【解法の要点】
Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は先行感染による自己免疫的な機序により,炎症性脱髄性ニューロパチーを来す疾患である.
【解説】
✕1 頻脈,高血圧,起立性低血圧などの自律神経障害が生じることがある.なお,膀胱直腸障害を生じることはまれである.
✕2 筋力低下は下肢遠位筋からみられる.障害の消失順は出現と逆順で,近位部から遠位部にかけて回復する.
✕3 左右対称性に,遠位,近位両方とも侵される.
✕4 発症の1~3週間前に感冒様症状,下痢,腹痛などがみられ,その後1~2週間で急性に神経症状を来し,弛緩性四肢麻痺や呼吸筋麻痺,脳神経障害がみられる.
✕5 アジアでは軸索障害型が多いとされている.わが国で1993〜1998年に実施された疫学調査では脱髄型が57.6%,軸索型が18.5%とされているが,鑑別の基準に様々なものが提唱されており,本試験が実施された時点でのupdateといえるデータがなく不適切問題とされた.
正解 : なし
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群の急性期を脱した状態の作業療法について問う問題である.この時期のリハビリテーションは拘縮予防,関節可動域の維持と増大,良肢位保持を基本とする.筋力運動は過用性の筋力低下に注意する.
【解説】
◯1 体位変換は褥瘡予防とともに,自力での体位交換を促すことにより基本動作能力の維持・再獲得を目指すことにつながる.
◯2 四肢遠位筋の麻痺が強く,初期から機能的良肢位を保つことで,筋緊張を和らげることができる.
◯3 関節可動域訓練を行うことで,関節拘縮の予防となる.
◯4 座位耐久性の改善は,廃用症候群の予防,座位での作業療法を行ううえで重要である.
✕5 Guillain-Barré症候群などの末梢神経障害の患者に対して,漸増抵抗運動などの高負荷の筋力増強訓練を行うと逆に過用性の筋力低下を起こしてしまうので,低負荷高頻度の筋持久力訓練を行う.
正解 : (5)
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群は,先行感染等による自己免疫的な機序により,多発根ニューロパチーを来す疾患である.運動麻痺を主症状とし,感覚障害,脳神経麻痺を来す.
【解説】
✕1,2 脳神経の中でも聴神経,視神経が障害されることはない.
✕3 動眼神経障害により眼瞼下垂も起こりうるが,最も頻度が高いとはいえない.
◯4 脳神経麻痺の症状としては,顔面神経麻痺,球麻痺(構音・嚥下障害),外眼筋麻痺が起こる.この中でも顔面神経麻痺が最も頻度が高い.
✕5 Babinski徴候は,錐体路(上位運動ニューロン)の障害で陽性となる.
正解 : (4)
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群の作業療法について問う問題である.リハビリテーションは拘縮予防,関節可動域の維持と増大,良肢位保持を基本とする.筋力運動は過用性の筋力低下に注意する.本症例では上下肢筋力の低下により座位や食事動作が困難,嚥下障害も認められており,廃用症候群予防を加味してリハビリテーションを行う.
【解説】
◯1 嚥下障害による飲水時のむせがみられるため,誤嚥に注意しながら嚥下訓練を行う.
◯2 呼吸訓練は,胸郭や呼吸筋の柔軟性を改善させ,呼吸を楽にし,痰や誤嚥物の喀出を促すことを目的として行われる.嚥下障害もあるため,誤嚥性肺炎の予防として自力排痰を促す呼吸訓練は適切である.
✕3 Guillain-Barré症候群などの末梢神経障害の患者に対して漸増抵抗運動などの高負荷の筋力増強訓練を行うと,逆に過用性の筋力低下を起こしてしまうので,低負荷高頻度の筋持久力訓練を行う.ただし,急性期には症状が不安定であるため筋力増強訓練は行わない.
◯4 関節可動域訓練を行うことで,関節拘縮の予防となる.
◯5 座位のポジショニングは,廃用症候群や誤嚥の予防,座位での作業療法を行ううえで重要である.
正解 : (3)