【解法の要点】
検査法は必ず国試に出るが,どこまで覚えたらよいのか戸惑う受験生が多い.まずは,過去問をしっかり覚えておくこと.
【解説】
◯1 BACS(統合失調症認知機能簡易評価尺度)は,①言語性記憶と学習,②ワーキング・メモリ(作動記憶),③運動機能,④注意と情報処理速度,⑤言語流暢性,⑥遂行機能の6つの認知機能領域を評価する7つの検査(言語流暢性のみ2つの検査がある)で構成される.
✕2 LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)は,精神障害のある人の生活を包括的に評価するための尺度である.①日常生活,②対人関係,③労働または課題遂行能力,④持続性・安定性,⑤自己認識の5つの大項目からなる.
✕3 SCSQ(心の状態推論質問紙)は,統合失調症で障害される社会認知に関する質問紙で,①言語記憶,②文脈からの推論,③心の理論,④メタ認知,⑤敵意バイアスの5項目によって構成される.
✕4 SMSF(気分と疲労のチェックリスト)は,統合失調症患者の気分と疲労感に関する13項目からなる自記式尺度である.各尺度について被検者は,「感じない」と「強く感じる」を両端とする線分上のどのあたりに今の状態が当てはまるかをチェックするようになっている.
✕5 WHO-DAS2.0(WHO障害者評価面接基準2.0)は,質問紙に対する患者の反応から障害の性質を評価するもので,①認知,②可動性,③セルフケア,④他者との交流,⑤日常活動,⑥社会への参加の6領域を調査する.
正解 : (1)
【解法の要点】
統合失調症は病時期によって症状が変化し,治療や管理上注意すべき点が異なる.統合失調症の急性期にみられやすい症状を把握し,選択肢の検査についての基本的事項を知っておく必要がある.
【解説】
✕1 GHQ(精神健康調査票)は,60項目の質問事項からなる神経症の症状把握,評価,発見に有効なスクリーニング検査である. 30項目,28項目,12項目の短縮版もある.
✕2 LSP(生活技能プロフィール)は,地域で生活している統合失調症患者の生活機能や社会生活能力を評価する尺度である.急性期の治療効果ではなく,慢性期の治療や地域での保健・福祉サービスの効果判定に有用である.
◯3 PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)は,統合失調症を対象に,精神状態を全般的に把握することを目的として作成された評価尺度である.30項目について陽性尺度,陰性尺度,総合精神病理尺度を医師が評定する.急性期の治療効果をみるのに最も適している.
✕4 QLS(QOL尺度)は,地域で生活している統合失調症の陰性症状を主症状とした人の生活の質(QOL)の評価法である.慢性期の評価である.
✕5 SFS(社会機能評価尺度)は,統合失調症における家族介入の効果を測定するため,コミュニティでの生活の維持において重要な機能を評価する尺度である.慢性期の評価である.
正解 : (3)
【解法の要点】
本問では,統合失調症に限らず,「い」(これは50音のうちの1つであれば何でもよい)で始まる単語をなるべく多く挙げてください,という課題で評価できる障害は何か,と問うている.
【解説】
✕1 言語で返答が可能であり,言語に関する運動機能障害(例えば構音障害)はない.
✕2 質問に関して,返答できない理由を明確に述べているので,この症例では集中力が低下するといった注意機能障害はみられない.
✕3 問題文だけでは,言語性記憶障害は認められない.言語性記憶障害検査の代表は,三宅式記銘力検査である.これは,一対の言葉(有関係10対,無関係10対)を聞かせて復唱させ,後に一方の単語を示してその対語を言わせることを各々3回繰り返して行うものである.
◯4 本課題は,言語流暢性障害の評価で用いられる.言語流暢性課題には,長期記憶からの想起,すでに答えた言葉を一時的に記憶する作業記憶,不適切な言葉への抑制,作業への集中力の維持など広い範囲の前頭葉機能の動員が必要である.
✕5 ワーキングメモリーとは,物事を思考・実行する際に必要な情報を一時的に(数秒から数分程度)保持しながら,それを意識的に操作することができる能力のことである.
正解 : (4)
【解法の要点】
図に示されたものはロンドン塔検査である.ロンドン塔検査はBACS-Jに含まれ,遂行機能を評価する.
【解説】
✕1 WAB(Western Aphasia Battery)は,失語症のタイプ分類ができるだけでなく,失行,半側空間無視の有無,非言語性知能検査を含む包括的な検査である.
✕2 BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は,前頭葉の遂行機能を評価する検査であり,カードや道具を用いた6種類の下位検査と1つの質問紙で構成されている.質問紙には合計20の質問があり,①感情・人格,②動機付け,③行動,④認知の4カテゴリーが5段階で評価される.
✕3 MMSE(Mini Mental State Examination)は認知障害の簡便な評価方法である.
◯4 BACS-J(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia Japanese Version:統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版)は,①言語性記憶と学習,②ワーキングメモリー(作動記憶),③運動機能,④注意と情報処理速度,⑤言語流暢性,⑥遂行機能の6つの認知機能領域を評価する7つの検査(言語流暢性のみ2つの検査がある)で構成される.
✕5 WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale-Ⅲ)は16~89歳に行われる標準的な知能検査である.
正解 : (4)
【解法の要点】
検査法は必ず国試に出るが,どこまで覚えたらよいのか戸惑う受験生が多い.本問を通して,統合失調症患者に用いられる検査について,検査の目的,検査方法,どの時期に用いられるものかをまとめておこう.
【解説】
✕1 AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale)は,異常な不随意運動を評価する尺度であり,認知機能を評価するものではない.
◯2 BACS(統合失調症認知機能簡易評価尺度)は,①言語性記憶と学習,②ワーキングメモリ(作動記憶),③運動機能,④注意と情報処理速度,⑤言語流暢性,⑥遂行機能の6つの認知機能領域を評価する7つの検査(言語流暢性のみ2つの検査がある)で構成される.
✕3 LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)は,精神障害のある人(主に統合失調症患者)の生活を包括的に評価するための尺度である.①日常生活,②対人関係,③労働または課題遂行能力,④持続性・安定性,⑤自己認識の5つの大項目からなる.
✕4 PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は,統合失調症を対象に,30項目について陽性尺度,陰性尺度,総合精神病理尺度を医師が評定するものである.各項目を1~7点で評価し,評点が高いほど重症度が高く,4点以上の項目は要注意とされる.急性期の治療効果をみるのに最も適している.
✕5 SAPS(Scale for the Assessment of Positive Symptoms)は陽性症状評価尺度であり,認知機能を測定するものではない.なお,SANS(Scale for the Assess-ment of Negative Symptoms)は陰性症状評価尺度である.
正解 : (2)