【解法の要点】
外傷性脊髄損傷の疫学に関する問題である.外傷性脊髄損傷の原因は圧倒的に交通事故によるものが多く,原因の40%を超える.若年者ではバイクによる事故が多く,中高年者では自動車事故が多い.次いで,高所からの転落,転倒,スポーツによるものとなっているが,スノーボードによる事故も増えている.※2018年の日本脊髄障害医学会の報告では,平地転倒が最多の39%,次いで転落(24%),交通事故(20%)となっている.
【解説】
✕1 男女比は3:1であり,男性の方が多い.
✕2 転落,交通事故など,強い外傷が加わらないと完全損傷にはなりにくいため,不全損傷が多い.
✕3 頸髄損傷が75%を占め,胸腰髄損傷よりも多い.
◯4 解法の要点より,転倒の方がスポーツ事故よりも多い.
✕5 16~20歳代(小さなピーク)と50~60歳代(大きなピーク)の二峰性を示す.
正解 : (4)
【解法の要点】
第6頸髄節まで機能残存している場合,肩関節屈曲・外転,肘関節屈曲,前腕回外,手関節背屈が可能である.第6頸髄節機能残存レベルでは,トランスファーボードの利用などにより移乗ができ,更衣,整容,食事も自助具を使用し自立可能である.
【解説】
◯1 被りタイプのシャツで練習する.被りタイプの着脱はC5でも自立可能である.前開きのシャツなどは動作が複雑で衣服の工夫や自助具が必要になるため,先に被りタイプから練習する.
◯2 コンピュータの入力では,両手でのタイピングは難しいので,万能カフにポインティングデバイスを用いてキーボードを操作するか,タッチパネル・タッチパッドを使うなど,入力デバイスを検討する.
✕3 排便はベッド上臥位で行うより,座位をとってトイレで行う方が,生理的であり尊厳も保たれる.頸髄損傷者用トイレを使用すれば,自立の可能性もある.
◯4 男性では自己導尿操作が自立する可能性があるが,女性ではC6B3レベルでかつ設備・自助具の工夫がないと困難である.
◯5 起立性低血圧の発作時には,前屈位をとり頭部を低くすることで脳血流の低下と失神が予防できる.
正解 : (3)
【解法の要点】
脊髄損傷の第4頸髄残存レベルでは僧帽筋や横隔膜が主な動作筋となり,全面的に介助を要する.そのことを理解できていれば正解できる問題である.
【解説】
✕1 万能カフを用いた食事が可能なのはC5である.C4では全介助となる.
◯2 C4残存機能レベルでは,下顎でコントロールする電動車椅子が必要である.
✕3 C4残存機能レベルでは,横隔膜の動きは障害されておらず,人工呼吸器は必要ない.C3残存機能レベルまでは必要である.完全な四肢麻痺であるが,マウススティックを用いてパソコン操作やスイッチ操作が可能である.透明文字盤を用いる必要はない.
◯4 C3残存機能レベルでは,環境制御装置の利用でテレビや照明のon/offなど,部分自立が可能である.C4残存機能レベルでは,環境制御装置は必須である.
◯5 C4 残存機能レベルでは,全介助なので食事支援ロボットは有効である.
正解 : (1),(3)
【解法の要点】
脊髄損傷による神経因性膀胱の尿路管理について整理して覚えておきたい.下腹部を用手的に強く圧迫して排尿させる圧迫排尿は,自発的収縮がない核・核下型神経因性膀胱で行う.トリガーポイントを利用した排尿訓練は,核上型神経因性膀胱において行う.
【解説】
✕1 圧迫排尿は,膀胱にたまった尿を恥骨上から手で圧迫することにより,尿道から排出させる方法である.この方法は,上部尿路に圧を伝播させ上部尿路障害や自律神経過緊張反射を起こすリスクが高いため,第1選択として推奨されない.
✕2 骨盤底筋訓練は,腹圧性尿失禁に有効な治療法である.本症例では,自排尿が困難であるため行わない.
◯3 本症例は,尿閉がみられC7レベルまでの機能が残存していることから,自己導尿を行う.自己導尿は,時間を決めて自己導尿用カテーテルを用いて自分で導尿を行う(間欠的自己導尿).
✕4 尿道カテーテル留置は,カテーテルの先の排尿バックに尿を貯留するため尿路感染のリスクが高く,また長期の留置により膀胱が膨らみにくくなり,膀胱変形を来すため,他の方法が選択できるのであれば避けるべきである.
✕5 膀胱瘻は,根治治療が不可能であり,間欠的自己導尿ができず,長期にわたって尿道カテーテルを留置せざるを得ない場合に適応となる.C6レベル以上で適応となる.
正解 : (3)
【解法の要点】
問題文で指摘されている「手指屈曲拘縮」は手指の伸展が障害されることを意味し,手指伸展を担う機能髄節がC7であることがポイントである.
【解説】
✕1 C5Aでは腕橈骨筋の収縮が困難である.長短橈側手根伸筋の機能も残存しておらず,手関節背屈は不可能である.
◯2 本症例ではC5以上の髄節が担う基本機能は残存し,C7で可能な手指伸展が不能であることから,最下位機能髄節はC6であることがわかる.C6Aでは,手関節の背屈が弱くテノデーシスアクションが利用できない.このため,写真では両上肢を利用して手関節背屈・手指屈曲を補っている.
✕3 C6B3では円回内筋,橈側手根屈筋,上腕三頭筋の機能が残存し,手関節の背屈は強いレベルである.写真では,両上肢を利用して手関節背屈を補っている.
✕4 C7Aは尺側手指の完全伸展が可能なレベルである.写真では尺側手指の伸展はみられない.
✕5 C8Bは手指の完全屈曲,母指伸展が可能なレベルである.本症例に合致しない.
正解 : (2)
【解法の要点】
徒手筋力テストの結果から,Zancolliの頸髄損傷分類で,C6B2(肘屈曲,手背屈は可能)であることがわかる.本症例は円回内筋と長橈側手根伸筋は収縮しているものの筋力は低下しており,上腕三頭筋は収縮が認められない.これらのことをヒントに選択する.
【解説】
✕1 更衣の自立が可能となるのは,C7機能残存レベルからである.
✕2 多数の患者においてC6B以下で実用的な自己導尿が獲得可能である.しかし,自己導尿には,清潔操作,採尿器やカテーテルの取り扱いなど,操作が複雑で習得に期間を要す.受傷後2ヵ月で習得することは困難である.
✕3 C7機能残存レベルで,プッシュアップが可能である.
◯4 C5機能残存レベルで,万能カフを用いた食事が可能である.
✕5 C7機能残存レベルで,ベッドから車椅子への移乗動作が可能である.
正解 : (4)