【解法の要点】
椎間板ヘルニアは,椎間板の髄核が脱出し,神経根,脊髄を圧迫する疾患で,加齢
に伴う椎間板の退行変性を背景として,そこに重量物の持ち上げやスポーツ負荷など
椎間板への力学的負荷が加わることで発生する.腰椎椎間板ヘルニアの治療は保存的
療法が基本で,重症例では手術を考慮することを理解しておく.
【解説】
✕(1)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインによると,腰椎椎間板ヘルニアに対して牽引療法の有効性を明らかにした論文はないとしている.特に急性期には好ましくない.
✕(2)急性期は,まず鎮痛,安静・保存療法である.硬性コルセットは採型から完成までに時間がかかり,急性期には利用できない.症例によっては軟性コルセットを処方する.
✕(3)体操療法は急性期症状が軽快した後に行う.
◯(4)進行性の筋力低下は,ヘルニアによる神経圧迫症状が進行していると考えられ,手術療法を考慮する.
✕(5)急性期に求められる安静は,ベッド上の臥床を強いるものではなく,腰痛を起こさない・悪化させないための日常活動の制限(無理をしないこと)を指す.
正解 : (4)
【解法の要点】
本症例は,右手の母指にしびれが出現していることより,デルマトームからC6が障害されていることがわかる.筋肉の支配神経高位は,脊髄損傷におけるASIAの機能障害スコアのkey muscleを思い出しながら,正解を導き出したい.
【解説】
✕(1) 三角筋は,主にC5神経根の支配である.
✕(2) 上腕三頭筋は,主にC7神経根の支配である.
✕(3) 上腕二頭筋は,主にC5,6神経根の支配である.
✕(4) 尺側手根屈筋は,主にC7,8神経根の支配である.
◯(5) 長橈側手根伸筋は,主にC6神経根の支配であり,症状と支配領域が一致する.
正解 : (5)
【解法の要点】
毎年頻出の問題であるため,必ず解答できるようにしたい.また,すべてのテストがどの疾患の鑑別に有用であるかということも併せて理解しておくこと.
【解説】
✕(1),(4) Apleyテスト,McMurrayテストは半月板損傷で陽性となる.
✕(2) Patrickテストは,仙腸関節,股関節のストレステストであり,痛みが誘発されれば同部位の変性疾患や炎症を示す.
✕(3) Thomasテストは,股関節伸展制限の有無を評価し,股関節屈曲拘縮の程度を判断するテストである.
◯(5) 大腿神経伸張テストは,L2~4神経根障害で陽性となる.坐骨神経へつながる下位の椎間板ヘルニアでは,下肢伸展挙上(SLR)テストが陽性となる.
正解 : (5)
【解法の要点】
ミオトーム,デルマトームの関係を押さえておく.足関節の底屈ができず,下腿三頭筋の筋力低下が考えられる.これはS1の神経根障害に相当し,デルマトームから解答を導く.
【解説】
✕(1) L3領域である.
✕(2),(3) L4領域である.
◯(4) S1領域である.
✕(5) L5領域である.L5神経根障害では,下腿外側から足背にかけての知覚異常を伴う.
正解 : (4)
【解法の要点】
腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛症に対する理学療法の主なものとして,William体操という体幹屈曲方向への運動や,McKenzie体操という体幹伸展方向への運動があげられる.前者は腰椎椎間板ヘルニアの急性期には髄核を後方に押し出す可能性があるため禁忌となるが,本問では,保存療法後であるため禁忌とはならない.腰椎の可動性,周囲筋の筋力トレーニングにおいて支持性を高める動作を選択する.
【解説】
◯(1) 四つ這い位での下肢伸展運動は,大殿筋や体幹筋のトレーニングとなる.
◯(2) 腸腰筋が短縮すると過度な腰椎前弯を誘発する.伸張により腰椎アライメントが悪化しないようにする.
◯(3) 骨盤の前後傾運動は,腰椎の前弯の増強減弱に影響する.ゆっくり行うことで腰椎の可動性を無理なく獲得させる.
✕(4) 側臥位は背臥位に比べると椎間板内圧が高いとされているため,背臥位を指導する.
◯(5) パピーポジションとは,肘支え上体起こしの姿勢であり,McKenzie体操にも含まれる.腰椎前弯を強める方向にストレッチすることとなる.
正解 : (4)