【解法の要点】
ASIA(American Spinal Injury Association:米国脊髄損傷協会)の脊髄損傷の神経学的・機能的国際評価法は,運動機能スコアと知覚機能スコアの得点結果から,神経損傷高位と機能障害スケール,臨床症状分類を判断できるように構成されている.感覚機能スケールのkey sensory point,機能障害の重症度スケールと一緒に覚えておく.脊髄損傷患者において,肛門括約筋および肛門周囲の感覚が残存しているかが完全麻痺かどうかを鑑別するポイントとなる.
【解説】
◯1 肛門の随意収縮の有無を評価する.
◯2 肛門周辺の感覚の有無を評価する.
✕3 球海綿体反射はASIAにはない.
✕4 筋緊張の評価はASIAにはない.
✕5 肛門反射の評価はASIAにはない.
正解 : (1),(2)
【解法の要点】
ASIA(米国脊髄損傷協会)機能障害尺度ではA(完全麻痺)が最も障害を受けており,E(正常)まで分類されている.C(不全麻痺)では,神経学的レベルより下位に運動機能は残存しているが,主要筋群の半分以上が筋力3未満である.本症例は,C5以下の運動機能は残存しているが,抗重力位を保てないレベルと考えられる.残存機能と獲得可能な動作から褥瘡の原因を考える.
【解説】
✕1 C5レベルASIA Cであれば移乗は,前方もしくは側方での移乗になると考えられる.自立もしくは部分的に介助が必要であるとしても,肘頭に圧がかかるわけではなく,移乗の動作が褥瘡の原因となることは考えにくい.
✕2 C5レベル不全麻痺では車椅子座位で過ごす時間が長くなると考えられるが,長時間の車椅子座位をとる脊髄損傷患者の褥瘡好発部位は坐骨部であり,肘頭は考えにくい.
✕3 立ち上がりでは肘頭は圧迫されない.
◯4 臥位から座位へと起き上がる際に,on elbowの状態では肘頭へ圧がかかるため,動作の見直しが必要であると考えられる.
✕5 プッシュアップ動作で肘頭に圧が加わることはない.
正解 : (4)
【解法の要点】
標準筋群(key muscles)は,①筋の機能が脊髄髄節を代表するものである,②筋の活動が機能的に重要である,③代表的筋の運動が背臥位で検査可能である, という観点から選択されている.
【解説】
◯1 小指外転筋は尺骨神経支配でT1レベルのkey muscleである.
✕2 母指の外転筋は,長母指外転筋が橈骨神経支配でC6~8,短母指外転筋が正中神経支配でC7~8レベルであり,T1のkey muscleではない.
✕3 示指の伸筋は,示指伸筋が橈骨神経支配でC6〜8,総指伸筋が橈骨神経支配でC6〜8レベルである.
✕4 中指末節の屈筋は,深指屈筋でC8のkey muscleである.
✕5 手背屈筋は,長・短橈側手根伸筋でC6のkey muscleである.
正解 : (1)
【解法の要点】
上腕外側:C5,乳頭:T4,臍部:T10,下腿外側~足背内側:L5(腰椎ヘルニアの好発部位),肛門:S5などは覚えておくとよい.全部覚えようとすると逆に忘れてしまったりするので,代表的なものを覚えておく.
【解説】
✕1 ①は上腕外側で,脊髄レベルはC5である
◯2 ②は中指で,脊髄レベルはC7である.
✕3 ③は乳頭の高さで,脊髄レベルはT4である.
✕4 ④は大腿遠位部で,脊髄レベルはL3である.
✕5 ⑤は肛門部で,脊髄レベルはS4〜5である.
正解 : (2)
【解法の要点】
ASIA(米国脊髄損傷協会)機能障害尺度ではAが最も障害を受けていることに注意する.運動機能は障害されているが,肛門周囲の感覚が残存しているのでBとなる.
A(完全麻痺):S4~5の知覚・運動ともに完全麻痺.
B(不全麻痺):S4~5を含む神経学的レベルより下位に知覚機能のみ残存.
C(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しているが,主要筋群の半分以上が筋力3未満.
D(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しており,主要筋群の少なくとも半分以上が筋力3以上.
E(正常) :運動,知覚ともに正常.
【解説】
✕1,3〜5
◯2 B=不全:S4~5を含む神経学的レベルより下位に知覚機能のみ残存.
正解 : (2)