【解法の要点】
認知症患者の運動療法を実施する際には,患者のモチベーションを下げないように,導入しやすい工夫が必要である.相手の自尊心を大切にし,個人の認知能力や症状に応じた態度が重要である.
【解説】
◯(1) 肯定語の指示により,患者の肯定感やモチベーションが上がるように工夫する.
◯(2) 本人の心身機能や性格,感情,価値観,生活スタイルなどに合わせた対応を心がける.
◯(3) 短期記憶が障害されるため,動作獲得を目標とする場合は,繰り返しの動作練習は有効である.
✕(4) 説得は認知症患者にとっては,叱責されているように感じることがあり,BPSD(認知症の行動・心理症状)を悪化させることがある.まずはやりたくない理由を聴き,患者の気持ちを受け止めた後に対応を考える.
◯(5) 長期記憶は比較的保たれやすく,慣れ親しんだ動作であれば,動作練習を導入しやすい可能性があるため利用するとよい.
正解 : (4)
【解法の要点】
認知症患者への対応では,何よりも相手の自尊心を大切にし,個人の認知能力や症状に応じた態度が重要である.不適当な言動でも頭ごなしに叱咤するようなことはせずに,一旦は受け止めて現実的に対応するように心がける.
【解説】
✕(1) 短期記憶の障害のため何度も同じ質問を繰り返すことがあるが,その都度,初めてのつもりで対応するのがよい.「さっきも答えましたよ」と応じたところで患者は同じ問いを繰り返すであろう.
◯(2) 帰宅要求を直ちに否定するのではなく,まずは帰宅したい理由を聴き,患者の気持ちを受け止めることが必要である.
✕(3) 認知症患者に限らず,術部の痛みを訴えた場合,術部にトラブルが起きていないかをまず評価・確認する.
✕(4) まずはやりたくない理由を聴き,患者の気持ちを受け止めた後に対応を考える.
✕(5) 「財布を盗られた」というのは明らかに妄想であるが,直ちに否定することはせずにしばらく一緒に探すなど,患者に共感を示し,興味や関心を別のものに向けていくようにするのが現実的な対応である.
正解 : (2)
【解法の要点】
認知機能障害を来す疾患の障害部位の問題である.変性性認知症(Alzheimer型認知症,Lewy小体型認知症,前頭側頭型認知症)と脳血管性認知症に分けてそれぞれの特徴をつかんでおきたい.
【解説】
✕(1) Alzheimer型認知症では,側頭葉内側面(主に海馬)を中心とする大脳皮質の萎縮,脳溝や脳室の拡大がみられる.
✕(2) 正常圧水頭症では,左右対称の脳室拡大,Sylvius裂・脳底槽の拡大がみられる.
✕(3) 脳血管障害で認知機能が障害された場合が脳血管性認知症である.病変部は様々である.戦略拠点破壊型脳梗塞とよばれる単独の病変で認知症を来たしてしまう場合(視床内側,内包膝,尾状核頭部など)と,多発性脳梗塞やBinswanger型白質病変による場合がある.
◯(4) Pick病は前頭側頭型認知症の一つである.前頭葉・側頭葉の限局性の萎縮や血流低下がみられる.
✕(5) Lewy小体型認知症では,大脳皮質など中枢神経系に広汎にLewy小体が出現する.後頭葉の血流低下がみられる.
正解 : (4)
【解法の要点】
認知症の中核症状と周辺症状について理解しておく.中核症状とは,脳の障害により直接起こる症状(認知機能障害)であり,周辺症状(BPSD:行動・心理症状)とは,中核症状に付随して引き起こされる症状である.
【解説】
✕(1) 今日の日付がわからないのは見当識障害であり,中核症状である.
✕(2) 携帯電話を使えなくなるのは失認であり,中核症状である.
◯(3) 夜になると家の中を歩き回るのは徘徊であり,周辺症状に含まれる.
✕(4) 朝食で食べたものを思い出せないのは記憶障害であり,中核症状である.
✕(5) 目の前にある物品の名称を言えないのは失語であり,中核症状である.
正解 : (3)
【解法の要点】
認知症を引き起こす原因には様々なものがある.高齢者に起こる認知症のほとんどは,加齢による脳の病的な老化に関連するもので,脳実質の変性によって起こる変性性認知症と,脳血管の障害によって起こる血管性認知症の2種類がある.認知症の中には原疾患を早期に治療することで,劇的に認知機能が回復する場合があるため鑑別が重要になる.
【解説】
✕(1),(5) 葉酸欠乏症,ビタミンB12欠乏症は認知機能低下を招く.ビタミンB12は葉酸と共に,赤血球や神経細胞中の核酸合成に関わっている.
✕(2) 正常圧水頭症は認知機能低下,歩行障害,尿失禁が三大症状である.
✕(3) 慢性硬膜下血腫では認知機能低下,頭痛,嘔吐,歩行障害,片麻痺などが認められる.
◯(4) 甲状腺機能亢進症ではなく,甲状腺機能低下症が認知機能低下の原因として有名である.
正解 : (4)