【解法の要点】
脳の構造の位置関係を把握しておく必要がある.頭蓋内は硬膜でできた大脳鎌と小脳テントによって大まかに3つのコンパートメントに分かれている.
【解説】
✕(1) 小脳テントは頭蓋内を上下に分ける硬膜である.小脳テントの上部をテント上,下部をテント下という.脳底槽には存在しない.
✕(2) 脳からの静脈血の多くは硬膜に存在する硬膜静脈洞を通る.脳表の静脈のうち,硬膜下腔を通過するのは,架橋静脈である.架橋静脈は外傷で損傷を受けやすい.
✕(3) 大脳鎌は左右の大脳半球の仕切りとなる硬膜である.大脳縦裂(左右の半球に分けられた空間)内に大脳鎌が入っている.Sylvius裂(外側溝)は側頭葉の上縁に位置する.
◯(4) くも膜と軟膜の間をくも膜下腔とよび,脳脊髄液が灌流している.
✕(5) 透明中隔は側脳室の内側壁を構成しており,左右の側脳室の間にある.
正解 : (4)
【解法の要点】
大脳皮質から脊髄に向かって下行する運動経路のうち,延髄の錐体を通過する経路を錐体路という.外側皮質脊髄路ともいい,大脳皮質運動野より始まり,内包後脚,中脳の大脳脚,橋縦束を通って,延髄で交叉(交差)し,脊髄側索を通って下行する.脊髄側索を通って下行した後,前角で下位運動ニューロンとシナプスを形成する.
【解説】
✕(1)脳梁は左右の大脳半球を結ぶ交連線維束の白質であり,大脳縦裂の底部に存在する.
◯(2)錐体路は大脳脚を経由する.
✕(3)上小脳脚は小脳の主たる出力経路である.主に歯状核に起始し,赤核,視床へと繋がる遠心性線維から構成され,ほかに前脊髄視床路から小脳前葉に至る求心性線維の一部も含まれている.
✕(4)中小脳脚は,最大の小脳脚で,大脳新皮質の感覚野・運動野からの下行路が橋核を介して小脳へ入力する線維が大半を占めている.
✕(5)下小脳脚は,深部感覚を伝える上行伝導路である後脊髄小脳路が通る.一次ニューロンは脊髄後角基部の胸髄核(クラーク核)においてシナプスを形成する.ニューロンは同側の側索後外側を上行し,下小脳脚を介して小脳虫部に投射する.
正解 : (2)
【解法の要点】
脳の動脈枝の灌流支配領域を整理して覚えておく.脳底動脈は前下小脳動脈・上小脳動脈に分岐して小脳を灌流し,直接穿通枝を出して橋や視床・視床下部を灌流する.さらに,後大脳動脈に分岐して,後頭葉を灌流支配する.
【解説】
✕(1)前大脳動脈は内頸動脈から分枝し,Willis動脈輪を構成する血管である.
✕(2)中大脳動脈は内頸動脈から分枝する.
✕(3)後交通動脈は内頸動脈から分枝し,Willis動脈輪を構成する血管である.
◯(4),(5)上小脳動脈,前下小脳動脈は脳底動脈から分枝する.後下小脳動脈は椎骨動脈から分枝する.
正解 : (4),(5)
【解法の要点】
脊髄に関する基本的な知識と,運動・感覚系の各伝導路の走行を確認しておく.
【解説】
✕(1) 脊髄後角には,体性感覚神経(特に温痛覚)の二次ニューロンの細胞体がある.
✕(2) 深部感覚の一次ニューロンは後根神経節(脊髄神経節)にあり,後根から脊髄に入る.脊髄後索を上行した後に,延髄で交叉し二次ニューロンとなり,内側毛帯を通り,視床で三次ニューロンになり大脳皮質の体性感覚野に至る.
✕(3) 運動神経は脊髄側索を下行したのち,脊髄の前角でシナプスを形成し,二次運動ニューロンへ接続する.
✕(4) 運動神経は脊髄側索を下行したのち,脊髄の前角でシナプスを形成し,二次運動ニューロンへ接続する.
◯(5) すべての感覚神経(体性感覚)の一次ニューロンの細胞体は,脊髄後根神経節に存在する.
正解 : (5)
【解法の要点】
大脳における感覚の中枢に関する問題である.前頭葉は主に運動,頭頂葉は主に体性感覚,側頭葉は聴覚・感覚性言語・視覚性認知(視覚そのものではない),後頭葉は視覚と最低限覚えておく.大脳では,中心溝が前頭葉と頭頂葉の境界になっており,中心溝の前が中心前回(一次運動野),後ろが中心後回(一次体性感覚野)である.
【解説】
◯(1) 一次運動野は前頭葉に位置する.前頭葉は運動機能(運動野),言語(Broca野),感情や判断力を司る.
✕(2) 一次体性感覚野は頭頂葉に位置する.側頭葉は聴覚(聴覚野),感覚性言語,視覚性認知(視覚そのものではない)を司る.
✕(3) 聴覚野は側頭葉に位置する.
✕(4) Broca野は前頭葉に位置し,運動性言語を司る.
✕(5) Wernicke野は側頭葉に位置し,感覚性言語を司る.
正解 : (1)
【解法の要点】
脳の解剖について問う問題である.頭頂葉と後頭葉は頭頂後頭溝によって分けられる.外側溝はシルビウス溝ともよばれ側頭葉の上縁をなす.
【解説】
◯(1) 黒質は中脳腹側に存在する.
◯(2) 海馬は側頭葉内側にある.
✕(3) 上小脳脚が中脳と小脳を連絡する.
◯(4) 脳梁は左右の大脳半球を結ぶ交連線維束であり,大脳縦裂の底部に存在する.
◯(5) ローランド溝によって前頭葉と頭頂葉に分けられる.大脳縦裂によって,左右の半球に分けられる.
正解 : (3)