【解法の要点】
嚥下運動は①口腔期(舌の運動で食塊を口腔から咽頭に送る),②咽頭期(嚥下反射により咽頭から食道に送る),③食道期(食道の蠕動運動により胃まで送る)に分けられ,各期で反射などが生じている.各選択肢はいずれも嚥下に関する検査法であり,②の咽頭期における嚥下反射の瞬間の食物の流れを観察できる検査法を選択する.選択肢2と3の判断が決め手となる.
【解説】
✕(1) ティースプーン1杯(3~4g)のプリンなどを嚥下させて,その嚥下,むせ,呼吸状態を観察する.食物の流れは確認できない.
◯(2) 嚥下造影検査(VF)は,造影剤(または造影剤を含む食物)を嚥下させて,レントゲン透視によりその状態を観察,評価する検査である.通常は2方向から動画で記録する.
✕(3) 嚥下内視鏡検査(VE)は,経鼻内視鏡で嚥下を観察する検査である.嚥下内視鏡検査では,嚥下の瞬間に咽頭の収縮と内視鏡の光の反射によって観察が困難になるホワイトアウトが特徴的である.嚥下反射の評価は,嚥下造影検査の方がよりわかりやすく,観察に適している.
✕(4) 改訂水飲みテストは,3mLの冷水を口腔内に入れて嚥下を行わせ,嚥下反射誘発の有無,むせ,呼吸の変化を評価する.頸部聴診法を併用すると本検査の判定をより正確に行うことができる.食物の流れは確認できない.
✕(5) 反復唾液嚥下テストは,30秒間の空嚥下を実施してもらい,嚥下反射の随意的な能力を評価するスクリーニング法である.検者は喉頭隆起および舌骨に指腹を当て,喉頭挙上を触診する.30秒間に3回以上,空嚥下の反復ができることが正常の目安である.食物の流れは確認できない.
正解 : (2)
【解法の要点】
摂食嚥下の時期分類に関する問題である.本症例は,咀嚼以降の嚥下機能に問題はない.自分で食物を口に運ぼうとしないことや画像所見と合わせて,脳挫傷が原因で食物を認知する過程に障害が生じたと考える.
【解説】
◯(1) 先行期は,食べ物が認識でき,口のところまで食物を運ぶまでの時期をいう.
✕(2) 準備期は,唾液と食物を混和させ,嚥下しやすい食塊を形成するまでの時期をいう.
✕(3) 口腔期は,食塊を口腔から咽頭へ送り込み,嚥下反射が起きるまでの時期をいう.
✕(4) 咽頭期は,食塊を咽頭から食道へ送り込むまでの時期をいう.
✕(5) 食道期は,食塊を食道から胃へ送り込むまでの時期をいう.
正解 : (1)
【解法の要点】
Shaker(シャキア)法は,舌骨上筋群を強化して舌骨~喉頭の運動を改善して,食道入口部を開大させることを目的として行う.
【解説】
◯(1) 舌骨上筋群(喉頭挙上に関わる筋)の強化を行うことで喉頭の前上方運動を改善させる.
✕(2) 食道入口部を開大させる.
✕(3)〜(5) 方法は,背臥位で肩を床につけたまま,足の指が見えるまで頭部を挙上(屈曲)する.1分間の休憩を入れながら5~10回繰り返す.呼吸は止めない.
正解 : (1)
【解法の要点】
正常の摂食嚥下とあわせて関連する部位の解剖学的位置と役割を整理しておく.
【解説】
✕(1) Shaker(シャキア)法は,舌骨上筋群の強化により舌骨~喉頭の運動を改善し,食道入口部を開大させることを目的として行う.
✕(2) うなずき嚥下は,リクライニング位で頸部を軽く伸展した後に, 飲み込むタイミングでうなずくように屈曲して嚥下する方法である.喉頭蓋谷に残留した食塊を,重力を利用して咽頭後壁に落とし,続いて頸部前屈によって食道の入口部を開く.気管入口部の角度も急となるため誤嚥を防ぐことができる.喉頭蓋谷の食物残留を減らすことを目的として行う.
✕(3) 麻痺のある患者に対しては,摂食時に,非麻痺側を下・麻痺側を上にした半側臥位で頸部を麻痺側に向けた姿勢をとると,麻痺側の梨状窩の食物残留を減らすことができるとされている.
◯(4) Mendelsohn(メンデルゾーン)手技は,咽頭挙上量と挙上時間の増大,輪状咽頭筋部の開大幅を増大し,食道入口部の開大時間の延長を目的とする.
✕(5) 輪状咽頭筋バルーン拡張法は,食道入口部の最も狭い部分でバルーンの収縮と膨張を繰り返し,狭窄部を拡張する方法である.輪状咽頭筋の機能を改善させることを目的としている.
正解 : (4)
【解法の要点】
摂食嚥下障害に対する各嚥下訓練とその目的について押さえておく.
【解説】
◯(1) Shaker(シャキア)法は,舌骨上筋群の強化により舌骨~喉頭の運動を改善し,食道入口部の開大を目的としている.
✕(2) ハフィング(huffing)は,声門を開いたまま「ハッ,ハッ」と数回呼気を行うことにより痰を出す方法であり,排痰を目的としている.
✕(3) バルーン拡張法は,食道入口部の最も狭い部分でバルーンの収縮と膨張を繰り返し,狭窄部を拡張する方法である.輪状咽頭筋の機能を改善させることを目的としている.
✕(4) ブローイングは,水を入れたコップにストローでブクブクと息を吹き込むと鼻咽腔が反射的に閉鎖することを利用して,鼻咽腔閉鎖に関わる神経や筋群の機能を改善させることを目的としている.
✕(5) Mendelsohn(メンデルゾーン)手技は,咽頭挙上量と挙上時間を増大させ,輪状咽頭筋部の開大幅を増大し,食道入口部の開大時間を延長させることを目的としている.
正解 : (1)