【解法の要点】
6分間歩行テストは,運動耐容能の検査であり,標準的には30mの直線コースを往復する方法がとられる.歩行距離だけでなく,血圧,心拍数,SpO2,自覚的運動強度(Borgスケールなど)も測定する.検査中,検査者は1分ごとに声かけを行う.被験(検)者は疲労や息切れを感じたらペースを落とし,立ち止まることができる.大きくふらついたり,呼吸困難が増悪したり,胸痛を訴えるなどした場合は検査を中止する.
【解説】
◯(1) 歩行距離だけでなく,血圧,心拍数,SpO2,自覚的運動強度(Borgスケールなど)も測定する.
✕(2) ペースを乱すので,被験者の斜め前方に並んで歩いてはいけない.被験者に転倒のおそれがある場合には,斜め後ろについて歩く.
◯(3) 6分間で継続歩行可能な距離を測定し,運動耐容能を評価する.
✕(4) 歩行中1分ごとに声かけし,残り時間も伝える.適切な声かけにより,一定負荷となるよう心がける.
✕(5) 休憩が必要なときは壁にもたれかかって休む.中断した場合にはその理由,時間,距離を記載する.
正解 : (1),(3)
【解法の要点】
Timed Up and Go Test(TUG)は,椅子から3m離れたところにコーンなどを置き,被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って再び椅子に座るまでの時間を計測する.特に,高齢者の下肢筋力,バランス,歩行能力,易転倒性といった日常生活機能との関連性が高い.
【解説】
✕(1) 開始肢位は座位である.
✕(2) 3m先にコーンなどの目印を設置する.
✕(3) 装具や杖を使用しても構わない.
◯(4) バランス機能を評価できる.
◯(5) 動作開始から背もたれ座位に至るまでの時間を測定する.
正解 : (4),(5)
【解法の要点】
徒手筋力テストの結果からどのような歩行が生じるかを問う問題である.歩行障害の名前・特徴と障害部位は合わせて覚えておきたい.今回は右の下腿三頭筋(足関節の底屈)とハムストリングス(膝関節の屈曲)が特に障害されており,これらの障害で生じるものを選べばよい.
【解説】
✕(1) 前脛骨筋は残存するが下腿三頭筋が麻痺している場合に,足部が内反背屈位となり,踵で歩く踵足歩行となる.本症例の右脚では起こりうるが,は左であるのでみられない.
✕(2) 尖足歩行は,痙縮などにより足関節の背屈制限がある歩行の状態をいう.
✕(3) 分回しは,股関節を外転させ,足部で半円を描きながら前方に振りだすように歩く異常歩行である.
✕(4) Trendelenburg徴候は,患側肢に荷重すると骨盤が対側に傾斜することをいう.両側の障害では左右に体幹を揺すって歩く動揺性歩行となる.本症例では中殿筋に障害はみられない.
◯(5) 右遊脚後期の膝過伸展傾向は,右膝関節屈筋の障害で起こる.右ハムストリングスと下腿三頭筋の障害がある本症例では適切と考えられる.
正解 : (5)
【解法の要点】
股関節の参考可動域角度は,屈曲125°,伸展15°,外転45°,内転20°であり,本症例の可動域を見ると,屈曲,外転,内転に可動域制限を認めるが,特に大きく影響すると考えられるのは股関節内転である.この症例では,股関節は常に外転位にあり,内転できないことから,予想される特徴を選択肢の中から選べばよい.
【解説】
◯(1) 股関節が常時外転位にあるため,右下肢を接地する際,通常よりも外方に接地することになることがわかる.よって,歩隔は増加する.
✕(2) 右の歩幅が減少するということは,左の立脚期に問題があることを示す.左下肢には問題がないと予想されるため,歩幅に影響はない.
✕(3) 左の遊脚時間とは,つまり右の単脚支持時間のことである.右下肢は常時外転位での立脚支持となるため,右の単脚支持時間は短縮する.
✕(4) 右股関節の内転制限のために右立脚時では体幹は代償的に右側屈となる.
✕(5) 立脚時において股関節外転角度が増加する原因として,外転筋群の拘縮,反対側下肢のトウクリアランスを得るための代償運動などがある.には特にそのような記載はない.
正解 : (1)
【解法の要点】
転倒のリスク要因としては,筋力低下,過去の転倒歴,歩行能力低下,バランス機能低下,補助具の使用がある.
【解説】
◯(1) FBS(Functional Balance scale)はバランス機能の低下を発見するスクリーニングとして活用される.
✕(2) KPS(Karnofsky Performance scale)は,がん患者の全身状態や日常生活での活動度を評価するツールとして使われている.
✕(3) PGCモラールスケールは,高齢者のQOL評価尺度であり,「主観的幸福感」を評価する.
✕(4) SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)は,脳卒中の多様な症状を,運動機能障害だけでなく,言語機能,感覚機能など非麻痺側機能を含めて総合的に評価する方法である.脳卒中患者の総合的な評価にはなるが,転倒の評価としては不十分である.
✕(5) WCST(Wisconsin Card Sorting Test:ウィスコンシンカード分類課題)は,前頭葉の遂行機能の検査である.
正解 : (1)
【解法の要点】
FBS(Functional Balance Scale)はバランス能力の低下を発見するスクリーニングとして活用される.14項目について0~4点の5段階で評価する(56点満点).得点が高いほどバランス機能は良好である.
【解説】
◯(1) FBSは点数が低いほどバランス機能は低い.
✕(2) TUG(Timed Up and Go Test)は,椅子から3m離れたところにコーンなどを置き,被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って再び椅子に座るまでの時間を計測する.特に,高齢者の下肢筋力,バランス,歩行能力,易転倒性といった日常生活機能との関連性が高い.
✕(3) 10m歩行時間は,10m歩行するのにかかる時間を測定する.治療効果判定の指標としても用いられることが多く,歩行能力や日常生活機能の向上との関連も報告されている.
✕(4) 片脚立位時間は長い方がバランス機能は良好である.簡易的に測定できるため高齢者の身体機能の評価として幅広く活用されている.
✕(5) Functional Reach Test は立位で足底と床面の全面接地を保持したまま,水平方向に上肢をできるだけ伸ばす.前方への重心移動域を上肢の移動距離として測定し,測定値が大きいほどバランス機能が良好である.
正解 : (1)