【解法の要点】
胸部CT画像の所見では,肺胞の隔壁構造が破壊されて低吸収域が増大しており,肺気腫が疑われる.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態は,呼気が障害されて肺内に空気がトラッピングされる結果,肺が過膨張していることを押さえておく.
【解説】
◯(1) 呼気が不十分となる病態であるため,1秒率は低下する.
✕(2) 呼気が不十分となる病態であるため,残気量は上昇する.
✕(3) COPDでは,末梢気道の狭窄と閉塞により気道抵抗は増大する.
✕(4) 肺コンプライアンスが上昇するため,全肺気量は増加する.
✕(5) 肺胞壁の破壊によって肺の弾性は低下し,肺コンプライアンスは上昇する.
正解 : (1)
【解法の要点】
慢性閉塞性肺疾患は従来,肺気腫,慢性気管支炎の2疾患に区別されていた.タバコ煙を中心とする有害物質を長期にわたり吸入することによって生じた肺の炎症性疾患である.症状としては,慢性的な咳・痰や軽度の運動でも生じる労作性呼吸困難などがある.
【解説】
✕(1) 痰を伴わない乾いた咳のことを乾性咳嗽といい,一般的には空咳ともいう.慢性閉塞性肺疾患では,湿性咳嗽がみられる.
◯(2) エアートラッピング(空気とらえ込み:最大吸気位から最大呼息をしたときに肺内に空気が残る現象)のために呼吸音減弱が認められる.
✕(3) 肺野打診では肺の過膨張による鼓音が認められる.
✕(4) 慢性閉塞性肺疾患は,肺の過膨張のために胸郭柔軟性が低下する.
✕(5) 捻髪音とは高くて細かい断続音のことで,肺線維症,間質性肺炎,過敏性肺炎などでみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
日本集中治療医学会の『集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~』によれば,集中治療室での挿管下人工呼吸患者に対する早期離床や早期からの積極的な運動は,セッションの中断,重篤な身体への悪影響や有害事象は極めて少なく,安全に実施可能である,とされている.挿管下や各種のカテーテルが使用されていてもそれらは運動や離床の阻害因子となり得ないとも述べている.さらに近年では,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxyge nation:ECMO)装着下においても早期離床や運動を実施した例が報告されている.
【解説】
✕(1) 解法の要点 参照.
◯(2) 人工呼吸器によって換気は保たれていても,分泌物が身体下部に貯留する.このため排痰を促すための体位変換が重要である.
◯(3) 挿入中は吸引を止めておく.
◯(4) 一連吸引のなかで行われる複数の吸引中,1回吸引ごとにカテーテル外側をアルコール綿でふき取り,内腔は滅菌水を吸引させて内腔の分泌物をできる限り除去してから次の吸引を行うことが推奨されている.
◯(5) 侵襲的陽圧換気では基本的に会話はできないので援助が必要である.非侵襲的陽圧換気では会話が可能である.
正解 : (1)
【解法の要点】
体位と呼吸運動,ガス交換とは密接な関係がある.まず,重力は肺血流に影響を与え,下側の肺に血液が多く流れることになる.次いで,胸郭運動について,一般に下側の胸郭運動が制限され換気が減少する.また,腹部内臓との位置関係で,臥位では立位や座位に比べ腹部内臓が横隔膜を圧迫する結果,換気効率が低下する.横隔膜は水平ではなく,前(腹側)で高位,後ろ(背側)で低位であるので,背臥位で腹部臓器挙上の影響が大きくなる.また,心臓は胸骨の背側に位置するので,背臥位で肺を圧迫することとなる.
【解説】
◯(1) 背臥位の場合,重力で口腔内容物が咽喉頭に落ちるので誤嚥しやすい.
✕(2) 背臥位では舌根沈下がおこり,上気道は狭窄しやすい.
◯(3) 背臥位においては,横隔膜が腹臥位のときよりも挙上する結果,機能的残気量が減少する.
✕(4) 背臥位では,上気道狭窄,横隔膜挙上,心臓による肺への圧迫などの影響で,腹臥位よりも動脈血酸素分圧が低下しやすい.
✕(5) 後肺底区は肺の後側(背側)に位置するので,背臥位では気道内分泌物が沈下しやすく換気が悪くなる.
正解 : (1),(3)
【解法の要点】
気管支喘息のフローボリューム曲線は,末梢気道が全体的に狭窄しているため,気流速度が低下して下に凸の曲線となる.吸入療法後,呼気気流速度が著明に改善しており,気管支拡張薬により,気道抵抗が低下したと考えられる.
【解説】
◯(1) 解法の要点 参照.
✕(2) 呼気筋力は薬物療法では改善しない.呼吸練習が必要となる.
✕(3) 拡散は肺胞から肺毛細血管へのガスの取り込みのことである.気管支喘息では肺拡散能は障害されていない.COPDの場合は,肺胞の破壊による肺胞ガス交換面積の減少と肺毛細血管床の減少(毛細血管の破壊)のために,肺拡散能が低下する.
✕(4) 胸郭の柔軟性は薬物療法ではなく,胸郭の可動域練習などで改善する.
✕(5) 肺コンプライアンスとは,肺胞内圧の単位圧上昇によって起こる肺容量の増加である.気管支喘息では肺コンプライアンスの低下はみられない.肺線維症などの拘束性換気障害で低下した状態となり,肺コンプライアンスの増加によって肺活量が改善する.
正解 : (1)
【解法の要点】
呼吸不全の定義はPaO2≦60Torrであり,I型かII型かはPaCO2の値(CO2蓄積の有無)で決定する.I型呼吸不全がPaCO2≦45Torr,II型呼吸不全がPaCO2>45Torrと定義されている.II型呼吸不全では低酸素とともに,二酸化炭素蓄積に注意した対応を忘れてはならない.
【解説】
✕(1) 上肢の反復挙上動作は血中酸素飽和度が低下しやすく,血圧が上昇しやすいため,片手ずつ行うなどの指導をする.
✕(2) 口すぼめ呼吸は,口をすぼめることによって呼気に抵抗をかける呼吸法である.気道内圧が上昇し,末梢の気管支の虚脱を防いで死腔が減り肺胞換気量が増える.呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけてゆっくりと行う..
✕(3) 酸素流量は動脈血酸素分圧や二酸化炭素分圧に合わせて医師が調整している.患者自身の判断で流量を調節することは,CO2ナルコーシスにつながる可能性があるため厳禁である.
◯(4) 体調や呼吸器症状を日誌に記録することで,患者への個別的かつ具体的な指導が可能となり,また,セルフマネジメントを促すことにもなるため有用である..
✕(5) COPDに対するリラクセーションの主な目的は,頸部や肩の筋,あるいは呼吸補助筋の緊張緩和によって呼吸困難を軽減することである.
正解 : (4)