【解法の要点】
選択肢はすべてPNF(固有受容性神経筋促通法)手技である.PNFアプローチとそれぞれの特徴について理解しておく必要がある.
【解説】
✕(1) コントラクト・リラックス(contract-relax)は,ホールド・リラックスと非常によく似た手技で,関節可動域制限がある場合に用いられる.拮抗筋群の緊張が感じられるところで随意的に回旋を強調させた求心性の等張性収縮を行う.その後,リラクセーションを得ることで関節可動域の拡大や柔軟性の改善を目的とする.
✕(2) スローリバーサルは,PNFにおける促通パターンをゆっくりと往復運動させる手技である.主働筋と拮抗筋の両方向に抵抗をかけ,筋力増強,協調性の向上,持久力の向上を目的とする.
✕(3) ホールド・リラックスは,2~3秒の痛みが出ない範囲で最大等尺性収縮の直後に力を抜かせ,リラクセーションを得る手技である.関節可動域の拡大と筋力の増強を目的とする.
◯(4) リズミック・スタビリゼーションは,動筋と拮抗筋の交互の等尺性収縮を繰り返して関節固定筋群の同時収縮を促通するもので,協調性の改善を目的とする.小脳性協調運動障害にも有効である.
✕(5) リピーテッドコントラクション(repeated contraction)は,可動域の初期または中間の運動を繰り返す手技である.筋力増強と協調性の向上を目的とする.
正解 : (4)
【解法の要点】
頭部CTで小脳および脳幹(中脳,橋,延髄)の萎縮が指摘されている.しゃべりにくいという症状は延髄の障害で説明できる.歩行中のふらつきや,四肢協調運動障害は小脳障害によるものと推察できる.これらに対応した評価指標を考える.
【解説】
◯(1) FBS(Functional balance scale)は,BBS(Berg Balance Scale)ともいう.高齢者の転倒リスクのスクリーニングや脳卒中患者のバランス能評価に用いる.
◯(2) 踵膝試験は,下肢の協調運動の検査である.小脳失調で陽性になる.
◯(3) 鼻指鼻試験は,上肢の協調運動の検査である.小脳失調で陽性になる.
✕(4) FMA(Fugl-Meyer assessment)は,脳血管障害後の総合評価法であり,上肢・下肢の運動機能,感覚,バランス,関節障害を評価する.
◯(5) SARA(正しくは,scale for the assessment and rating of Ataxia:小脳性運動失調評価法)は,全8項目(歩行,立位,座位,言語障害,指追い試験,鼻指試験,手の回内・回外運動,踵すね試験)の評価セットで,四肢の運動失調,歩行障害,構音障害,眼球運動障害を簡便に評価できる.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄性運動失調は,脊髄後索病変により深部感覚が障害されることによって生じる運動失調である.各選択肢の所見のうち病変の主座が脊髄のものを選択する.
【解説】
✕(1) 折りたたみナイフ現象とは,他動的な筋の伸張に対し,最初は抵抗が強いが,その後力を加え続けられると急激に抵抗が弱くなる現象である.上位運動ニューロンの障害でみられる.
✕(2) 断綴性発語とは,発声に必要な喉頭筋群の協調運動が障害されているため,会話はとぎれとぎれで不明瞭な話し方になる現象を指す.小脳性構音障害である.
✕(3) 羽ばたき振戦では,不定期に脱力が起こり,一定の姿勢に固定しようとすると,振戦様の運動がおこる.肝性脳症,呼吸不全(CO2ナルコーシス)でみられる.
✕(4) 酩酊歩行は,両足を開き(開脚性歩行),全身を動揺させる(平衡障害のため)歩き方である.小脳性,前庭神経性の運動失調である.
◯(5) Romberg試験は前庭神経障害や深部感覚障害などで陽性になる.
正解 : (5)
【解法の要点】
脊髄小脳変性症は小脳の萎縮によって協調運動が障害される.協調性運動の運動学習においては課題の難易度調整が重要である.重心は低から高,重心移動は小から大,動作範囲は狭から広,動作速度は速から遅,動作方向は単一から多方向といった内容で徐々に難易度を高めていく.姿勢では背臥位→端座位→立位の順で難度が高くなる.端座位から立位への姿勢変化には比較的大きな重心移動を伴うので,端座位での重心移動練習を十分に行ってから立位練習へと移行する.
【解説】
✕(1) セラピーボール(バランスボール)上座位では安定性が低く,上肢の支持なしでの端座位ができるようになったばかりの状態での導入は適切ではない.
✕(2) 端座位からの立ち上がり練習は座位姿勢からの重心移動を伴う.まずは座位での重心移動練習を行う方がよい.
◯(3) 解法の要点 参照.
✕(4) 片膝立ち位は,膝立ち位の姿勢が安定してから行うもので,端座位保持がようやくできている現時点では難易度が高く危険である.上肢挙上を伴うとさらに難易度は上がる.
✕(5) 立位での不安定な条件下での協調性運動である.立位での姿勢保持,重心移動の安定性を高めることが優先される.
正解 : (3)
【解法の要点】
脊髄小脳変性症は,小脳から脊髄にかけての神経変性疾患である.主症状は(小脳性,脊髄後索性の)運動失調症である.非遺伝性(孤発性)と遺伝性とに大別される.わが国に多く,自律神経症状を特徴とするのは,非遺伝性である多系統萎縮症(オリーブ橋小脳萎縮症,線条体黒質変性症,Shy-Drager症候群)である.一般的な症状や運動療法もあわせて整理しておく.
【解説】
◯(1) Frenkel体操は,視覚代償により運動制御を促通する運動療法であり,脊髄癆性運動失調に対して行われる.脊髄小脳変性症には有効である.
✕(2) 脊髄小脳変性症では小脳部と脳幹部が萎縮し,その部位によっては眼球運動障害や眼振を来すことがあるが,視覚は保たれやすい.
◯(3) SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia:小脳性運動失調評価法)は,全8項目(歩行,立位,座位,言語障害,指追い試験,鼻指試験,手の回内・回外運動,踵すね試験)の評価セットで,四肢の運動失調,歩行障害,構音障害,眼球運動障害を簡便に評価できる.
✕(4) わが国の有病率は 10万人あたり18.6人である.
✕(5) 自律神経障害が認められるのは,多系統萎縮症(オリーブ橋小脳萎縮症,線条体黒質変性症,Shy-Drager症候群)であり,非遺伝性である.遺伝性は少ない.
正解 : (1),(3)