【解法の要点】
加齢により消化器,循環器,呼吸器,腎泌尿器,血液,神経,内分泌・代謝,免疫などで変化がみられる.循環器系の動脈では内膜の肥厚,間質成分の増加などにより動脈硬化・血管抵抗増加を来す.また,種々のサイトカインが増加し,炎症,肥満,糖代謝障害などを来しやすい状況をもたらす.
【解説】
◯(1) 加齢による動脈硬化によって,血管抵抗は増大し,収縮期血圧が上昇する.
✕(2) 除脂肪体重は,全体重から脂肪組織の重量を差し引いた重量である.加齢とともに除脂肪体重は減少し,脂肪組織は増加する.
✕(3) 加齢に伴い唾液分泌量は低下していく.
✕(4) 残気量が上昇し,肺活量は低下する.そのため,予備呼気量は減少する.
◯(5) 炎症性サイトカインは加齢に伴い増加する.その結果,動脈硬化,メタボリックシンドロームなど,老化に関連した疾患の頻度も増加する.
正解 : (1),(5)
【解法の要点】
図は「指輪っかテスト」とよばれ,下腿周囲長を簡便に評価できる.図のように指とふくらはぎの間に隙間がある場合,加齢や疾患によって筋肉量が減少している可能性がある.下腿周囲長が判断・診断基準に含まれているものを選択する.フレイル,サルコペニア,ダイナペニア,ロコモティブ症候群などは,高齢者の運動機能の低下などを異なる指標で表す概念であり,相互に関連し,影響を与えあっている.
【解説】
✕(1) フレイルは,加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態である.①体重減少,②疲労,③歩行速度の低下,④握力の低下,⑤身体活動量の低下の5項目のうち,評価基準に3項目以上該当した場合,フレイルと診断する.
◯(2) サルコペニアは骨格筋量の減少と,それによる筋力または身体機能の低下がみられる状態である.スクリーニングで下腿周囲長,SARC-F,SARC-CalFなどを評価し,サルコペニアのリスクが高いと判断された場合,骨格筋量,筋力,身体機能の測定を行う.
✕(3) ダイナペニアは筋量が正常で筋力のみが低下するもので,サルコペニアと似ているが,ダイナペニアは筋肉量に変化がない分気がつきにくく,サルコペニアより対策が遅れやすい.ダイナペニアでは,30秒椅子立ち上がり検査,timed up and go test(TUG),5m歩行時間,mini-mental state examination(MMSE),基本チェックリスト(生活機能全般,うつ傾向)などから,総合的に身体・認知・生活・精神機能を評価する.
✕(4) ロコモティブ症候群は,運動器の障害により,移動機能の低下を来した状態である.立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25(質問票)からなるロコモ度テストで重症度を評価する.
✕(5) コンパートメント症候群は,四肢の筋区画(コンパートメント)の内圧が上昇し,循環不全により神経,筋に不可逆性壊死を来すもので,前腕と下腿に好発する.診断には筋区画内圧測定を用いる.
正解 : (2)
【解法の要点】
フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の状態であり,加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し,複数の慢性疾患の併存などの影響もあり,生活機能が障害され,心身の脆弱性が出現した状態である.フレイルの判定要件には体重減少,疲労,歩行速度の低下,握力の低下,身体活動の低下の5項目が含まれ,3項目以上該当した場合はフレイル,1or2項目該当でプレフレイルと判断する.
【解説】
◯(1)~(4) フレイルの判定要件に含まれる.
✕(5) 歩行距離ではなく,歩行速度の低下がフレイルの判定要件に含まれる.
正解 : (5)
【解法の要点】
フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の状態であり,「加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し,複数の慢性疾患の併存などの影響もあり,生活機能が障害され,心身の脆弱性が出現した状態であるが,一方で適切な介入・支援により,生活機能の維持向上が可能な状態」と定義されている.多くは,健康状態からフレイルの時期を経て要介護状態に至る.
【解説】
✕(1) 筋量は低下する.
◯(2) FBS(Functional Balance Scale)は高齢者の転倒リスクのスクリーニングや脳卒中患者のバランス機能評価に用いる.フレイルの高齢者では低値となる.
✕(3) TUG時間は,椅子から3m離れたところにコーンなどを置き,被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って再び椅子に座るまでの時間である.運動器不安定性の指標となっている.フレイルの高齢者では長くなる.
✕(4) 長座位(体)前屈距離はハムストリングスや股関節の柔軟性の指標である. 一般に加齢とともに柔軟性は低下するが,フレイルの高齢者の特徴ではない.
✕(5) Borg指数は主観的運動強度の指標である.数値が高いほど主観的に「きつい」状態を示す.フレイルの高齢者では運動時のBorg指数は高値になる.
正解 : (2)
【解法の要点】
フレイルとは健常な状態と要介護状態の中間の状態である.多くの人は,健常状態からフレイルの時期を経て要介護状態に至る.フレイルの状態の人は健常者に比べて,基本事項のような特徴があるとされる.
【解説】
◯(1) サルコペニアは骨格筋・筋肉が減少している状態であり,フレイルの原因としての関与も注目されている.
✕(2) 体重は減少していることが多い.
✕(3) 虚弱高齢者も定義に含まれる.
✕(4) 地域在住高齢者におけるフレイルの頻度は10%前後である.
✕(5) 精神的な活力の低下も判断の要素に含まれる.
正解 : (1)