【解法の要点】
正常心電図と基本的な不整脈の心電図は頭に入れておく.本問の心電図は,3,6,9番目のQRS波が幅広く,本来のQRS波より早期に出現しているのが特徴的である.
【解説】
✕(1) 洞調律では,P波とQRS波が対応しており,P波が一貫して同じ形で,RR間隔も同じである.本例ではP波が不明瞭な部分があり一貫せず,RR間隔も不整であり洞調律とはいえない.
✕(2) 持続頻拍とは洞調律以外の100回/分以上の心拍数が持続するもので,持続性心室頻拍では一般に30秒以上と定義される.いずれの頻拍もみられない.
✕(3) ST低下はみられるが上昇はみられない.
◯(4) 3,6,9番目のQRS波はP波がみられず,変形した大きな幅のQRS波とそれと逆向きのT波がみられ,心室性期外収縮である.
✕(5) III度房室ブロックは,心房からの伝導が途絶え,PP間隔,RR間隔は整であるが,P波とQRS波が無関係となる.この心電図では,P波は不明瞭であり,RR間隔は不整である.
正解 : (4)
【解法の要点】
NYHA(New York Heart Association)分類は,心不全の程度を問診から推測する際に用いる評価尺度であり,Ⅰ~Ⅳ度までの4段階で評価する.
【解説】
✕(1) 4段階評価である.
◯(2) 疲労,動悸,息切れ,狭心痛といった自覚症状で重症度を分類する.
✕(3) 日常生活で疲労,呼吸困難があるのはⅡ度である.
✕(4) 日常生活以下の労作で疲労,呼吸困難があるのはⅢ度である.
✕(5) Ⅳ度では安静時にも心不全症状がみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
僧帽弁閉鎖不全症は,僧帽弁の閉鎖不全により,収縮期に左室から左房に向かって血液が逆流する状態で左室が容量負荷を受けるため,左心不全を来す.僧帽弁逸脱症や虚血性心疾患を原因とするものが多い.左心不全では肺の循環にうっ血を来すため,初期から呼吸困難,動悸,息切れなどの呼吸器症状を来す.
【解説】
✕(1) 肝脾腫は右心不全の症状である.
✕(2) 左心不全症状では血圧は低下する.
✕(3) 下腿浮腫は右心不全の症状である.
◯(4) 僧帽弁閉鎖不全症の初期症状は,労作時呼吸困難,動悸などの左心不全症状である.
✕(5) 頸静脈怒張は右心不全の症状である.
正解 : (4)
【解法の要点】
運動療法は心臓リハビリテーションの中心的な役割を担っており,心不全症状や狭心症の症状など,諸症状を軽減してQOLを改善する効果が証明されている.予後改善効果も示されており,冠動脈疾患およびこれに基づく慢性心不全においては,心不全増悪による入院を減らすことで,総死亡率が減少する.
【解説】
◯(1) 心不全増悪による再入院は減少する.
✕(2) 収縮期血圧は低下する.
✕(3) 血小板凝集能は低下する.
✕(4) 交感神経の緊張は低下する.
✕(5) HDLコレステロールは増加する.
正解 : (1)
【解法の要点】
糖尿病性腎症,高血圧,増殖前網膜症の合併がある患者の運動療法についての問題である.糖尿病における運動療法を禁止あるいは制限した方がよい場合や,腎臓リハビリテーションにおける注意事項や目的・効果を整理しておく.
【解説】
✕(1) 運動療法は原則として非透析日に行うのが一般的だが,透析中にも仰臥位でのペダリングトレーニングや簡単な筋トレなどを行うことができる.透析日を利用することには確実な運動時間の確保や,医療スタッフの監視下で行えるなどの利点がある.
✕(2) HbA1cは,およそ1~2ヵ月の平均血糖レベルを反映するが,運動強度や運動療法の中止を決定することはない.
✕(3) 口渇は,高血糖や血漿浸透圧の上昇など,未治療ないしコントロール不良の糖尿病にみられるが,血液透析導入患者は,体液管理が重要であり,飲水量が制限される場合がある.
◯(4) 血糖値が低下すると,副交感神経症状である倦怠感や眠気,空腹感などが起こる.さらに低下するとより危険な中枢神経症状が出現するため,注意深く対応する必要がある.
✕(5) 慢性腎不全の運動療法の目的として,運動耐容能改善,蛋白質異化抑制,QOLの改善などが挙げられる.
正解 : (4)
【解法の要点】
心血管疾患におけるリハビリテーションの生活指導に関する問題である.基本的な事項を押さえておくとともに,病状に伴う運動負荷量の評価法・決定法についてまとめておこう.
【解説】
◯(1) 大動脈弁狭窄症,心房細動と一過性脳虚血発作の既往があり,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を行っているため,血栓塞栓症を予防するために抗凝固療法の服薬は継続する.
◯(2) 患者は,体重,血圧,脈拍などを自己管理する必要がある.回復期から維持期における,生活活動や運動療法を安全に行うためである.
✕(3) 2~3METsの生活活動には,ゆっくりとした歩行,調理などが含まれ,3~4METsにはシャワーやふとんを敷くなどが含まれる.症例はNYHA分類でⅠ(心疾患はあるが,通常の身体活動制限はなし)であり,3METsを上限とするには低すぎる.
◯(4) 禁忌例を除くすべての心疾患にレジスタンストレーニングが推奨されている.
◯(5) 心臓リハビリテーションにおける運動負荷強度は,有酸素運動レベルが推奨される.嫌気性代謝閾値(AT)は,有酸素運動から無酸素運動に切り替わる境界のときの運動強度,またはそのときの酸素摂取量である.運動負荷試験によってATを求め,運動負荷量を決定する.
正解 : (3)