【解法の要点】
良性腫瘍は成熟構造であり,膨張性で異型性は軽微ないし軽度である.分裂は緩やかで,転移はみられない.一方,悪性腫瘍は正反対の性質を持つ.分化度が低く未熟構造であり,浸潤性があり異型性が強く,分裂が活発で,しばしば転移がみられる.悪性腫瘍は正常な細胞の増殖,成熟の制御を外れて増殖し,外部からの制御を受けない.
【解説】
◯(1) 悪性腫瘍細胞の増殖は正常細胞に比べて速い.
◯(2) 悪性腫瘍細胞では,核分裂は活発である.
◯(3) 悪性腫瘍細胞の染色体異常は多い.
✕(4) 核/細胞質比(N/C比)は,核と細胞質との面積の比を示すものである.一般的に,悪性腫瘍細胞では,核が腫大するので,核/細胞質比は大きい.
◯(5) 悪性腫瘍細胞の分化度は低く未熟である.
正解 : (4)
【解法の要点】
多発性骨髄腫は形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である.増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変,腎機能障害,M蛋白血症など様々な病態や症状を引き起こす.
【解説】
✕(1) アミロイドーシスやBence-Jones蛋白(尿所見としてみられる異常蛋白)や高カルシウム血症などにより腎障害が生じる.
◯(2) 骨での腫瘍細胞の増殖により骨破壊を来し,病的骨折を引き起こすことがある.
✕(3) 骨髄機能が抑制され,正常血球が減少するために貧血を呈する.
✕(4) M蛋白が増加するため,血清総蛋白量は増加する.
✕(5) 骨破壊から高カルシウム血症を来す.しばしば意識障害を来し緊急性となる.
正解 : (2)
【解法の要点】
食道癌は食道に発生した上皮性腫瘍で,組織学的に約90%が扁平上皮癌である.好発部位は,胸部中部食道,胸部下部食道の順で,胸部中部食道が約50%を占める.アルコール,喫煙,熱い食事,Barrett食道,アカラシアなどが誘引となる.
【解説】
✕(1), ◯(4)食道癌は飲酒歴,喫煙歴のある中高年男性に好発する(男女比は6:1).
✕(2)日本では,食道癌の組織型は扁平上皮癌が多い.一方,Barrett食道から進展して起こる食道癌は腺癌である.
✕(3) 転移形式は血行性よりリンパ行性が多い.
✕(5) 解法の要点 参照.
正解 : (4)
【解法の要点】
乳癌は乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である.乳管起源のものを乳管癌といい,小葉上皮由来のものを小葉癌という.年々増加しており,女性のがんで罹患率第1位,死亡率は第4位(2021年時点)である.40~60歳代の閉経期前後の女性に多い.
【解説】
✕(1)月経前に疼痛が増悪するのは乳腺症である.
◯(2)乳癌の好発部位は乳房の外側上部で,次いで内側上部,外側下部,内側下部,乳輪部の順である.
✕(3) 好発年齢は40~60歳代である.
✕(4)5年生存率は90%前後である.
✕(5)乳癌の罹患率は国や地域によって大きく異なり,東アジアでは欧米よりも低い.しかし,その中でも日本や中国では上昇傾向である.
正解 : (2)
【解法の要点】
リンパ系腫瘍は,造血器腫瘍の中でリンパ球(B細胞,T細胞,NK細胞)に生じた遺伝子異常によって腫瘍性増殖を来し,白血病や悪性リンパ腫などの病態をとる.悪性リンパ腫は,リンパ節組織由来の原発性悪性腫瘍であり,ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別される.
【解説】
✕(1)悪性リンパ腫は,リンパ球が腫瘍化して増殖し,腫瘤を形成する疾患として発出する.頸部の無痛性リンパ節腫脹を初発とすることが多い.
✕(2)多発性骨髄腫は,異型性の形質細胞(=骨髄細胞)が骨髄で増殖することで発症する.形質細胞はBリンパ球系幹細胞由来である.
✕(3)悪性リンパ腫を,リンパ球表面マーカーからみるとBリンパ球が最も多く,全体の70~75%前後を占める.
✕(4)非ホジキンリンパ腫が悪性リンパ腫に占める割合は約95%,ホジキンリンパ腫は約5%である.
◯(5)悪性リンパ腫を含むリンパ系腫瘍は,リンパ球を発生母体とする腫瘍である.リンパ球に生じた遺伝子異常によって起こる.
正解 : (5)
【解法の要点】
人体に発生する悪性腫瘍ではしばしば骨転移が生じるが,骨転移の生じやすさはさまざまである.原発巣が小さいにもかかわらず骨転移がみられやすいのは乳癌,肺癌,前立腺癌,多発性骨髄腫等である.このことを知っていれば正解可能である.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5) 胃癌,肝臓癌,大腸癌,膀胱癌は初期の段階で骨転移がみられることは少ない.
◯(3) 前立腺癌は初期の段階から骨転移がみられやすい.
正解 : (3)