【解法の要点】
Parkinson病の治療は薬物療法と運動療法が中心である.薬物療法では,L-DOPA,ドパミン作動薬などがよく使われている.リズム刺激はParkinson病の歩行障害に有効である.また,薬物療法を行ってもコントロールが困難な場合は,脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)の外科的治療も考慮される.
【解説】
◯(1)歩行に合わせて声をかける,メトロノームなどでリズムをとるなど,リズミカルな繰り返しの聴覚刺激は歩行改善に有効である.
◯(2)Parkinson病の薬物治療は,ドパミンの減少を補うものが主流となる.
◯(3)視床下核に深部電極を刺入し,電気刺激でドパミンの分泌を促進させる脳深部刺激療法(DBS)が行われることがある.
◯(4)経頭蓋磁気刺激法(TMS)は,大脳を局所的に磁気刺激するもので,脳の機能代償能力を発揮させることが目的である.脳卒中後遺症やParkinson病,うつ病などに対して適応がある.
✕(5)ボツリヌス毒素は筋収縮を抑制する作用があるので,脳卒中後の痙縮などに対してボツリヌス毒素を筋注射する.Parkinson病への適応はない.
正解 : (5)
【解法の要点】
Parkinson病の薬物治療として用いられるL-dopaは長期的な使用で様々な副作用が生じる.基本的な事項なのでParkinson病の主症状とともに押さえておく.
【解説】
✕(1) wearing-off現象とは,L-dopaの効果持続時間が短くなり,服用後数時間で効果が消退する現象である.
✕(2) Westphal現象とは,筋強剛(固縮)により,足関節を他動的に背屈したあとに手を離すと,前脛骨筋が収縮してなかなか戻らない現象である.
✕(3) pusher現象とは,脳卒中による片麻痺患者が非麻痺側上下肢でベッド柵や車椅子などを押してしまい,麻痺側に姿勢が崩れてしまう現象である.右(劣位)半球損傷者に多い.
◯(4) on-off現象とは,内服時間とは無関係に突然症状が強くなり(off),また自然に軽快する(on)現象である.本症例は突然の無動を繰り返している.
✕(5) frozen現象とはすくみ足のことであり,歩き始めの第1歩がなかなか出ない状態のことをいう.
正解 : (4)
【解法の要点】
中脳上丘レベルの横断面の解剖と,Parkinson病の障害部位の問題である.
【解説】
✕(1) 上丘である.眼球運動に関与していると考えられている.
✕(2) 内側毛帯である.深部感覚(振動覚など)の経路である.
✕(3) 赤核である.赤核の障害により,赤核振戦という粗大な動作で誘発される振戦が起こることがある.
◯(4) 黒質である.Parkinson病で神経細胞脱落を認める.
✕(5) 大脳脚(錐体路)である.脳血管障害の後遺症で重度の麻痺がある患者では,錐体路のWaller変性により萎縮していることがある.
正解 : (4)
【解法の要点】
Parkinson病のすくみ足の誘発因子は狭路,障害物,精神的緊張などである.リズムをとったり,踏み越えられる程度の目標物を踏み越えさせたりすることで,すくみ足は改善する.本症例は重症度分類ステージⅣ,小刻み歩行,突進現象やすくみ足などの姿勢反射障害がみられている.姿勢反射障害による転倒などが起こらないように安全な歩行練習を選択する.
【解説】
✕(1) 速く歩こうとすると小刻み歩行や突進現象が誘発され,転倒しやすくなる.
◯(2) 狭路はすくみ足が誘発されやすいため,障害物のない広いところで歩くとよい.
✕(3) 一本線上では,進行方向への視覚的目標物とならない.また,バランス能力が低下している状態では転倒のリスクが高い.
✕(4) 目標とする方向が限定されたり,次の目標物までの距離が大きすぎたりすると,進行方向への視覚的目標物とならず,すくみ足が誘発されやすい.
✕(5) お盆に載せたコップを運びながら歩くのは,精神的緊張が生じ,すくみ足が誘発されやすい.
正解 : (2)
【解法の要点】
UPDRS(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)は,国際的に多く使用され,Parkinson病の症状の変化や障害の程度を客観的に評価する統一スケールの一つである.評価項目は4つのパートに分かれ42項目にもわたるのですべて覚えるのは難しい.まずは4つのパートを覚え,Parkinson病の症状から評価項目を考える.4つのパートとは,Ⅰ部:精神機能,行動および気分,Ⅱ部:日常生活動作(on/off時に分けて検査),Ⅲ部:運動能力検査(on時に検査),Ⅳ部:治療の合併症である.
【解説】
✕(1) Ⅱ部に「Parkinson症候群に関連した感覚障害」という項目はあるが,単に「感覚」という項目は設けられていない.また感覚障害はParkinson病の典型的症状ではないが,UPDRSの評価項目を詳細に記憶していた受験生は少し迷ったかもしれない.
◯(2) Ⅲ部に姿勢の項目がある.
◯(3) Ⅱ,Ⅲ部に歩行の項目がある.
◯(4) Ⅰ部に知的機能の障害という項目がある.
◯(5) Ⅳ部にジスキネジアの項目がある.
正解 : (1)
【解法の要点】
Parkinson病のHoehn&Yahrの重症度分類について,問題文の記述から分類する.姿勢保持反射障害がみられればStageIII以上であることは押さえておこう.
【解説】
✕(1)StageIは片側の機能障害である.
✕(2)StageIIは両側性の障害がみられるが,バランス障害はみられない.
◯(3)日常生活は自立しているが,両側性の障害,姿勢反射障害があることから,StageIIIである.
✕(4)StageIVは,日常生活活動全般に介助が必要であり,著明な歩行障害を呈する.
✕(5)StageVは,車椅子生活または寝たきり状態である.
正解 : (3)