【解法の要点】
Gowers徴候は登攀性起立ともいい,下肢の筋力低下により生じる特殊な動作で,立ち上がる際に手を膝で押さえつつ,体を起こしていく.
【解説】
✕(1) 関節リウマチは,中年女性に多く,関節炎を主症状とした炎症性疾患である.まず手関節,中手指節関節(MCP),近位指節関節(PIP)が障害されやすい.
✕(2) Parkinson病は中脳黒質の変性疾患で,四大徴候の①筋強剛,②静止時振戦,③寡動(無動),④姿勢保持反射障害が特徴である.
✕(3) 引き抜き損傷は,脊髄から神経根が引き抜かれる節前損傷である.交通事故(特にオートバイ事故)やスポーツなどで不自然な肢位に牽引力がかかり,神経を損傷して起こる痛みと麻痺のことで,腕神経叢麻痺の一種である.
✕(4) 中心性頸髄損傷では,中心灰白質の障害により,下肢より上肢に強い運動麻痺が出現する.
◯(5) 筋ジストロフィーは,骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患の総称である.Duchenne型筋ジストロフィーは,X連鎖劣性遺伝で,①幼児期から始まる筋力低下,②動揺性歩行,③登攀性起立(Gowers徴候),④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする.
正解 : (5)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーは,筋のジストロフィン蛋白の欠損が原因で,筋の変性・壊死と筋力低下を生じる.①幼児期から始まる筋力低下,②動揺性歩行,③Gowers徴候(登攀性起立),④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする.進行すると呼吸筋・心筋も障害される.
【解説】
✕(1) 軽度知的障害がみられ,平均IQは80といわれる.また,約10%の患者に自閉症がみられる.
✕(2) 筋萎縮は骨盤帯,肩甲帯などの近位筋から始まり,左右対称に萎縮していく.
✕(3) 関節拘縮は,発症初期からではなく,筋力低下しはじめる4~5歳頃から生じる.下肢の拘縮が上肢よりも先に生じやすく,腸腰筋,大腿筋膜張筋,ハムストリングス,下腿三頭筋の短縮による股・膝関節屈曲拘縮,足関節尖足拘縮がみられる.
✕(4) 10歳頃に歩行不能となり車椅子を必要とする.
◯(5) Gowers徴候は,座位からの起立時に,手を膝の上について,その支えで努力しながら身体を起こす現象で腰帯筋,下肢近位筋の筋力低下時に認められる.
正解 : (5)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸管理は,臥床期から必要になってくる.基本事項を理解しておこう.
【解説】
✕(1) 歩行不能となる10歳頃から呼吸機能が低下し,呼吸不全が生じる.病状により適応基準を満たせば非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が行われる.NPPVは他の神経疾患にも用いられ,生命予後の改善が認められている.
◯(2) 舌咽呼吸は,カエルの呼吸のように,下顎と咽頭の間に溜めた空気を舌で奥に押し込むもので,10~20回で最大強制吸気量が得られる.
✕(3) 咳が減弱すると誤嚥や排痰困難の原因となるため,咳の最大流量(cough peak flow)を目安にして,必要に応じて咳介助が行われる.
✕(4) 機能障害度ステージⅣは歩行可能な時期であり,呼吸管理は適応とならない.歩行不能となる頃から呼吸不全を認めるようになるため,呼吸管理はそれ以降に適応となる.
✕(5) 12歳以上では,普段の最大呼気流量が270L/min 以下の場合は,徒手による排痰介助が優先される.最大呼気流量が160L/min以下や,徒手による圧迫で胸が痛くなるなどの理由があれば,排痰補助装置による咳介助が選択される.常に排痰補助装置による咳介助が優先されるわけではない.
正解 : (2)
【解法の要点】
手を強く握るとすぐに放しにくいという把握ミオトニアを呈している.ミオトニアは一旦筋が収縮するとその興奮が持続し,弛緩しにくくなる.ミオトニア(筋強直)を来す疾患の中でも,筋強直性ジストロフィーは有名である.遠位筋優位の筋力低下,斧様顔貌,前頭部禿頭,白内障,糖尿病,常染色体優性遺伝などのキーワードは押さえておきたい.
【解説】
✕(1) アテトーゼは不随意運動に含まれ,頸部から上肢を中心とした筋緊張を伴う粗大な運動であり,脳性麻痺などでみられる.
✕(2) Gowers徴候(登攀性起立)は四肢近位筋の筋力低下のために,床からの起立時に手を膝の上について,その支えで努力しながら身体を起こす徴候であり,Duchenne型筋ジストロフィーでみられる.
◯(3) ミオトニアは筋強直性ジストロフィーに特徴的である.
✕(4) Lhermitte徴候は頸部を前屈させると,電撃様の疼痛が背中から両下肢まで走る現象であり,多発性硬化症にみられる.
✕(5) Romberg徴候は閉脚立位で閉眼すると視覚情報がなくなり,身体動揺の増大や転倒が生じる現象であり,脊髄性や前庭性の失調症でみられる.
正解 : (3)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーの機能障害度分類は,ステージ1~8に分かれており,ステージ5では起立歩行は不可能であるが,四つ這い移動は可能である.
【解説】
✕(1) 座位保持練習はステージ6で行う.
◯(2) Duchenne型筋ジストロフィーの患者は歩行不能となる頃から側弯症が進行することが多く,車椅子乗車時間が長くなることも体幹の変形をさらに進行させる原因となる.この時期には軟性コルセット等の体幹装具で変形進行を予防する.
✕(3) ステージ5では脊柱可動域訓練が主となり,咳嗽介助の段階ではない.
✕(4) 下肢の漸増抵抗運動は負荷が大きすぎるので行わない.
✕(5) 起立は不可能である.椅子からの立ち上がりが可能なのはステージ3までである.
正解 : (2)
【解法の要点】
本症例は独歩不可能で,室内での四つ這い移動が可能であることから,Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5であることがわかる.
【解説】
✕(1) Duchenne型筋ジストロフィーでは,精神発達遅滞は必ずしもみられない.
✕(2) 深部腱反射は上位運動ニューロン障害や下位運動ニューロン障害を評価するものであり,優先して行うべき評価ではない.
✕(3) 神経伝導速度検査は末梢神経障害で行う検査である.Duchenne型筋ジストロフィーは筋疾患である.
◯(4) 車椅子座位時間が長時間になると脊柱の変形が急速に進行し,呼吸筋の筋力低下により呼吸機能は低下する.ステージの進行に伴い人工呼吸管理が必要となるため,車椅子座位時間が増えるこの時期に呼吸機能の定期的な検査は重要である.
✕(5) 前腕回内外試験は小脳性運動失調の評価法である.
正解 : (4)