【解法の要点】
カーテン徴候とは,咽頭筋の一側性の麻痺に際してみられる現象であり,これがみられた場合には舌咽神経,迷走神経の障害を考える.嚥下反射は,咽頭壁への刺激が舌咽神経・迷走神経を介して延髄網様体の嚥下中枢に伝わることによって生じる.
【解説】
✕1 先行期は,食物を認識し口に運ぶまでの時期をいう.観念失行で障害される.
✕2 準備期は,唾液と食物を混和し嚥下しやすい食塊を形成するまでの時期をいう.
✕3 口腔期は,食塊を口腔から咽頭へ送り込み,嚥下反射が起きるまでの時期をいう.
◯4 咽頭期は,食塊を咽頭から食道へ送り込むまでの時期をいう.カーテン徴候が陽性の場合では第Ⅸ,Ⅹ脳神経の障害での球麻痺により舌の萎縮や咽頭反射の低下がみられ,咽頭期が障害される.舌咽神経および迷走神経は咽頭,口蓋などに分布している.
✕5 食道期は,食塊を食道から胃へ送り込むまでの時期をいう.胃食道逆流症や食道アカラシア,食道裂肛ヘルニアなど,食道性の障害が原因となる.
正解 : (4)
【解法の要点】
反復唾液嚥下テストは,30秒間の空嚥下を実施してもらい,嚥下反射の随意的な能力を評価するスクリーニング法である.検者は喉頭隆起および舌骨に指腹を当て,喉頭挙上を触診する.30秒間に3回以上,空嚥下の反復ができることが正常の目安である.
【解説】
✕1,3~5
◯2 解法の要点 を参照.
正解 : (2)
【解法の要点】
改訂水飲みテスト(MWST)および反復唾液嚥下テスト(RSST)の結果から嚥下機能は良好であることがわかる.しかし,歯がないにもかかわらず,次から次へと食べ物を口に運んでおり,この不適切な食し方が従前からの癖なのか脳梗塞発症後からなのかは定かではないが,いずれにせよ誤嚥のリスクがある.嚥下機能評価の結果から,一連の摂食嚥下動作のうち準備期以降には大きな問題がなく,食べ物を口に運ぶまでの先行期の障害であり,それに対する適切な対応策を選択する.
【解説】
✕1 両者を対面させると,摂食嚥下に問題のない患者のペースに本問の患者がつられて嚥下運動を行ってしまうと考えられ,先行期の障害を助長するおそれがある.また,この患者がむせて咳をした際に,対面にいる患者に吐物やエアロゾル飛散の可能性もあり,感染予防の観点からも対面に他の人を座らせてはならない.
✕2 耳下腺のマッサージは唾液分泌促進のために行うので,準備期の障害に適応がある.本症例では嚥下機能に問題はなく必要性は乏しい.
✕3 嚥下機能は良好であるのでとろみは必要ない.
◯4 小さいスプーンで,一度に口に運ぶ量を少なくして対応するのが望ましい.
✕5 左半側空間無視がある場合は左側に意識を向けるように左側に皿を置くこともあるが,本症例は左片麻痺であるが左半側空間無視については言及されていない.
正解 : (4)
【解法の要点】
誤嚥のリスクを高める動作について問われている.喉頭の解剖をイメージすると,どのようなときに誤嚥が起きやすいかイメージしやすいだろう.
【解説】
✕1 頬杖をついて顎を前方に突出させると食道入口部を随意的に開大することができる.ただし,その際に頸部伸展姿勢をとると,顎が上がり,誤嚥しやすくなる.
✕2 下顎を軽く胸部に近づけるようにして嚥下するとよい.
◯3 上を向くと咽頭と気管が直線になり,さらに食道入口部は圧迫され,口から入ったものは気道に流れ込みやすくなるため,誤嚥のリスクが高まる.
✕4 うなずくように下を向くことによって,咽頭と気管に角度がつき,食道入口部に余裕もできるため誤嚥のリスクを下げることができる.
✕5 咽頭機能に左右差がある場合は,頸部を患側に回旋させることにより,嚥下機能低下側の喉を狭くし,食塊の誤嚥を防ぐ.
正解 : (3)
【解法の要点】
摂食嚥下障害はそのまま誤嚥性肺炎へと繋がりうる.対応としては,トロミをつけた食事,リクライニング位,患側への頸部回旋位,頸部前屈位などがある.
【解説】
✕1 食事直後の臥位は逆流を生じやすく,誤嚥のリスクを上昇させる.
✕2 酸素投与中にベッド上安静にしなければならないということはない.むしろ過度な安静により頸部の筋力が低下すると誤嚥のリスクは増してしまう.
✕3 誤嚥性肺炎(嚥下障害)の患者では,絶飲食中にも唾液の気管内垂れ込みがあるため,絶飲食中も口腔ケアを継続する必要がある.
◯4 頭位を軽度挙上することにより,胃内容物が逆流しにくくなる.頸部を屈曲すると,咽頭と気道に角度がつき誤嚥しにくい.
✕5 一日あたりの総エネルギー必要量は,身長から算出される標準体重や活動量に応じて算出される.肺炎の重症度とは直接には関係しない.
正解 : (4)