【解法の要点】
Brunnstrom法ステージ上肢Ⅴは,基本的共同運動から独立した運動がほとんど可能,手指Ⅴは対立つまみ,円筒にぎり,球握りなどが可能であるが指の精緻な分離運動はできないレベルである.図に示されている作業のうち,より高度な指の分離運動を必要とするものを選択する.
【解説】
✕1 革細工の染色の様子である.左手で革を固定することは可能な分離レベルである.
✕2 陶芸の手びねりは,感覚機能,両上肢の協調性,手指の巧緻性の改善を目的として行う.両手で粘土を転がすことは可能な分離レベルである.
◯3 マクラメは,麻やレザーなど好みの素材のひもを結んでアクセサリー,ベルト,小物入れなどの雑貨をつくる結びの手芸である.図では,両上肢を挙上しながら,両手指の巧緻性を必要としており,選択肢の中では最も困難な作業である.
✕4 木工の塗装過程である.左手で作品を固定することは可能な分離レベルである.
✕5 和紙のちぎり絵は,手指の巧緻性,両手動作の改善を目的として行う.左手で和紙をつかむことは可能な分離レベルである.
正解 : (3)
【解法の要点】
作業活動の治療的応用を問うている.
【解説】
✕1 関節リウマチ患者には日常生活から関節を保護し,関節に負担をかけない日常動作を指導する必要がある.粘土細工は手指の関節に大きな負荷がかかる作業であり避けるべきである.
✕2 小脳性の運動失調では企図振戦や測定障害を来すため,はさみを使用する切り絵は適切ではない.
✕3 脊髄小脳変性症は,運動失調を主とした慢性進行性の症候群で,進行の度合いによって手作業の拙劣さなどを生じる.そのため,バランスを崩しやすい作業や,工具などでけがをしやすい作業は避ける.卓球は転倒のリスクが高く適切ではない.
◯4 Parkinson病患者では,安静時振戦,動作緩慢,前傾前屈姿勢などが症状としてあるため,目印を用いる単純な動作であること,上方へのリーチ動作で体幹・頸部・上肢の伸展を促せることなどからも適切である.
✕5 デコパージュは紙を切って小物に貼って飾る技法のことである.デコパージュ専用液(接着剤)やトップコート液の中には揮発性・刺激性の物質が入っているため呼吸器疾患や慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の作業療法には適さない.COPD患者が呼吸困難を来さないようにADL・IADLの指導や住宅環境の調整をするのが作業療法としては適切である.
正解 : (4)
【解法の要点】
アテトーゼ型脳性麻痺は,錐体外路障害による動揺性の筋緊張を示す.本症例では頸椎症性脊髄症を発症しており,手指の巧緻運動障害も伴っていると考えられる.アテトーゼに加え,頸椎症性脊髄症の症状によって上肢運動機能障害があり,車椅子のレバー操作に障害を来している.アテトーゼの動揺性の筋緊張は,精神的ストレスや興奮などでも高まりやすい.工具などでけがをしやすい作業は避ける.
【解説】
◯1 貼り絵は安全に行えるため,本症例に適切である.
✕2 不随意運動があり,鋸を使用するのは危険である.
✕3 安全ではあるが,ドミノを並べるのは,精神的にもストレスをかけることから,動揺性の筋緊張が高まりやすく,難しいと考えられる.
✕4 不随意運動があり,彫刻刀を使用するのは危険である.
✕5 スタンピングはスタンプを木槌で打つ作業であり,危険である.
正解 : (1)
【解法の要点】
道具の把握形態については実際にイメージしながらどのように手を構えるか行ってみるとよい.様々な持ち方があるとは思うが,把持の名称に落とし込んで正解を導きたい.編み棒は母指と中指でつまみ,右利きでは左の示指に毛糸をかけ,右の母指と示指で編み目を押さえ,中指を添え作業をする.指腹つまみ(pulp pinch)である.
【解説】
✕1 中指の側腹で支え母指で固定する,側腹つまみ(lateral pinch)の変形である.
◯2 目打ちともよばれ,例えば籐細工では,籐を編み込む際に細かい隙間に籐の先を通すために使用する.母指と示指でつまみ中指を添えて作業する,指腹つまみ(pulp pinch)である.
✕3 母指と示指で把持する,指尖つまみ(tip pinch)である.
✕4 筆は母指・示指・中指の3指で持ち環指を添える,3点つまみ(three point pinch, chuck pinch)である.
✕5 5指すべてを使った握り(grip)である.
正解 : (2)
【解法の要点】
各作業の特徴と目的を押さえておく.
【解説】
✕1 陶芸の菊練りは,土の空気を抜く作業である.全身の協調性や両上肢・手関節の固定力,上肢・体幹・下肢筋力,体幹のバランス,感覚入力の改善を目的とする.
◯2 籐細工は,籐の目に沿って手指の操作を繰り返す作業である.手指の巧緻性,上肢の持久力,目と手の協調性の改善を目的とする.
◯3 マクラメは,麻やレザーなど好みの素材のひもを結んでアクセサリー,ベルト,小物入れなどの雑貨をつくる結びの手芸である.両手指の巧緻性の改善,構成能力訓練を目的とする.
✕4 木版画の摺り工程は,版木に絵具(顔料など)をのせて紙に写し取る工程である.版木に均一に絵具を刷毛で広げ,ずれないように紙を版木に押し当て,バレンやローラーを細かく動かしながら摺る作業は,上肢の筋力や可動域改善,体幹のバランスの改善を目的に行われる.
✕5 木工の鋸挽きは,上肢の筋力や体幹のバランスの改善を目的に行われる.
正解 : (2),(3)
【解法の要点】
陶芸の工程におけるそれぞれの意味を問う問題である.
【解説】
◯1 荒練りとは土の水分量を均一化する作業である.
✕2 菊練りは土の空気を抜く作業である.
✕3 施釉は粘土などを成形し素焼き後に行う釉薬塗りの工程であり,いわゆるコーティング作業のことである.
✕4 手びねりとは,成形の作業のことで,たたら作り,板作りなどがある.
✕5 天日干しとは,素焼き前に行う乾燥工程である.
正解 : (1)