【解法の要点】
ASIA(American Spinal Injury Association:米国脊髄損傷協会)は脊髄損傷の神経学的および機能的分類である.ASIAの運動機能スコアは髄節とKey muscleの関係を示すものであり,ASIA impairment scaleは運動・知覚機能別に機能障害を尺度別に区分したものである.
【解説】
✕(1)意識レベルはASIAに規定されていない.
✕(2)運動失調はASIAに規定されていない.
✕(3)眼球運動はASIAに規定されていない.
◯(4)肛門感覚は知覚機能であり,ASIAに規定されている.
✕(5)深部腱反射はASIAに規定されていない.
正解 : (4)
【解法の要点】
ASIAは脊髄損傷の神経学的および機能的分類である.髄節とkey muscleの関係について問うている.
【解説】
◯(1) C5のkey muscleは肘関節屈筋群である.
✕(2) C6のkey muscleは手関節背屈筋群である.
✕(3) C7のkey muscleは肘関節伸筋群である.
✕(4) L2のkey muscleは股関節屈曲筋群である.
✕(5) L3のkey muscleは膝関節伸展筋群である.
正解 : (1)
【解法の要点】
筋の支配神経や解剖に応じた主要徴候はしっかり覚えておく.また,脊髄後根は求心性線維(感覚線維)で構成され,脊髄後角細胞とシナプスを形成する.運動線維は脊髄前角でシナプスを形成し脊髄前根を経て,各筋を支配する.
【解説】
✕(1) 下垂手は橈骨神経麻痺によって起こる.橈骨神経はC5~8支配であるが,下垂手は橈骨神経高位部(橈骨神経溝,腋窩部)の障害によって起こり,第7頸髄後根のみの障害によっては起こらない.
✕(2) Horner徴候は,瞳孔を支配する交感神経の障害により①縮瞳,②軽微な眼瞼下垂,③眼裂狭小,④顔面の発汗低下などがみられる.交感神経遠心路(胸髄〜腰髄レベルの前根)の障害によって生じる.
✕(3) 腕橈骨筋の支配神経はC5~6,主にC6である.
◯(4) 上腕三頭筋腱反射の中枢はC6~8,主にC7である.C7の後根が障害されると,筋紡錘からの求心性刺激の入力が障害され,脊髄前角細胞への情報が伝達されず,筋収縮が減弱する,すなわち腱反射が減弱する.
✕(5) 上腕二頭筋の支配神経はC5~6,主にC5である.また,線維束性収縮は下位運動ニューロンの障害によって起こる.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄損傷のショック期つまり急性期にみられる症状と,回復期にみられる症状とを区別できるかを問う問題である.脊髄ショックは重度の脊髄損傷受傷後1日から3週程度まで出現し,損傷高位以下の運動・感覚機能および脊髄反射がすべて消失し,自律神経機能も停止する.脊髄ショック期の症状は,①肛門括約筋反射の消失,②膀胱・尿管の弛緩による完全尿閉,③弛緩性麻痺,④深部腱反射・表在反射の消失などである.
【解説】
✕(1) 温痛覚解離とは解離性感覚障害ともいい,温痛覚のみが障害されることをいう.温痛覚の伝導路である外側脊髄視床路と深部覚・触覚が伝導される後索では感覚の伝導路が異なるため,脊髄が部分的に損傷した場合に生じるBrown-Sequard症候群や前脊髄動脈症候群などで引き起こされる症状である.
✕(2) 脊髄ショック期には脊髄反射が消失するため,弛緩性麻痺になる.
◯(3) 脊髄ショック期には肛門括約筋の反射が消失するだけではなく,膀胱も弛緩し排尿が困難となる.
✕(4) 脊髄ショック期には深部腱反射・表在反射が消失する.
✕(5) 脊髄ショック期には排尿反射が消失する.
正解 : (3)
【解法の要点】
頸髄損傷による完全麻痺での残存機能に関する問題である.専門問題でも頻出される問題であり,確実に得点に結びつけたい.C6,7の機能残存レベルを中心に理解しておくとよいだろう.
【解説】
✕(1) C4機能残存レベルの食事は全介助となる.万能カフは手掌に装着し,スプーン,フォークやボールペンなどを固定して把持機能を補う自助具であるが,上肢が使えないレベルでは機能しない.
✕(2) 前方移乗,トランスファーボードを使う側方移乗は,C6レベルで可能となる.
✕(3) C6機能残存レベルでは手関節の背屈は可能となるが,手指の動きは得られない.握り動作には,浅指屈筋・深指屈筋などC8の機能残存が必要となる.
◯(4) C7機能残存レベルでは更衣が可能である.
✕(5) C8機能残存レベルでは体幹の随意性は得られず,長下肢装具での歩行はできない.T12では両長下肢装具と両松葉杖を使えば,非実用的であるが大振り歩行が可能である.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄損傷の全国調査が26年ぶりに行われ,2021年発表の論文・報告がわが国における外傷性脊髄損傷の最新疫学データとなっている.
【解説】
✕(1) 男性が多く,女性の3倍である.
◯(2) ほとんどが頸髄損傷で胸腰髄損傷よりも多い.
✕(3) 受傷要因は転倒が最多である.
✕(4) 発症年齢のピークは70歳代である.
✕(5) 胸髄・腰髄損傷では完全麻痺,頸髄損傷では不全麻痺が多い.脊髄損傷全体では,不全損傷が多い.
正解 : (2)