【解法の要点】
徒手筋力テストは頻出問題であるため,運動到達最終域の肢位や抵抗部位・方向を正確に理解しておく.
【解説】
◯1 頸部屈曲の段階2では背臥位で検者が胸鎖乳突筋の触診を行う.
✕2 肘関節伸展の段階2では座位にて肩関節は90°外転位として抵抗なしで全範囲行う.このとき検者は肘のみを支える.図では前腕の下面で上肢を支え,肘頭のすぐ近位で上腕三頭筋を触知しており,段階1か0の検査肢位である.
✕3 股関節屈曲,外転および膝関節屈曲位での股関節外旋の段階2では背臥位で抵抗なしで全範囲行う.
✕4 体幹屈曲の段階2では背臥位で両上肢を体側に置き両膝を屈曲した肢位をとり,頭部を持ち上げさせる.検者は腹筋を触診する.
◯5 肩甲骨の内転と下方回旋の段階2では座位にて全範囲行う.
※肩甲骨の内転と下方回旋の段階2では,座位にて肩関節を内旋,上肢を伸展(後方挙上)し,背の後ろに内転させる.患者の手首を握り上肢を支え,肩甲骨の脊椎縁(内側縁)の下で触診する(新・徒手筋力検査法第10版).
正解 : (1),(5)
【解法の要点】
Danielsらの徒手筋力テスト(段階3)は,重力に抗して可動域を最終まで動かすことのできる段階である.関節,運動ごとにMMTの検査方法を理解する必要がある.
【解説】
✕1 肩関節水平外転の検査肢位は腹臥位で肩関節を90°外転し,肘関節を90°屈曲位にして前腕を下垂させる.
✕2 足関節底屈の検査肢位は立位で検査側の片脚立位をとる.腓腹筋・ヒラメ筋の検査の場合は検査側の膝は伸展位,ヒラメ筋単独の場合は,軽度屈曲にする.1回でも踵が全可動域挙上できれば段階3と判断する.
◯3 肩甲骨内転と下方回旋の検査肢位は,腹臥位で頭を楽な方に向け,検査側の肩関節を内旋,内転し,肘を屈曲し,手背を腰にあてる.手背を持ち上げ,全可動域挙上できれば段階3と判断する.検者は肩甲骨の内側縁の下を触診する.
✕4 手関節屈曲の検査肢位は,前腕回外,手関節中間位にする.手指伸展位で手指および母指の力は抜き,抵抗なしで全可動域屈曲できれば段階3と判断する.
✕5 股関節内旋の検査肢位は,座位で,上肢は体幹を支えるのに用いるか,胸の上で組む.下肢を最大内旋の最終肢位に保持できれば段階3と判断する.「新・徒手筋力検査法第10版」では,股関節内旋のテストは座位で,上肢は体幹を支えた状態で行う.軽度の抵抗か抵抗のない状態で最終可動域まで動かせれば段階3と判断する.
正解 : (3)
【解法の要点】
代償運動はある運動を行うときに,動筋の筋力低下や麻痺からその作用を他の筋の運動によって補おうとする見せかけの運動である.そのため,筋力検査をする場合には特に注意しなければならない.本問は,肩関節屈曲90°から肘関節伸展の段階2の検査をしようとしている.第6頸髄残存レベルでは肩関節すべての運動,肘関節屈曲,前腕回内外,手関節背屈が可能である.肘関節伸展運動の主動作筋は上腕三頭筋であるが,代償筋は棘下筋・小円筋である.機能残存レベルに注意しつつ,代償筋である棘下筋・小円筋が関与する運動を選択する.
【解説】
✕1 第6頸髄までの機能残存レベルでは,体幹の屈筋群は機能していないため代償できない.
✕2 肩関節をさらに屈曲させると,肘はより高い位置にくるため,前腕の重さで肘は屈曲に働く.肘関節伸展の代償運動にはならない.
✕3 肩関節の外転は上腕を側方に挙上する運動であり,図の検査における運動が生じる方向と肩関節外転は異なる方向の運動であるため,動作として成立せず,代償運動は生じない.肩関節屈曲90°から肩関節外転90°(屈曲0°)への水平伸展の動作であれば遠心力により肘関節伸展の代償運動が出現する.
◯4 肩関節屈曲90°での肩関節外旋運動は,前腕を上方に回旋させる.上方に回旋された前腕は重力で肘関節伸展に働く.肩関節外旋の主動作筋は棘下筋と小円筋である.棘下筋,小円筋の神経支配はC5,6レベルであり,機能は残存する.肩関節屈曲位で外旋運動が加わるのを最も抑制すべきである.
✕5 肩関節屈曲90°での前腕回内運動は,方形回内筋,円回内筋の収縮により生じるが,代償運動は生じない.
正解 : (4)
【解法の要点】
徒手筋力テスト(MMT)の検査方法の問題である.関節,運動ごとにMMTの検査方法を理解する必要がある.
【解説】
✕1 腹直筋(体幹屈曲)の段階2~0の判定では膝関節は屈曲位で行う.また,検者の手は触知できる位置に置く.
◯2 前鋸筋は,肩甲骨の外転と上方回旋で検査する.段階1,0の検査は座位,上肢を90°以上前方への屈曲位に置く.被検者はこの位置で上肢を保とうと試み,検者は被検者の上肢を肘部分で支持し,他方の手で前鋸筋を触知する.
✕3 僧帽筋中部線維の検査は腹臥位で,検査台の縁に肩を置き,肩関節は90°外転位,肘関節は90°屈曲位で行う.被検者は肘を持ち上げようと試みる.本問の図は僧帽筋下部線維の段階2〜0のテスト肢位である.
✕4 上腕三頭筋の段階5~3のテストでは図のように行うが,段階2~0では座位で,上肢を90°外転,肘関節は約135°屈曲位をとり,上肢全体は床に水平になるようにする.段階1,0のテストでは,検者は前腕の下面で上肢を支え,他方の手で肘頭のすぐ近位の後面で触知する.被検者は肘関節を伸展しようと試みる.
◯5 長橈側手根伸筋の段階1,0のテストは手と前腕を十分に回内して,被検者は手関節を伸展しようと試みる.検者は被検者の手関節を伸展位に支え,他方の手で触知する.
正解 : (2),(5)
【解法の要点】
Danielsらの徒手筋力テストの段階4は優(Good),段階5は正常(Normal)であり,重力に加えて中~強度の抵抗に対しても完全に運動範囲を動かす,または維持できる状態である.患者の姿勢や各関節の状態,検査者が抵抗を加える位置に注意する.
【解説】
◯1 肩甲骨内転と下方回旋の検査肢位は,腹臥位で頭を楽な方に向け,検査側の肩関節を内旋・内転し,肘関節を屈曲し,手背を腰にあてる.手背を持ち上げ,背中を横切る上肢の位置を維持させる.検査者は,患者の肘の直上で上腕骨に手を置き,外方向かつ下方向に抵抗を加える.肩甲骨の内側縁の下で菱形筋群を触診する.
✕2 上腕筋の検査では,前腕は回内位で肘屈曲のテストをする.中間位は腕橈骨筋の検査である.
✕3 前腕回内の検査では抵抗は回外方向に加える.図は回内方向に抵抗を加えており,前腕回外のテストである.
✕4 手関節伸展の検査は,前腕回内位で手指は屈曲位で行う.
✕5 中手指節間(MP)関節伸展の検査では,MP関節とIP関節は力を抜いた屈曲位に置き,抵抗は基節骨に加える.図のように複数関節をまたいで抵抗をかけるのはリスク面においても好ましくない.抵抗を正しく加えることができると,IP関節は軽度屈曲位にあることが多い.
✕5 肩甲骨内転と下方回旋のテストであり,主動作筋は菱形筋群である.
正解 : (1)