【解法の要点】
生命維持のために最低限必要なエネルギー量(覚醒時)を基礎代謝量という.基準体位(身長,体重)から推定することが出来る.これと比べて,安静時代謝量は,基礎代謝量に姿勢保持のためのエネルギー代謝量を加えたもので(一般的な安静状態での代謝量を指す.基礎代謝量よりも厳密な測定条件ではない),基礎代謝量の1.2倍程度となる.1MET=安静時代謝量である.
【解説】
◯(1) 快適な環境温度のもとに安静空腹臥床(覚醒)のエネルギー産出量として測定される.
◯(2) 体温の上昇によって,代謝量は増大する.
◯(3) 基本的には,皮下脂肪を除いた体重と,体表面積に比例する.
✕(4) 代謝当量(METs:metabolic equivalents)は,運動・作業時代謝量÷安静時代謝量で表される.基礎代謝量を1.0とするのはエネルギー代謝率(RMR)である.
◯(5) 蛋白質は他の栄養素にくらべ特異動的作用(SDA)が大きく,摂取時により大きなエネルギーを消費する.糖質・脂質・蛋白質のSDAで消費するエネルギーは,それぞれ摂取エネルギーの6%・4%・30%である.
正解 : (4)
【解法の要点】
好気性代謝の意味を理解し,好気性代謝回路であるクエン酸回路で生成される物質かどうかを判断させ,それ以外を選ばせる問題である.グルコースから生じたピルビン酸はNADHにより還元され最終産物は乳酸となる.これは嫌気的条件下(酸素不要)で行うことができ,嫌気的代謝(嫌気的解糖)とよばれる.
【解説】
✕(1) アミノ酸は蛋白質の分解により生成される.
✕(2),(3),(5) クエン酸回路で生成される.
◯(4) 嫌気的条件下において,グルコースは解糖系によってピルビン酸に代謝された後,乳酸へと代謝される.ピルビン酸は好気的・嫌気的条件に関わらず,グルコースの代謝における中間代謝産物である.
正解 : (4)
【解法の要点】
エネルギー代謝率(relative metabolic rate:RMR)とは,何もしないでいるときの状態に対して,活動や運動で何倍くらいのエネルギーが消費されたかを示す比率である.以下の公式で求めることができる.
【解説】
✕(1) 内的仕事量÷全仕事量=内的仕事率(PIT)の公式である.PITとは総仕事量に占める内的仕事量の割合であり,内的仕事量とは「作業筋自身が重心周りの運動のために出力する仕事」と定義されている.
◯(2) 解法の要点参照.RMRは,活動による代謝量の増加が基礎代謝量の何倍であるかを表す.
✕(3) 基礎代謝量と体表面積は比例すると考えられている.なお,基礎代謝量÷体重であれば,基礎代謝基準値を指す.
✕(4) 作業(労作)時代謝量÷安静時代謝量=代謝当量(METs)の公式である.
✕(5) エネルギー代謝率を表す指標ではない.
正解 : (2)
【解法の要点】
運動時において,最初はクレアチンリン酸系,次いで解糖系により無酸素的エネル
ギーが供給される.長時間の運動では有酸素系によりエネルギーが供給される.
【解説】
✕(1)20分以上の有酸素運動では脂質がエネルギー源となる.
◯(2)ATPのエネルギーを使って筋収縮が起こる.
◯(3)無酸素(嫌気)性代謝閾値(AT)とは,連続的に酸素摂取量と二酸化炭素排出量の変化をみたとき,酸素摂取量増加度に比べて二酸化炭素排出量の増加度が急激になり始める点のことである.心肺運動負荷試験は,至適運動強度の設定やATを求めることに用いられている.
◯(4)最大酸素摂取量とは,1分間に体重1kg当たりに取り込むことができる酸素量(VO2max)で全身持久力の客観的な指標である.
◯(5)グルコースから生じたピルビン酸は,NADHにより還元されて乳酸(最終産物)となる.これは嫌気的条件下(酸素不要)で行われるため嫌気的代謝(嫌気的解糖)とよばれる.
正解 : (1)
【解法の要点】
基礎代謝,エネルギー代謝に関する基本的な知識を問う問題である.
【解説】
◯(1) 呼吸商(RQ)とは,酸素消費量に対する二酸化炭素排出(生成)量の比である.呼吸商は栄養素によって異なり,糖質が1.0,蛋白質が0.8,脂質が0.7である.
◯(2) 特異動的作用(SDA)とは,食事摂取後の体温上昇のことである.脂質に比べて蛋白質の方がSDAは大きい.
◯(3) 基礎代謝量(BM)は体重ではなく体表面積に比例する.基礎代謝量は除脂肪体重,体表面積,性と年齢などに依存する.
◯(4) エネルギー代謝率(RMR)は,活動による代謝量の増加が基礎代謝量の何倍であるかを表す.
✕(5) 代謝当量(MET)とは,安静座位時の代謝量を基準とした運動強度である.
正解 : (5)