【解法の要点】
高次脳機能について,脳の部位と役割について問うている.それぞれの部位が障害された際に出現する症状を具体的に思い浮かべられるようにしよう.
【解説】
✕1 顔の左側の髭を剃り残すのは左半側空間無視である.左の半側空間無視は右の頭頂葉後方の障害で起こる.
✕2 新しいことを覚えられないのは前向性健忘(記銘障害)である.海馬などの大脳辺縁系の障害である.前頭葉の障害では,ワーキングメモリ(作業記憶)が障害される.
◯3 何度も同じことを聞くのは,前向性健忘(記銘障害)である.海馬などの大脳辺縁系の障害である.海馬は側頭葉の内側に位置する.
✕4 目標の設定,計画の立案,実行,効率的な行動ができなくなるのは遂行機能障害である.前頭連合野の障害によって起こる.
✕5 見えていないのに見えているかのように振る舞うことをAnton症候群という.両側後頭葉の一次視覚野による障害である.
正解 : (3)
【解法の要点】
針金やコルクがあることから行為計画検査に用いるBADS(遂行機能障害症候群の行動評価)であることは明らかである.
【解説】
✕1 CBS(Catherine Bergego Scale)は,半側空間無視の生活障害の評価スケールである.
✕2 MFT(Manual Function Test:脳卒中上肢機能検査)は,「上肢の前方挙上」,「上肢の側方挙上」,「手掌を後頭部へ」などの項目を得点化し(32点満点),これを100点満点に換算する.
◯3 BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は,様々な状況下における問題解決能力を,道具やカードを用いた6種類の下位検査と1つの質問紙を用いて検査する.下位検査は0~4点の5段階で点数化し24点満点で評価する.写真は「行為計画検査」に用いる道具である.
✕4 STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)は,上肢の動作能力,特に動きの速さを客観的に,しかも簡単かつ短時間(20~30分)に把握するための評価法である.
✕5 SLTA(標準失語症検査)は,失語症の検査である.26項目の下位検査での構成で,「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する.
正解 : (3)
【解法の要点】
交通事故による前頭葉背外側部の外傷,ボーッとして過ごし促されないと行動に移せない,自発性に乏しいことなどから,前頭葉の障害を考え,前頭葉の機能を調べる検査を選ぶ.
【解説】
✕1 CBS(Catherine Bergego scale)は,半側空間無視の評価方法である.本症例では半側空間無視は認められない.半側空間無視は頭頂葉などの損傷で生じることが多い.
◯2 BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は,前頭葉の遂行機能を評価する検査である.
✕3 SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は,失語症の検査である.会話は成立しているため,必要ではない.
✕4 SPTA(Standard Performance Test of Apraxia:標準高次動作性検査)は,失行症および行為障害を系統的に評価する検査である.
✕5 VPTA(Visual Perception Test for Agnosia:標準高次視知覚検査)は,視知覚機能の検査法である.視知覚障害は,後頭葉を中心とした部位の損傷により出現する.
正解 : (2)
【解法の要点】
高次脳機能障害の対応やプログラムについて問われている.それぞれの病態をしっかりと把握しておくと解答しやすくなる.
【解説】
◯1 間隔伸張法は,記憶したい事柄に対して質問するまでの時間を徐々に長くして,記憶を保持する期間を伸ばしていく手法である.記憶障害の改善テクニックであり,認知症などに適応となる.
✕2 PQRST法は記憶障害に対する手法である.①提示された文章全体からキーワードを抜き出す(Preview),②そのキーワードが答えとなる質問をつくる(Question),③質問に答えるために熟読する(Read),④読み終えた情報を能動的に覚える(Self-Recitation),⑤文章の内容(記憶)をテストする(Test)の5段階を経て覚えていく.
✕3 注意障害に対しては,刺激が少なく気が散らない静かな環境が適している.
◯4 社会的行動障害に対しては,静かな環境に置く,あまりたくさんの人に囲まれない環境に置く,疲れさせない環境に置く,の3つが重要である.健常ならば,セルフモニタリングをして自分の間違いに気づいた場合に行動を修正することができるが,高次脳機能障害の場合は「セルフモニタリング能力の低下」「病識の欠如」「固執」の影響で他者からの注意を受け入れられない場合がある.周囲の人々に症状の理解を促す必要がある.
✕5 APT(Attention Process Training:注意プロセスプログラム)は,注意障害に対して用いられる訓練法である.注意を,持続性,選択性,代替性(転換性),分割性(配分性)と便宜的に4つの特性に分け,訓練を行う.
正解 : (1),(4)
【解法の要点】
検査法の概要と適応となる障害を整理しておく.
【解説】
◯1 BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は,前頭葉の遂行機能を評価する.本問の図版は,動物園地図検査であり,動物園の地図上にある一連の決められた場所を訪れて,目的地まで到達するように示すことが求められる.
✕2 BIT(行動性無視検査)は,通常検査と日常生活場面を想定した行動検査の2つからなり,半側空間無視の検査として用いられている.半球損傷により対側(通常,右半球損傷により左)の空間が無視される.
✕3 FAB(前頭葉機能検査)は,前頭葉機能に対するスクリーニング検査である.
✕4 SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は,失語症の検査である.
✕5 WAIS-IVは,知能の個人内差の診断が可能な成人用個別式検査である.「言語性IQ」,「動作性IQ」に加え,「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる.
正解 : (1)
【解法の要点】
物事を計画し,順序立てて実行するという一連の作業が困難になる状態が遂行機能障害である.遂行機能障害に対する介入方法としては,解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である.
【解説】
✕1 ペグとは掛け釘のことで,記憶すべき事柄を並んだペグに引っ掛けて覚えようとする記憶術である.
◯2 解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である.自己教示訓練とは,課題の実行手順をその都度声に出して確認する方法である.徐々に声を小さくし,最終的に頭の中で解決できるようにする.
✕3 直接刺激法は,注意機能に対する介入方法で,注意機能を要する課題を直接行わせるものである.
✕4 間隔伸張(長)法は,記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして,記憶を保持する期間を伸ばしていくことを目的とする手法である.記憶の改善テクニックであり,認知症などに適応となる.
✕5 物語作成法は,「リンク法」とよばれることもある記憶術の一つである.覚えたい内容をストーリー化することによって長期記憶にアプローチする方法である.
正解 : (2)