【解法の要点】
歩行周期の各期の役割を理解し,関節モーメント,角度変化,重心移動,骨盤の位置,反対側下肢の状態なども押さえておく.
【解説】
✕(1) 右立脚中期は,右足底接地(左爪先離地)から右踵離地までである.接地側の足を支点とした前方への動きが生まれる.
✕(2) 右立脚終期は,右踵離地から右爪先離地(左踵接地)までである.身体を支持足より前に運ぶ.
◯(3) 右前遊脚期は,左踵接地から右爪先離地までである.遊脚初期への準備期である.
✕(4) 右遊脚中期は,遊脚初期(加速期:両側の下腿が矢状面で交差した瞬間)から右足部が左下腿部を通過するまで(右下腿が床に対し垂直になった瞬間)である.
✕(5) 右遊脚終期は,減速期(右下腿が床に対し垂直になった瞬間)から右踵接地までである.
正解 : (3)
【解法の要点】
図は筋ジストロフィーなどでみられる大殿筋歩行である.大殿筋は股関節伸展筋であり,立脚終期より徐々に活動を開始し,イニシャルコンタクト(IC:初期接地)前後から立脚初期にかけて顕著な作用を示す.そのため大殿筋筋力低下により,イニシャルコンタクトから立脚中期にかけて体幹の伸展で重心線を股関節の後方へ移動させ,股関節屈曲を防止するための歩容を呈する.
【解説】
✕(1) 下腿三頭筋は,立脚中期から後期にかけて大きく作用し立脚終期の蹴り出しを行うため,筋力低下を来すと,蹴り出しが減少する.
✕(2) 前脛骨筋は,遊脚終期〜立脚初期と立脚終期〜遊脚初期に作用し,足関節背屈位を保持しながら踵から接地する.前脛骨筋の筋力低下ではdrop footとなり,鶏歩がみられる.なお足関節筋群の活動は協応しており,立脚終期の下腿三頭筋の収縮は蹴り出し後に急激に減少する.
◯(3) 解法の要点 参照.
✕(4) 中殿筋は,イニシャルコンタクト前後から立脚期中期にかけて作用する.中殿筋の筋力低下では骨盤の水平位を保つことができず,遊脚期下肢の骨盤が落下するTrendelenburg歩行がみられる.
✕(5) 長内転筋は立脚相の初期と終期で作用し,骨盤の安定化に寄与するため,筋力低下により,骨盤の安定性が低下する.
正解 : (3)
【解法の要点】
高齢者は,若年者と比べて抗重力筋力の低下,バランス能力の低下,四肢・体幹の可動域制限などがみられ,体幹前傾位になりやすくなるなど,全身のアライメントの変化から考えると,歩行の特徴がわかる.
【解説】
✕(1) 歩隔を広げて支持基底面を広くする.
✕(2) 歩幅は小さくなる.
◯(3) 上肢の振りは体幹の回旋運動に対抗する回転モーメントを生み出すためであるが,高齢者では骨盤の回旋が乏しく上肢の振りも減少する.
✕(4) 両側支持期は長くなる.
✕(5) 足尖と床面との距離は小さくなる.転倒の原因にもなりやすい.
正解 : (3)
【解法の要点】
歩行機能を評価する上で,基本的な用語の定義は押さえておきたい.丸暗記するのではなく,実際の歩行動作をイメージしながら,身体条件などが変動したときに,歩行がどのように変容するかを理解できるようにしたい.
【解説】
✕(1) 重複歩距離とは,片側の踵が接地してから再び同側の踵が接地するまでの距離を示す.一般的には身長が高いほど長く,身長の80~90%の長さとされ,速い歩行では100~110%ほどになるが,小児や高齢者では短くなる.
◯(2) 歩行中の進行方向に対する足部の角度(足角)は重要なアライメント要素であり,7~13°外旋が正常であるとされている.
✕(3) 両脚支持期とは両脚での支持期間で,1歩行周期に2回あり,20~25%(70歩/分)を占めている.歩行速度が上がるほど短くなり,消失すると走行となる.
✕(4) 歩幅とは,一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す.
✕(5) ステップとは,一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの動作であり,ステップ時間とはそれにかかる時間である.
正解 : (2)
【解法の要点】
外乱に対する姿勢制御に関する問題である.プラットフォーム台で立位姿勢を保持しているとき,プラットフォームが前後方向に動くと,膝関節はあまり動かず,足関節あるいは股関節の屈伸運動で応答する.そのとき,下腿三頭筋とハムストリングス,前脛骨筋と大腿四頭筋がそれぞれ共同筋となって活動する.プラットフォームが後方へ動くと,身体は前方に振れるため,それを戻すために主に腓腹筋・ハムストリングス・脊柱起立筋などが働く.前方へ動くと,身体は後方に振れるため,前脛骨筋・大腿四頭筋・腹筋群の順に活動が生じる.一般的には外乱が大きくなると股関節による運動で制御する.図において,外乱による角度変化に着目すると,股関節運動がほとんど起こらないことから,主に足関節の屈伸運動による姿勢制御であることがわかる.
【解説】
✕(1) 脊柱起立筋は筋③に該当する.腓腹筋,ハムストリングスに遅れて最後に活動が生じる.
✕(2) 前脛骨筋は筋⑤に該当する.前脛骨筋はプラットフォームを前方へと移動させたときに筋活動が起こる.
✕(3) ハムストリングスは筋②に該当する.腓腹筋に続き,腓腹筋の活動から20~30msec後にハムストリングスが活動を開始する.
◯(4) 筋①では,プラットフォームの後方移動が起きてから90~100msec後に筋活動が生じている.足関節の屈伸運動による姿勢制御の場合,共同筋活動は遠位筋から始まり近位筋に及ぶため,腓腹筋が最も早く筋活動を開始する.
✕(5) 腹直筋は筋④に該当する.腹直筋は,プラットフォームを前方へと移動させたときに筋活動が起こる.
正解 : (4)
【解法の要点】
膝関節は屈曲・伸展に伴って下腿の回旋運動が生じている.屈曲時には大腿に対して下腿は内旋し,伸展時には外旋を伴う.座位ではつま先はまっすぐでも,立位ではややつま先が開いていることから,膝伸展から屈曲すれば内旋すると判断したい.正座の姿勢では,膝関節は約150°の屈曲に加えて内旋もしているため,自然と踵は外側,つま先は内側を向く.
【解説】
✕(1) 屈曲時でも前十字靭帯はある程度緊張している.
✕(2) 内側側副靭帯は膝関節伸展で緊張,屈曲で弛緩する.
✕(3) 屈曲初期に脛骨は内旋する.
◯(4) 内側半月板は内側側副靭帯に結合しているため移動範囲が狭いが,外側半月板は外側側副靱帯と結合していないため,外側半月板の方が大きく移動する.
✕(5) 膝関節の屈伸運動は大腿骨の転がりとすべりの複合運動である.屈曲初期は転がり運動が生じ,その後にすべり運動が生じる.最終的にはすべり運動のみとなるが,変形性関節症などではすべり運動の方が主に制限されて可動域が狭くなる.すべりが先か転がりが先かわからなくなったら,変形性膝関節症を思い出してほしい.軟骨がすり減って,膝が曲がりにくくなるのだから,屈曲時で軟骨がなくてすべらなくなっている.転がりは軟骨がなくともできる.
正解 : (4)