【解法の要点】
心不全とは,心臓のポンプ機能が低下し,心拍出量低下,末梢循環不全,肺・体循環のうっ滞を来す病態をいう.左心不全は肺循環系のうっ血が著明な病態を,右心不全は体循環系のうっ血が著明な病態を指し,下大静脈のうっ血により肝脾腫,下腿浮腫などがみられる.肺・体循環系の両方にうっ血がみられる場合を両心不全という.
【解説】
✕(1)肺水腫は左心不全徴候である.
◯(2)右心機能の低下により全身の静脈系にうっ血を来し,体循環系の諸臓器にうっ血を来たす.
✕(3)起座呼吸は左心不全徴候である.
◯(4)全身の静脈系のうっ血により下腿浮腫を来たす.
✕(5)チアノーゼは左心不全徴候である.
正解 : (2),(4)
【解法の要点】
虚血性心疾患には,一過性の心筋虚血である狭心症と,心筋虚血の持続により心筋壊死に陥る心筋梗塞がある.狭心症と心筋梗塞の鑑別に注意する.
【解説】
✕(1)狭心症の痛みは数分以内に治まることが多い.30分異常持続する強い胸痛は急性心筋梗塞,解離性大動脈などを考える.
✕(2)心エコーでは局所の壁運動低下・消失の出現があれば心筋虚血を判断できる.狭心症では非発作時には血流が保たれているため,特異的な所見を認めない.
✕(3)不安定狭心症とは,重症または増悪型の狭心症であり,心筋梗塞への移行や突然死に至る可能性があるため,早急な対処が必要である.冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され,それによって急激に冠動脈が狭窄し,心筋虚血に至った状態である.
✕(4)負荷心電図では,STの低下(労作性狭心症)が特徴的である.
◯(5)発作時は,ニトログリセリンの舌下投与により通常2~3分で軽快する.
正解 : (5)
【解法の要点】
虚血性心疾患とは,冠動脈が何らかの原因で狭窄・閉塞し,酸素需要に見合った血液を心筋に送ることができなくなり,心筋が虚血に陥ることである.この狭窄・閉塞の原因の多くは動脈硬化(粥状硬化)である.
【解説】
✕(1)一般的に心筋炎では虚血性心疾患は来さない.
✕(2)大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症など,一部の心臓弁膜症では冠血流が低下し虚血性心疾患を併発する可能性があるが,冠動脈の硬化の方が直接的な原因になりうる.
✕(3)肺高血圧では肺に血液が流れにくくなり,右心系に負荷がかかる.右心不全の原因になりうる.
◯(4)冠動脈硬化により冠動脈内径の狭小化から冠血流が減少し,心筋の虚血に至る.
✕(5)深部静脈血栓症(DVT)は肺血栓塞栓症の基礎疾患として重要である.
正解 : (4)
【解法の要点】
心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔に存在する欠損孔に,収縮期に左室から右室へ動脈血が流入する左→右シャントの疾患である.左→右シャントにより右心室から肺動脈への血流量の増加がみられる.
【解説】
✕(1)心室中隔欠損症では,初期には左→右シャントだったものが,肺高血圧が進行することにより右→左シャントを引き起こす.この際,チアノーゼがみられうるが,現在の医療ではチアノーゼを発症する前に発見されることが多く,チアノーゼを生じることはごくまれである.
✕(2)動脈管が開存しているのは,動脈管開存である.
✕(3)卵円孔の閉鎖不全は,心房中隔欠損症である.
◯(4)収縮期に左室から右室へ動脈血が流入するので,肺血流量は上昇する.
✕(5)大動脈から肺動脈に直接血液が流れるのは,動脈管開存症である.
正解 : (4)
【解法の要点】
心電図の基本的な波形について,その発生機序を正確に理解しているかを問うている.
【解説】
✕(1)P波は心房の興奮(脱分極)を意味する.
◯(2)PR間隔は房室伝導時間である.
✕(3)QRS波はhis束,Purkinje線維,心室筋の興奮を意味する.
✕(4)QRS波が心室筋の興奮(収縮),心室内興奮到達時間を表す.ST間隔は心室筋の興奮状態の維持を反映している.
✕(5)T波は心室回復時(再分極)に生じる波形である.
正解 : (2)
【解法の要点】
心房細動の治療の目的は大きく以下の3つである.
①血栓塞栓症の予防:主として抗凝固剤の治療
②除細動:心房細動を止める,起こりにくくする治療
③症状の再発予防:心房細動が出ても症状が起こりにくくする治療.
【解説】
◯(1)β遮断薬はレートコントロールとして脈拍数を抑え,再発予防目的に用いられる.
◯(2)抗凝固薬は血栓塞栓症予防のために用いられる.
◯(3)電気的除細動(カルディオバージョン)は心房細動の治療に用いられる.
◯(4)カテーテルアブレーションは心房細動に対する根治療法として確立してきている.
✕(5)ニトログリセリン(硝酸薬)は心房細動の治療薬ではない.ニトログリセリンは労作性狭心症などの発作時に舌下投与する.
正解 : (5)