【解法の要点】
リンパ浮腫の治療の目的は,リンパ液還流の誘導を図り,うっ滞を防ぎ,皮膚を清潔に保ち悪化の原因となる感染を防ぐことである.
【解説】
✕(1) リンパ浮腫の病態はリンパ流の阻害と減少のために生じる浮腫であり,水分制限は必要ない.
✕(2) リンパ浮腫を生じている上肢に負荷をかけるサウナや長時間の温浴などは避ける.過度の温浴は好ましくない.
◯(3) スキンケアを行うことで皮膚の荒れからの感染を予防する必要がある.
✕(4) むだ毛の処理による化粧品かぶれや,かみそりによる皮膚損傷の可能性があるため,できるだけ避けた方がよい.
✕(5) 袖口のきつい服や腋窩を締め付ける服はリンパの流れを妨げるため避ける.
正解 : (3)
【解法の要点】
緩和ケアでの理学療法について基本的な知識を問う問題である.緩和ケア病棟に入院中のがん患者はひとり一人の病状が異なるのみならず,ひとりの患者の病状も日々変化し,時間の差こそあるが終末期へと向かっていく.リハビリテーションの各職が相互に連携しながら個人の病状やニーズに応え,できるだけ苦痛なく,QOLを維持できるようにチームとして取り組むことが大切である.
【解説】
✕(1) 緩和ケアでは機能回復よりもQOLを優先する.
✕(2) 疼痛コントロール(ペインコントロール)を目的として,温熱・寒冷療法,経皮的電気刺激(TENS),およびマッサージなどが行われる.
✕(3) リンパ浮腫があれば,患肢の挙上,弾性包帯・弾性ストッキングによる圧迫,マッサージ,関節可動域訓練などを行う.
✕(4) 解法の要点 参照.
◯(5) 化学療法や放射線療法で骨髄抑制を生じる可能性があるため,血液所見に注意を払いながら,過負荷にならないように理学療法の内容を変更する.
正解 : (5)
【解法の要点】
肺尖部がんが浸潤した腕神経叢の障害部位について問われている.デルマトームにより,環指・小指の感覚障害よりC8の障害,前腕中央・内側の感覚障害よりT1の障害が疑われる.C8とT1の障害が起こる部位はどこかを考えればよい.
【解説】
✕(1) C7神経根の障害では,中指の感覚障害を来す.
✕(2) C8神経根の障害では,環指と小指の感覚障害を来す.
◯(3) 下神経幹はC8とT1で形成され,この部位の障害では環指・小指~前腕中央・内側にかけての感覚障害を来す.肺に最も近く,浸潤したがんの影響を受けやすい.
✕(4) 外側神経束はC5~7で形成され,この部位の障害では上肢外側と母指~中指の感覚障害を来す.
✕(5) 後神経束はC5~T1で形成され,この部位の障害では上腕外側,前腕と手部全体の感覚障害を来す.
正解 : (3)
【解法の要点】
①69歳の男性,肺癌,②化学療法を行ったが脳転移,③呼吸に関する自覚症状なし,④全身倦怠感,食思不振,悪心あり,自宅に閉じこもり傾向→これらの条件から必要な理学療法を考えていく.自宅に閉じこもり傾向があるため,廃用症候群を予防し,気分転換をするためにも軽度な運動が推奨される.
【解説】
✕(1) 嚥下困難などの所見を認めておらず,嚥下練習は必要ない.
✕(2) 下肢促通運動は,脳性麻痺などに用いる.本例では下肢の運動障害を認めない.
◯(3) 自宅に閉じこもり傾向であり,気分転換を促すような軽い運動は適切である.
✕(4) 呼吸による自覚症状はなく,排痰を認める記載もない.現時点では必要ない.
✕(5) 漸増的な持久性運動とは,ランニングなどの運動を指す.肺癌患者であり全身倦怠感や悪心も認められるため,負荷が大きい.
正解 : (3)
【解法の要点】
本症例は,右中葉肺がんで胸腔鏡下肺部分切除術の予定である.現時点での呼吸機能や歩行機能,ADLには問題がないので,一般的な呼吸器疾患の術後に起こりうる合併症や障害を想定して選択肢を比較する.
【解説】
◯(1) 肺切除術後は滲出液や痰が貯留しやすく,無気肺や術後肺障害の原因となりやすい.術前の咳嗽練習は,排痰を必要とする患者の多くに有効である.
✕(2) 肺の術直後は胸腔ドレナージによる排液と排気を行い,開胸によって虚脱した肺の再膨張をはかる.肺機能が低下するため上部胸式呼吸での呼吸は不利であり,術前から腹式呼吸の練習を行う.
✕(3) 術前はベッド上の安静は必要ない.
✕(4) 安静度を確認し,離床可能な状態であれば,術翌日から歩行練習を行うことが望ましい.ベッド上での体位排痰法にこだわる必要はない.
✕(5) 修正Borg指数2は「弱い運動」であり,術後3ヵ月の運動としては軽負荷である.修正Borg指数は自覚的運動強度の指標として用いられる.修正Borg指数3~4の「やや強い」運動は最大心拍数の60%程度となり,安全で効果的な強度の運動が行える.
正解 : (1)