIMS(Arthritis Impact Measurement Scales:関節炎影響測定尺度)は,関節リウマチ患者自身による運動機能評価で,QOLの評価法として国際的に用いられている.
✕2 FMA(Fugl-Meyer assessment)は,片麻痺患者の身体機能の回復について上肢・手指・下肢の運動機能やバランス,感覚などを226点満点で評価する.
✕3 GBSスケールは,認知症状評価尺度であり,知的機能・自発性・感情機能・その他の精神症状・運動機能の項目で構成され,ある程度量的な測定が可能である.対象者の診察や対象者をよく知るものからの行動観察情報により評価する.
✕4 Hoffer分類は二分脊椎の移動能力の評価基準で,独歩(CA),屋内歩行(HA),訓練レベル(NFA),歩行不能(NA)に分類する.
◯5 KPS(Karnofsky performance scale)は,がん患者の全身状態や日常生活での活動度評価ツールとして臨床において使われている.日常生活での活動能力を,0(死)~100(正常)%までの11段階に分類する.
正解 : (5)