【解法の要点】
脊髄小脳変性症と多発性硬化症の病変部分の違いがわかれば解ける.どちらも中枢神経系に障害が起きるが,大脳皮質の病変は多発性硬化症に特徴的である.
【解説】
✕(1) 痙縮などの錐体路障害は,どちらでも起こりうる.脊髄小脳変性症は,臨床的には小脳症状のみが目立つ純粋小脳型と,小脳以外の症状が目立つ非純粋小脳型に大別され,後者では脳幹の症状をしばしば合併するため痙縮が起こる.多発性硬化症では大脳白質病変や脊髄病変による錐体路障害で痙縮が起こる.
✕(2) 脊髄小脳変性症では,運動失調は主要症状である.多発性硬化症では小脳病変の頻度は高くないが,脳幹病変による横走線維の障害で運動失調を起こすことが多い.
✕(3) 脊髄小脳変性症の非純粋小脳型では,脳幹(特に延髄)に変性が及ぶため,しばしば球麻痺を来し,嚥下障害を起こす.多発性硬化症では,脳幹病変による球麻痺や大脳の多発病変による仮性球麻痺によって嚥下障害を起こす.
✕(4) どちらも選択肢3と同様の理由で,球麻痺・仮性球麻痺を来すため構音障害を起こす.
◯(5) 有痛性けいれんとは,脊髄障害の回復期に手足が急にジーンとして突っ張る症状で,多発性硬化症に特徴的な症状である.脊髄小脳変性症では通常は来さない.
正解 : (5)
【解法の要点】
腱反射(伸張反射)は,筋紡錘(錘内筋)が筋の伸張を感知すると感覚性求心性神経(Ia線維)を介して筋を支配する運動ニューロンを興奮させ,この興奮が運動性遠心性神経(α運動線維)に刺激として伝わり筋が収縮する.上位運動ニューロンは下位運動ニューロンに対し抑制的に働いているため,上位運動ニューロンの障害では抑制が弱まり反射が亢進する.
【解説】
✕(1) 多発性筋炎は筋原性の障害であり,腱反射は減弱する.
◯(2) 多発性硬化症は上位運動ニューロンの障害であり,腱反射は亢進する.
✕(3) Guillain-Barré症候群は末梢神経の障害であり,腱反射は減弱する.
✕(4) 尿毒性ニューロパチーは末梢神経の障害であり,腱反射は減弱する.
✕(5) Duchenne型筋ジストロフィーは筋原性の障害であり,腱反射は減弱する.
正解 : (2)
【解法の要点】
多発性硬化症は,中枢神経に空間的・時間的に多発性の脱髄性病変を起こし,症状の寛解と再発を繰り返す慢性神経疾患である.
【解説】
✕(1) Gowers徴候はDuchenne型筋ジストロフィーでみられる所見である.腰帯筋,下肢近位筋の筋力低下時に認められ,座位からの起立時に,手を膝の上について,その支えで努力しながら身体を起こす徴候をいう.
◯(2) Lhermitte徴候は,頸部を他動的に前屈したときに,電撃痛が背部を走る所見をいう.多発性硬化症に特異的である.
✕(3) Patrick徴候は,背臥位で患側足部を反対側の膝の上に置き,股関節屈曲・外転・外旋(開排)の肢位をとらせ,患側膝の内側部を背側に圧迫したときに,仙腸関節,股関節に痛みが出る所見である.
✕(4) Tinel徴候は,末梢神経が損傷されている際,軸索再生の先端部付近を軽く叩くとビーンと激しい放散痛が生じる現象である.主に手根管症候群でみられる.
✕(5) Uhthoff徴候は多発性硬化症においてみられ,入浴や運動などによって体温が上昇すると,視力障害や麻痺症状が一過性に悪化する所見である.
正解 : (2)
【解法の要点】
多発性硬化症とは再発・再燃を繰り返す脱髄性疾患である.MASとは痙縮の評価に用いられ,段階2とは筋緊張の増加がほぼ全可動域を通して認められるが,容易に動かすことができる段階である.多発性硬化症と痙縮を増悪させないための治療を選べばよい.
【解説】
✕(1) 赤外線は波長750nm~1mmの電磁波のことである.生体への作用としては,温熱,紅斑,色素沈着,鎮痛作用が挙げられる.術後疼痛,顔面神経麻痺,関節リウマチに対して適応がある.
✕(2) 多発性硬化症では,Uhthoff現象(体温上昇により症状が一過性に悪化すること)を避けるため,赤外線,ホットパック,温浴,シャワーなどの温熱(療法)は禁忌である.逆に痙縮抑制のための寒冷療法は効果的である.
◯(3) 電気刺激療法は,筋肉や腱,靱帯を刺激し,痙性の減弱や筋再教育,疼痛緩和などを期待する治療法である.
✕(4) MASは2であることから痙縮は強くないと判断できるため,まだアキレス腱延長術の適応とはならない.また,脳性麻痺の二次障害などで,足関節尖足位拘縮などに対する手術療法としてアキレス腱延長術を施行することがある.
✕(5) 経頭蓋磁気刺激法(TMS)は,大脳を局所的に磁気刺激するもので,脳の機能代償能力を発揮させることが目的である.脳卒中後遺症やParkinson病などに対して適応がある.適応条件としては,全身状態が良好であることや,頭蓋内に金属がないこと,心臓ペースメーカーを入れていないこと,少なくとも親指・人差し指・中指の曲げ伸ばしができること,麻痺が両側性でないことなどが挙げられる.本例は二次進行型に移行しているため,全身状態は安定していないと考えられる.
正解 : (3)
【解法の要点】
多発性硬化症は,中枢神経に空間的・時間的に多発性の脱髄性病変を起こし,症状の寛解と再発を繰り返す慢性神経疾患である.温熱刺激,過負荷,疲労,ストレスは症状を悪化させることがあるため,高温の温熱療法,高負荷および長時間の運動は注意する.本問では,外気温の高い時間帯を避けて実施する理由に関係する徴候を選べばよい.
【解説】
✕(1) Barré徴候は錐体路障害による軽微な不全麻痺を示す徴候である.上肢,下肢でそれぞれ認められる.上肢では,閉眼したうえで,手掌を上にして両腕を前方に水平に挙上させてそのまま保持するように命じると,障害側の上肢が回内し下降する.
✕(2) Horner徴候は交感神経系の障害で,障害側の眼瞼下垂,眼球陥凹,縮瞳,顔面の発汗低下を呈する.
✕(3) Lhermitte徴候は,頸部を他動的に前屈したときに,電撃痛が背部を走る所見である.多発性硬化症に特異的である.
✕(4) Tinel徴候は,末梢神経が損傷されている際,軸索再生の先端部付近を軽く叩くとビーンと激しい放散痛が生じる現象である.
◯(5) Uhthoff徴候は,入浴や運動などによって体温が上昇すると,視力障害や麻痺症状が一過性に悪化する所見である.多発性硬化症に特徴的な症状である.
正解 : (5)