【解法の要点】
認知症患者は,快,不快などの感情的体験は保たれていることが多く,感情の安定を図るコミュニケーションが重要と考えられる.間違いを強く指摘したりせず,人格を尊重した対応が必要である.
【解説】
✕1 認知症患者は,集中の維持が困難なため,静かで会話以外に気が散らないような環境が望ましい.
✕2 詳細な指示は,認知症患者には理解が難しく,負担が大きい.単純明快で一度に一つの内容の指示が望ましい.
✕3 ジェスチャーのような非言語的メッセージは,言語的メッセージを補うものであり,伝えたい内容が理解しやすくなる.
✕4 沈黙した場合は,本人が言われた内容を本人なりに理解して何かを伝えようとする過程であり,すぐに話題を変えずに患者が何らかの反応をするまで待つ.
◯5 本人と関係のある話題は,本人も関心があるので積極的に会話に参加でき,また,何らかの記憶想起に結びつく可能性があるので有用である.
正解 : (5)
【解法の要点】
認知症患者の作業療法では,次の事項が重要である.①日常生活活動の場として患者が安心して過ごせる場にする,②信頼関係の確立,③残存機能維持,④身体的能力維持,⑤自発性・意欲の向上,⑥生活リズムの形成.
【解説】
◯1 認知症の作業療法は,導入期は個人の生活リズムに合わせて対応し,1日のリズムが確立したら,レクリエーションなどの活動を生活の中に組み入れる.
✕2 新しい活動を覚えることや慣れることが困難となる.馴染みのある活動がよい.
✕3 理解力が低下するため,作業を可能な限り単純にすることは望ましいが,幼稚な扱いをすることは患者の尊厳を傷つけるおそれがあるため,適切ではない.
✕4 生活史を重視し,馴染みのある活動を取り入れることが望ましい.
✕5 患者同士で作品への感想を述べ合うことによって,共感や自尊心を尊重することへつながる.
正解 : (1)
【解法の要点】
認知症患者に対するアプローチを問う問題である.一つ一つの用語の意味を確認することで正答に至る.
【解説】
✕1 回想法とは,「アルバムや昔の遊び道具・生活用品などを使う」「昔懐かしい駄 ,菓子を食べる」「童謡などの馴染みの歌を聞く」などして , ,当時のエピソードを思い出し,人生を振り返り思い出を語ることで,気持ちの安定や感情・意欲の高揚を目的とする認知症の介入法である.
✕2 ピアサポートとは,同じ問題や障害を背景にもつ人が仲間同士として支え合うことである.同じ背景をもつ仲間に話を聞いてもらえるという安心感,共感,仲間の話を自らに当てはめた際の気づきが得られるなど,成長や回復の助けとなる.アルコールや薬物依存症者の治療として用いられる.
✕3 マインドフルネスとは「今ここでの体験に」,「意図的に意識を向け」,「評価をせずに」,「囚われのない状態でいる」ことをいう.集中力を高める方法として,著名人や企業が取り入れている.
✕4 バリデーション療法とは,認知症患者の虚構の世界を否定せずに言動を理解し,共感し受容することで,患者自身の人生の意味や,存在の価値を確認できるよう手助けする.患者が好む感覚・非言語的テクニック(ミラーリング,アイコンタクト,タッチング,音楽)を用いるなど,様々な技法が含まれる.
◯5 リアリティオリエンテーションは,人,日時,場所などの現実検討の基本となる情報(例えば,「味噌汁を嗅がせて今が朝であることを知る」こと)などを繰り返し提示して,見当識障害の改善に用いる手法である.
正解 : (5)
【解法の要点】
物忘れに加え,歩行時のつまずきやすさ,書字の震えといったパーキンソニズム,動揺性のある認知機能障害,繰り返し起こるリアルな内容の幻視,PET(画像検査)における頭頂葉~後頭葉の一部の糖代謝の低下所見から,Lewy小体型認知症が考えられる.家族の認知症患者への対応として,間違いを強く指摘したりせず,人格を尊重することが重要である.
【解説】
✕1 慣れた場所でも薄暗い部屋では見えづらく,不穏状態にもなりやすい.パーキンソニズムによる転倒のおそれがあるため,部屋は明るくすることが望ましい.
✕2 聴覚障害を疑う所見はないため,テレビの音を大きくする必要はない.
✕3 歩行時のつまずきやすさがあるが,歩行ができないわけではないため,車椅子の導入よりは段差の解消などで転倒しづらい環境をつくることが優先される.
✕4 認知症患者は幻覚の自覚がなく,認識の否定,訂正,説得は不適切である.
◯5 認知症の患者の認識を否定,訂正,説得することは不適切であり,患者の気持ちを受けとめることが大切である.
正解 : (5)
【解法の要点】
発語の減少,自発性の低下,行動異常,前頭葉優位の萎縮と前頭葉・側頭葉の血流低下から前頭側頭型認知症と考えられる.前頭側頭型認知症では,記憶や日常生活動作の障害はあまり目立たないが,落ち着きのなさや脱抑制(本症例の場合は「立ち去り」)などの性格変化が目立つ.対応としては,気が散らない環境で,慣れている作業を続けてもらうのがよい.
【解説】
◯1 身近に道具や材料を置いてそれらを提示しながら声掛けをし,他の物事に注意が散乱しないようにする.
✕2 顔見知りが多いと注意がそれやすいので,顔見知りが少ない環境がよい.
✕3 行動面での問題を口頭で指摘しても,その意味を理解できないため効果がない.注意されたという印象だけが残り,かえって行動障害を助長する可能性がある.
✕4 初めて体験する手工芸は慣れるのに時間がかかり,途中で飽きてしまうことが多い.本人の趣味を取り入れるなど馴染みのある作業の方がよい.
✕5 スタッフを含めた治療環境の変化は患者の混乱を招くので不適当である.
正解 : (1)