【解法の要点】
本問の選択肢は,遺伝性の筋疾患,神経変性疾患である.いずれも代表的な疾患なので遺伝形式やどの遺伝子の異常で発症するか整理しておく.
【解説】
◯(1)筋強直性ジストロフィーは,常染色体優性遺伝の筋疾患である.
✕(2) 脊髄性進行性筋萎縮症は,常染色体劣性遺伝の神経変性疾患である.
✕(3) Becker型筋ジストロフィーは,X染色体劣性遺伝の先天性筋ジストロフィーのうち軽症のものを指す.
✕(4) Duchenne型筋ジストロフィーは,X染色体劣性遺伝の先天性筋ジストロフィーのうち重症のものを指す.
✕(5) Huntington病は常染色体優性遺伝の神経変性疾患である.
正解 : (1)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーはジストロフィンが欠損し,筋細胞膜の安定性が失われ,進行性に筋細胞が変性,壊死する疾患である.X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)を示し,男児の3,000~3,500人に1人の割合で発症する.
【解説】
◯(1) Duchenne型筋ジストロフィーの発症年齢は3~5歳に多い.
✕(2) Duchenne型筋ジストロフィーでは心筋障害が起こり,ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法を行う.
✕(3)下肢は下腿三頭筋,大腿筋膜張筋,膝関節屈曲筋群,膝関節の関節包・靱帯の拘縮が早期から始まり,下肢の屈曲拘縮を来す.
✕(4)Duchenne型筋ジストロフィーは,X染色体潜(劣)性遺伝の先天性筋ジストロフィーのうち重症のものを指す.なお,軽症のものをBecker型という.
✕(5) Duchenne型筋ジストロフィーは,X染色体上のジストロフィン遺伝子異常,ジストロフィン蛋白の欠損がみられる.ジストロフィン蛋白は筋細胞膜の保持・強化をしていると考えられている.正常骨格筋では,ジストロフィンは膜の裏打ち構造をなしているが,Duchenne型筋ジストロフィーは,X染色体上にあるジストロフィン遺伝子の変異により,筋形質膜裏打ち蛋白質であるジストロフィンが欠損している.
正解 : (1)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸障害は,拘束性換気障害である.
【解説】
✕(1) 呼吸筋低下により有効な咳ができなくなるので,咳介助が必要となる.
✕(2) 口すぼめ呼吸は閉塞性換気障害で有効である.本疾患では拘束性換気障害を生じるので,口すぼめ呼吸は有効ではない.舌咽頭呼吸法(Glossopharyngeal Breathing:GPB)が有効である.
✕(3) 側弯症が高度になると,その進行に伴い気管や気管支などの気道の狭窄が起こり,呼吸機能は低下する.
◯(4) 肺胞低換気状態となり,PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)は上昇する.
✕(5) 呼吸不全は20歳頃より生じる.
正解 : (4)
【解法の要点】
筋強直性ジストロフィーは,成人では最も多いタイプの筋ジストロフィーである.
【解説】
✕(1) 筋疾患では,一般に痙縮は認めない.痙縮は上位運動ニューロン障害で起こり,神経の障害によるものである.
◯(2) 筋原性筋萎縮を来すが遠位筋優位の筋力低下がおこり,下垂足がみられ鶏歩となる.
◯(3) 顔面筋の萎縮により,斧状(様)顔貌(hatchet face)がみられる.
✕(4) 手指筋のミオトニア,舌の叩打時のミオトニア(クローバー状舌)がみられる.ジストニアは錐体外路徴候なので中枢神経疾患で見られる.
✕(5) 有痛性(強直性)けいれんは,多発性硬化症の脊髄障害の回復期にみられる.
正解 : (2),(3)
【解法の要点】
フロッピーインファントであるか,生後間もなく発症する.多小脳回(小さくて均等ではない脳回(脳のしわ)が多数みられる)など脳皮質の奇形と,重度の精神発達遅滞(知的障害)やてんかんを伴う.本症はDuchenne型に次いで頻度が高い.
【解説】
✕(1) 常染色体劣性遺伝の形式をとるため,男児のみということはない.
✕(2) 生下時または生後間もなく発症する.
✕(3) 脳皮質の奇形に伴う精神遅滞が著しい.
◯(4) 解法の要点 参照.有病率は10万人に3人程度である.
✕(5) 本症の多くは,座ることはできても歩行はできない.
正解 : (4)